FRという個性を捨てて、BMW「1シリーズ」は生き残れるのか車・バイク大好きものづくりコンサルタントの試乗レポート(4/4 ページ)

» 2020年02月13日 06時00分 公開
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1シリーズはどこに向かったのか?

 F40のCMを見て驚いた。使用しているキャラクターが「天才バカボン」なのだ。メルセデスベンツAクラスが2代目にフルモデルチェンジした時にも人気マンガのキャラクターを多用したCMを流していたが、バカボンが出てくるこのCMだけで購買意欲が削がれる。

 AクラスはそんなCMも貢献してか、商業的に大成功を収めた。ブランド別輸入車登録台数のトップの座に2000年から2015年までの長い間君臨していたフォルクスワーゲン(VW)を抜き、以降はメルセデスベンツがトップの座を守り続けている。VWがトップから陥落したのはディーゼルゲート事件の影響もあるだろうが、Aクラスが300万円程度から買える手軽さが、メルセデスベンツの成功要因だったのではないだろうか。

 Aクラスの主な購買層は、前輪駆動か後輪駆動かを気に掛けることのない方々だ。一方、BMWは以前からラインアップしていた2シリーズアクティブツアラーでFFを採用し、新たな購買層の支持を得た。そしてそのパワートレインを今回F40に搭載してきたわけだ。本当にそれでよいのだろうか? BMW伝統のキドニーグリル、F40では単純な縦バーではなく、細かいドット形状を採用した(写真6)。これもAクラスに右に倣えではないのか? というのは私が意地悪過ぎるのだろうか?

 セールスマンが参加したF40の勉強会では、F20へのユーザーアンケートのある結果が示されたという。「後輪駆動のこだわりがありますか?」との問いに、YESと答えたユーザーは13%にすぎなかったという。その話を聞いて私はセールスマンにこう答えた。「ということは、少数派である私のような後輪駆動好きは見捨てられたわけね」と。

写真6:伝統のキドニーグリルはドット柄に(クリックして拡大)

F20より売れるとは思えない

 私はF40が発売されることをもちろん随分間から知っていた。そこであえて販売終了間近のF20 118d M-sport EDITION SHADOWを購入した。理由はもちろん「FRコンパクトハッチバックは今後世に出てこない、今のうちに新車で手に入れたい」という思いからで、この判断は100%正解だと思っている。

 FRという最高の個性を捨て、価格競争力もあるとは思えないF40。販売は相当に苦労するだろう。すでにローン金利は0.99%という実質値引きになっている。私は唯一無二のFRスポーティハッチバックのF20に長く乗ることになりそうだ。

 商業的に成功することは企業として大切なことだ。しかし、私はそのために絶対に捨ててはいけないものがあると思う。皆さんはどうお感じになっただろうか。

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