3D CADを用いて2D図面を作成すべき理由“脱2次元”できない現場で効果的に3D CADを活用する方法(9)(2/3 ページ)

» 2020年02月12日 10時00分 公開

3D CADで2D図面を作成するタイミングとメリット

 3D CADで2D図面を作成する大きなメリットとして、設計変更に対する“3Dモデルと2D図面との連動性”が挙げられます。

 3Dモデルに修正が入り、形状が変更された場合、2D図面も連動してその修正が反映されます。記入していた寸法や作成していた断面図、詳細図など、全て連動して修正されます。「正面図は修正したけど、右側面図を修正し忘れた……」といった製図や2D CADのよくあるミスは起きません。3D CADで2D図面を作成することで、各投影図と寸法(サイズ)に矛盾のない図面を作成できます。

 ここまで3D CADにおける2D図面機能について説明してきましたが、特に製図や2D CADの経験がある人は、3D CADで簡単に図面が作れることに驚かれたのではないでしょうか。2D CADから3D CADに移行された方々の中には、「2D図面の作成が楽になる」という理由で利用されている方もいます。

 前述したように、一般的な3D CADであれば、3Dモデルと2D図面が連動しているため、3Dモデルが全て完成してから2D図面を作成する必要はなく、3Dモデルを作成している設計の初期段階から2D図面を作成し、図面を更新しながら寸法(サイズ)を確認して作業を進めるといったことが可能です。

 設計作業を進めていると、「A」という要件を優先して作成したら、「B」という要件が守れなくなってしまった、ということがよくあります。そうした場合、要件をあらかじめ図面化しておくことで、後から調べやすくなり、間違いなどにも気付きやすくなります。

 3D CADの利用において、「2D図面の作成は最後にやらなければいけない」という固定概念を持っている人もいますが、そんなことはありません。早い段階から2D図面を作成することで、全体の形状から細かい寸法のところまでしっかりと確認しながら、着実に設計作業を進めていくことができます。

3D CADの図面機能に合わせた社内ルールの作成

 ここまで、3D CADを用いた2D図面作成のメリットを述べてきましたが、その逆、起こり得る問題点についても触れておきます。

 図面は、製図規格にのっとり作成します。日本の場合は、JIS(日本工業規格)の製図規格があるわけですが、3D CADで2D図面を作成した場合、一部、製図規格と合わない部分が出てきます。

 分かりやすい例だと、JISでは円の形が分かる形状に寸法を入れる際、寸法補助記号の「Φ」を省略することになっていますが、3D CADでは円に直径を付けようとすると、自動で記号が付加されます。もちろん、この記号を消すこともできますが、手間が掛かります。

 また、断面図の作成でも組図の場合、ボルトやナット、リブなど、“断面にすると分かりにくいものは断面にしない”というルールがあります。しかし、3D CADの場合は、設定で変更できるものもありますが、断面が作成されてしまいます。それ以外の製図のルールについては、山田学氏の連載「演習系山田式 機械製図のウソ・ホント」を参考にしてください。

山田学氏の「演習系山田式 機械製図のウソ・ホント(3)(4)」より 図4 山田学氏の「演習系山田式 機械製図のウソ・ホント(3)/(4)」より [クリックで拡大]

 前述の通り、3D CADで2D図面を作成する場合、製図規格に完璧に対応しようとすると、思いのほか手間が掛かることがあります。そのため、場合によっては、使用している3D CADの2D図面機能を生かした“社内の図面化ルール”を整備し、作業の省力化や効率化を考えることも重要だと思います。

 3D CADによる2D図面作成機能は、3Dモデルを利用して自動作図するため、図面ミスを減らし、業務の正確性を上げることができます。それが最終的には時間短縮などの省力化にもつながります。

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