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» 2020年02月05日 10時00分 公開

自動運転技術:現実世界で100億kmは走れない、自動運転車のバーチャルとリアルの融合

ADAS(先進運転支援システム)の高度化から、無人運転車まで、自動車業界が直面する自動運転技術の開発は複雑さを極めている。これに伴い、自動運転車の信頼性の検証も、実走行のテストではまかないきれなくなっている。その中でシミュレーションをいかに活用すればいいのか、走行データというリアルな資産をどのようにバーチャルにつなげるべきなのだろうか。

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 自動運転車の安全性をどのように証明するか――。自動運転技術の実用化に対する期待が高まり、無人運転となるレベル4〜5の自動運転車をどのように活用するか、議論されている。また、既存の自動車メーカーだけでなく、IT大手やスタートアップ企業も含めた新たなプレイヤーが自動運転システムの製品化のスピードを競っている。

 こうした環境において、自動運転車の開発加速と高い安全性の確保を両立するには、信頼性や妥当性の検証方法の在り方がカギを握っている。現在、自動車業界やIT業界の大手企業は、世界各国で年間数万kmという距離を走り込み、公道試験を重ねている。ただ、信頼性を示すには総計100億kmもの走行距離が必要だとも指摘されており、実走行だけで信頼性を検証していては自動運転車が製品化するまで途方もない時間が必要になる。

 もちろん、走行距離を重ねるだけでは十分ではない。公道テストではめったに起きないような危険な状況や、暗黙の交通ルールやドライバー同士のコミュニケーションで成立しているような複雑な交通環境下でも、自動運転システムの振る舞いを検証しなければならない。こうしたテストに合わせて条件を整え、必要に応じて危険な場面を繰り返すことは、公道は言うまでもなく、テストコースであっても難しい。

 さらに、周辺環境の認識に使用するセンサーの方式や車両の搭載数を変更したり、自動運転システムの認知、判断、操作を担うAI(人工知能)のアルゴリズムを改良したりすることが、複雑な自動運転システムの開発では頻発する。そのたびに車両を何万kmと実際の道路を走らせることは、企業1社のリソースでは現実的ではない。

 リアルで走り込む信頼性検証ではカバーしきれないほど、自動運転システムは複雑さを増している。そこで不可欠となるのが、シミュレーションの活用だ。既に、自動車メーカーや大手のサプライヤーが実際の走行テストだけに頼った開発に限界を感じ、シミュレーションを自動運転システム開発に取り入れている。シミュレーション活用では、走行テストをリアルからバーチャルに移すだけでなく、走行試験で得たデータを有効活用しつつ、現実に再現するのが難しい環境を効率的にバーチャルで再現することが重要になっている。

 そんな中、dSPACEはシミュレーションでのシナリオベーステスト(シミュレーションで交通シナリオをベースとしたテスト手法)や、蓄積した走行データを生かした自動運転システムの開発(データドリブン開発)をサポートする。同社は、走行データの収集と記録や、走行データを基にした高精細な3D CGモデルの生成、その3D CGモデルを活用した走行シミュレーションに至るまで、一連のソリューションとして提供する。

パワフルな車載サーバが柔軟にデータロギング

 データドリブン開発は、走行データをシミュレーションで効率的に活用することを目指す。そこで、走行データの収集、記録に対応するのが「AUTERA」だ。自動運転車の走行テストによって、さまざまな方式の大量のセンサーが1時間に数TBものデータを生成することを想定し、大量のデータを処理できる広い帯域幅や演算能力、大容量のストレージを搭載した車載サーバである。

 多くの自動車メーカーやサプライヤーは、レベル2までの自動運転である先進運転支援システム(ADAS)から、ドライバーとシステムの運転が必要に応じて切り替わるレベル3、無人運転となるレベル4〜5まで広く手掛ける。レベルによって使用するセンサーの数や種類が異なるいずれのレベルの自動運転の開発もカバーするため、データロギングは進化を続ける各種センサーの入力への対応や、柔軟性、スケーラビリティが求められている。

 AUTERAはこうしたニーズに対応して、カメラ、LiDAR(Light Detection and Ranging、ライダー)、ミリ波レーダーや超音波ソナーなどのデータを直接取り込むためのさまざまなインタフェースや、ECU(電子制御ユニット)と通信するCAN FDやFlexRay、車載イーサネットなどのバスをサポートしている。特にカメラはGMSL II、FPD Link III、CSI IIなどの多くのインタフェースに対応し、さまざまなカメラとの互換性を確保した。高精度なタイムスタンプとともに、同期処理を行う。また、専用のAUTERAアップロードステーションを使用すれば、収集した走行データをクラウドやデータセンターに迅速にアップロードできる。

 AUTERAには、Intel Xeon CPU 12コアを搭載。データロギングの帯域幅はデータストレージユニット1個当たり25Gbpsで、AUTERA 1基に最大2個のデータストレージユニットを搭載できる。データストレージユニットの最大メモリ容量は32TBで、ハイエンドGPUを統合するオプションも用意されており、データの前処理やセンサーフュージョンが可能だ。また、GPUやFPGAなどハードウェアアクセラレータを組み合わせることにより、AIのアルゴリズム開発や妥当性の確認、最適化といった演算負荷の高いタスクにも対応する。

AUTERAのデモンストレーション。写真右下のカメラが撮影した映像が、写真右のディスプレイで表示されている。映像に映った人の顔にはリアルタイムでぼかし加工を施すのは、後述するunderstand.aiとの協力による機能だ。

