人手作業を支援するIoTが本格化、デジタル技術は製造現場をどう変えるか製造現場のデジタル変革

人手不足が深刻化する製造現場。これらを解決するためIoTなどのデジタル技術を活用したスマートファクトリー化が進んでいるが、その中でも立ち遅れているのが「人手作業」の領域だ。アナログな人の存在をデジタルでどう支援すべきなのだろうか。

» 2020年01月30日 10時00分 公開
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人手不足が深刻化する製造現場、95%が「人材確保になんらかの課題」と回答

 製造現場の人手不足はここ数年で深刻化している。経済産業省などを中心に日本政府が発行している「2019年版ものづくり白書」によると、人手不足が「大きな課題となっており、ビジネスにも影響が出ている」とする回答企業は年々増加しており2016年度は22.8%だったのに対し、2018年度は35.7%に拡大している。一方で「特に課題はない」とする回答者は2016年度には19.2%いたのに対し、2018年度は5.2%へと急減しており、ここ数年で人手不足がビジネス展開の大きな課題となりつつある状況がうかがえる。

photo 2019年版ものづくり白書で示された調査による「人材確保の状況」(クリックで拡大)出典:2019年版ものづくり白書

 特に深刻化しているのが、技能人材である。ものづくり白書における「特に確保が課題となっている人材」では、55.0%が「技能人材」を挙げており、半数以上が技術者不足に悩んでいる状況だ。従来の日本のモノづくりは、「人」を中心とした「現場力」が大きな強みとなっていたが、その強みが大きな危機を迎えていることがうかがえる。

 こうした状況を踏まえ、製造業ではロボットやAIを活用し、人手による作業領域を減らす「自動化」への取り組みを加速する。その一環としてスマート工場化やロボットの活用などを広げている状況だ。しかし、工場作業を見ると、コスト面やスペース面、条件面などでどうしても自動化の難しい作業領域が残されている。設備面ではIoTやAIなどを活用しさまざまな効率化が進む一方で、人手作業については従来は運用での工夫で何とかするのが日本の製造現場であった。そのため、人手作業を効率的に支援し、生産性向上を実現するソリューションはまだまだ選択肢が少ない状況である。

 これらの背景から、「人手作業領域」の生産性向上や高度化、技能承継などの支援を強化するのが、IT(情報技術)からOT(制御技術)まで幅広い領域のシステムインテグレーションなどを行うシーイーシーである。

設備と人を結ぶVisual Factory、人を支える作業者支援ソリューション

 シーイーシーは1968年創業の独立系システムインテグレーターで、主に製造業を対象に、業務効率化や品質向上などに向けたシステム導入を進めている。スマートファクトリー化などに注目が集まる中、ここ最近では「サイバーフィジカルシステム(CPS)」がキーワードとされるが、シーイーシーでは2008年よりモノづくりソリューション「VR+R」など、現在のCPSにもつながるさまざまな提案を進めている。

 工場現場の設備や作業者や画像検査などの情報を収集できる製品も多数ラインアップしている。2018年には、設備、人、モノをひも付け、現場が使える形で可視化し、生産現場のQCD(品質、コスト、納期)向上と迅速な意思決定を支援する「Visual Factory(ビジュアルファクトリー)」の提供を開始。製造業のデジタル化に向けたさまざまな取り組みを進めてきた。

 製造現場では現在、設備稼働状況の把握や製品品質の向上などさまざまな取り組みが進められているが、特に人手不足が大きな課題となっている。そのため、人に起因する作業者品質向上が工場現場の稼働率向上の重要なカギとなっている。

photo シーイーシー 執行役員 デジタルインダストリービジネスグループ スマートファクトリー事業部 事業部長の江上太氏

 「作業者のムリ・ムラ・ムダの排除はもとより、作業レベルの標準化および技能のデジタル化による技術継承が重要であると考えています。熟練技能者が少なくなる将来を見据えた対策を早急に進めなければなりません。そこで、人にターゲットを置いた省力化や省人化、さらには外部変化に動じない少人化を目指すソリューションが必要になると考えました」とシーイーシー 執行役員でデジタルインダストリービジネスグループ スマートファクトリー事業部 事業部長の江上太氏は語っている。

 そこでシーイーシーは「スキル人材が活躍できる場づくり」「技能のデジタル化による省力化」を実現するために工場内の人手作業領域を対象とした「作業者支援ソリューション」をあらためて体系化し、作業者が最も能力を発揮できる環境や手段の提供を目指す。

 江上氏は「これらのソリューションは個々に提供してきたものですが、一連のソリューションとして、新たに体系化しました。設備・製品に向けたソリューションと、作業者の状況把握からフィードバックおよび技能伝承につながるソリューションの両面を提案し、“真のスマートファクトリー化”を実現できるようにしていきます」と語っている。

 作業者支援ソリューションのコンセプトは、デジタル技術の活用により、生産性を高め、人材を確保し、さらに収益の向上に貢献することを目指すものだ。業務に適合するようにデジタル技術を積極的に採用するため、従来使われてきた“勘・コツ”を、数値やデータなどに置き換えて判断できる環境へと変える効果なども生む。技能・ノウハウを4M(人、設備、手法、材料)データや映像データで形式知化し、人材の育成や計画精度向上につなげていくことなども実現可能である。

photo 作業者支援ソリューションのイメージ(クリックで拡大)出典:シーイーシー

 そして今回、この「作業者支援ソリューション」を構成するキーサービスの1つとして提供を開始するのが、スマートグラスを活用した「EdaGlass(エダグラス)」である。「EdaGlass」は、1台のスマートグラス端末で、製造現場のさまざまなシーンで利用可能である点が特徴だ。ソフトウェアとして提供するため、スマートグラス端末としては、山本光学、Vuzix、セイコーエプソンなど各社の端末に対応可能である。

スマートデバイス/作業者支援システム「EdaGlass」が実現する価値とは?