データのアノテーションを大幅に自動化

 実走行によって取得した膨大なセンサーデータは、AIの学習やシミュレーションに活用するためにさまざまな加工を施さなければならない。例えば、カメラに映った物体を車両、歩行者、自転車、道路標識などに分類するラベル付け、認識した物体の種類ごとに色別で塗り分けるセグメンテーションなどがその例だ。さらに、欧州連合(EU)の個人情報保護法であるGDPR(一般データ保護規則)に従ってデータに含まれる歩行者の顔や車両のナンバーなどを隠す処理も必須となる。

 現在、こうしたデータ加工は人手と時間を割いた“人海戦術”で行われているのが実情で、走行データをシミュレーションでスムーズに活用する上での大きな壁になっている。また、人材確保の難しさや開発コストの増加、今後さらに規模が拡大する走行データの蓄積を踏まえると“人海戦術”にも限界があると考えられる。

 dSPACEは2019年7月に子会社化したスタートアップ企業understand.aiとともに、こうした走行データのアノテーション作業工程の70〜80%を自動化し、加工時間を短縮する。understand.aiはAI技術に特化したテクノロジー企業で、自動運転におけるデータ解析、データアノテーション、シミュレーションシナリオ抽出の自動化を中心に事業活動を行っており、dSPACEのテストソリューション強化にあたって重要な役割を果たしている。understand.aiの技術を取り入れたことにより、顔やナンバープレートへのリアルタイムなぼかし加工や、LiDARの点群データへのアノテーションも容易になる。これにより、効率的なデータ解析と正確なデータアノテーションが確実に実行できるようになる。

LiDARのデータにラベリングする様子。

 AUTERAで収集、記録し、understand.aiの技術で加工したデータは、高精細で物理的に挙動が正確な3D CGモデルを生成する「Sensor Realistic Simulation」と連携する。このCGによる環境モデルを活用して、カメラやLiDARなどのセンサーECUに搭載する認識アルゴリズムやセンサーフュージョンの動作をリアルタイムに検証できる。また、蓄積した走行データを基にするため、例えばドイツのアウトバーンを走ったデータがあれば、アウトバーンを完全に再現したリアルな3D CGを生成することが可能だ。

 Sensor Realistic Simulationでは、路面の白線のかすれ方や光の反射、車両の挙動を詳細に再現するだけでなく、雨や雪、霧などの天候や、時間帯による周囲の明るさなどをテストシナリオに合わせて自由に変更できる。屋内で天候や明るさを人工的にコントロールする設備もあるが、複雑化する自動運転システムのバリエーションへの対応や、センサーの変更や改良を頻繁に繰り返すことを考えると、バーチャルの方が柔軟に検証できる。危険な状況を含め、複雑な事象を再現してセンサーのアルゴリズムをテストする上では、シナリオを自由に扱える仮想環境の重要性が増す。

dSPACEの本社近くのアウトバーンで収集した走行データを基に生成された3D CG。白線のかすれ方までリアルに再現している。

 センサーのシナリオベースのテスト環境としては、ミリ波レーダー向けのソリューション「DARTS(dSPACE Automotive Radar Test Systems)」も用意している。検知対象となるターゲットとの距離や相対速度に応じて反射波を模擬するシステムで、周波数や振幅、反射の遅延などの調整によって、検知対象のターゲットの動きやミリ波レーダーとの距離を自在に設定できる。ミリ波レーダーから数十cmの距離にDARTSを設置することで最長1kmの距離を模擬する。高速で接近してくる移動体や、同時に4つの検知ターゲットを再現することにより、危険な交通状況を模したシミュレーションに対応する。

 こうしたバーチャルなシミュレーション環境によって、データ収集や自動運転システムの検証を実走行で行う必要がなくなるわけではない。狙いは、走行データの蓄積をフル活用してデジタルツインを構築することで、センサーの構成やAIのアルゴリズム変更、走行環境の条件設定などを公道やテストコースよりも容易にし、自動運転システムの信頼性や妥当性の検証をスムーズに進められるようにすることだ。

 dSPACEは、このほど開催された消費者向けエレクトロニクス展示会「CES 2020」(2020年1月7〜10日、米国ネバダ州ラスベガス)に初出展。シナリオベーステストやデータドリブン開発の取り組みをアピールした。

協調路線で自動運転システムの評価体制を整えるドイツ勢

 dSPACEの強みは、ドイツに本社を構え、世界的に有力な自動車メーカーやサプライヤーと密接な関係を築いている点だ。当然、自動運転システムの評価に関する欧州の最新動向もフォローしている。

 ドイツの自動車業界では、自動運転車の安全性評価やテスト環境の構築について、個社で取り組むことではなく、協調領域と位置付けた。その一環として始まった連邦経済エネルギー省がサポートするプロジェクト「PEGASUS」では、自動運転車両のテスト及び実験方法を定義し、「OpenSCENARIO」「OpenDRIVE」「Open Sensor Interface」といった、安全性評価の標準となるフォーマットの使用が提案された。ドイツ勢はこれらを国際標準として広げることにも取り組んでいる。

 これに対し、日本でもドイツと同様に自動運転システムの評価は協調領域であるとの認識で足並みがそろった。ただし、日本ではPEGASUSプロジェクトほどの明確な動きは表に出てきておらず、今後日本でつくられる自動運転評価のシミュレーションの標準は海外との協調も不可欠だ。dSPACEはドイツに本社を構える点を生かして、欧州の標準を取り込んだサポートを日本でも展開する。

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提供:dSPACE Japan株式会社
アイティメディア営業企画/制作:MONOist 編集部/掲載内容有効期限:2020年3月4日