 「EdaGlass」の名称の「EDA」は「Education(教育)」「Diversity(多様性)」「Assistant(アシスタント)」の頭文字から取ったという。

photo シーイーシー デジタルインダストリービジネスグループ スマートファクトリー事業部 第一サービス部の江田将巳氏

 開発を担当した、シーイーシー デジタルインダストリービジネスグループ スマートファクトリー事業部 第一サービス部の江田将巳氏は「製造現場向けに作業員が負担なく使用できるように工夫しました。保護グラス型や現場対応型のハードウェアを選んだ他、騒音環境でも音声認識できるような使いやすさを実現しています。IT機器に慣れていない現場の作業者でも簡単に操作できるように意識しました」と語っている。

 「EdaGlass」では、作業者が装着したスマートグラス端末からのカメラ映像やイラスト、テキストなどをリアルタイムに、遠隔PCと共有することが可能となる。設備異常などがあった際には、設備故障やチョコ停を「SmartFollow(スマートフォロー)」で通知を受ける。その際、トラブル対処法が分からなかった場合、「EdaGlass」を使って即座に有識者と接続し映像通話による指示を仰ぐことが可能だ。こうした機能を活用することで、熟練者と未経験者、双方が活躍する場を増やし、人材不足を補うことができる。

 また、「EdaGlass」は音声を使った支援方法として、音声認識機能により言葉をスマートグラス端末上に変換して表示する機能も搭載している。日本語を英語に変換したり、ベトナム語を日本語に変換したり、さまざまな言語に翻訳でき、受け入れが増える外国人労働者などとのコミュニケーションや、聴覚障がい者とのコミュニケーションなどを容易にできるというメリットなどもある(※)

(※)音声認識と翻訳はGoogleのサービスを利用

photophoto EdaGlass対応機種であるVuzix社製スマートグラスを装着した江田氏(左)と見えているイメージ(右)(クリックで拡大)出典:シーイーシー

 朝礼時や打ち合わせなどシーンに応じた機能なども用意する他、これらの機能を必要なタイミングで段階的に導入することも可能だ。要望に応じたアプリの開発などにも対応し、さまざまな課題を解決するためのアプリを順次開発する予定だ。こうした機能により、作業者の負荷軽減やオペレーションミスの削減、作業時間の短縮など、即効性のある課題解決を実現する。

 江田氏は「例えば、試験導入したある製造現場では『EdaGlass』音声認識機能を活用して聴覚障がい者を対象に技能研修を行っていますが、従来は56時間かかっていた研修時間を33時間に短縮することができました。このように、スマートグラス端末を使って、現実世界の『モノ』を見ながら、リアルタイムに支援する映像情報や文字情報などを示すことで、従来は暗黙知とされていた熟練技能者のノウハウを把握することが可能になります」とその価値について語っている。「EdaGlass」を使用するにはサーバが必要だが、サーバ1台当たり50ユーザーまでの接続が可能だ。ターゲットユーザーは自動車などの製造業を中心とし、物流、建設業などさまざまな業種も対象に含むという。

「EdaGlass」の動作(クリックで動画再生)
photo シーイーシー デジタルインダストリービジネスグループ スマートファクトリー事業部 第一サービス部 部長の朝日正人氏

 スマートグラス端末によるソリューションは既に多くの企業がリリースしているが、「EdaGlass」の強みには何があるのだろうか。

 シーイーシー デジタルインダストリービジネスグループ スマートファクトリー事業部 第一サービス部 部長の朝日正人氏は次のように話している。「製造現場のITからOTまで幅広く理解しているところが大きな強みとなっています。端末だけでなく、他のシステムとのデータや各種アプリとの連携が行える点など、短期に現場で“実際に使える”レベルでソリューションが提供できることが特徴です。さらに、今までもそうですが、ユーザーに寄り添い、現場で一緒に作り上げてきたということも特徴だと考えます。そのためユーザーにとって本当に価値があるソリューションを提供できます」と自信を示している。

デジタルの力で現場にリアルな支援を

 ここまで見てきたように「EdaGlass」は現場の知見を基に作られた「実際に使える」ソリューションである。製造現場が人手不足に苦しむ中で、人の力をより拡張し、有効に活用するという取り組みは今後欠かせないものになる。ただ、これらの取り組みを実現するには、製造現場での知見とITなどデジタル技術への知見の両方が欠かせない。これらの導入に悩みを抱えている場合には、ITとOTの豊富な知見を持ち製造現場への導入実績を数多く抱え、「EdaGlass」などの具体的なソリューションを持つシーイーシーに相談してみるのは1つの手かもしれない。

photo 「EdaGlass」を推進する江上氏(中央)と朝日氏(左)、開発者の江田氏(右)(クリックで拡大)

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提供:株式会社シーイーシー
アイティメディア営業企画/制作:MONOist 編集部/掲載内容有効期限:2020年2月24日

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