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» 2020年02月20日 10時00分 公開

よくわかる「標準時間」のはなし(13):標準時間は働き方を監視するためのものではない? 現場管理監督者の役割とは (1/4)

日々の作業管理を行う際の重要なよりどころとなる「標準時間(ST;Standard Time)」を解説する本連載。最終回となる第13回は、測定した標準時間を活用していかなければならない現場管理監督者の役割について説明する。

[福田 祐二/MIC綜合事務所所長,MONOist]

⇒連載『「よくわかる「標準時間」のはなし』バックナンバー

1.現場の管理監督者の役割

 まず、現場の管理監督者の役割についてあらためて確認しておきましょう。

 現場の管理監督者にとっては、最も精通している自分の責任職場で、部下である作業者と一緒に作業をこなすのは実に楽な仕事です。上司の指示に従って部下に発破をかければいいという、このような仕事のやり方を管理監督者である自分の仕事と勘違いしている人も多く、なかなか管理業務に就こうとしない人も見受けられます。

 このような人々は、管理監督者の本来の仕事でもある「どのようにすれば、もっと安く作ることができるだろうか」ということを毎日考えながら仕事に臨んでいるのでしょうか。仕入れは購買が、人件費は総務が考える。自分は上司から言われた通り、遅延なく物を生産していればよいと考えているようでは、管理監督者としての資格はないと言わざるを得ません。

 仕入れや人の問題も大きいことは確かです。しかしながら、実際の金もうけの種は、生産現場に無限に落ちています。現場の管理監督者の仕事は、生産現場のムダを1つずつつぶし、改善活動を当たり前のこととして続けていくことが本来の仕事です。同様に人についても、ただミスがないように監督しているのではなく、一人一人の作業者の能力を育て引き出し、フルに発揮できるような環境を作っていけば生産性は一気に上がっていきますし、それこそ本来の仕事といえます。

 「どうすれば担当現場の競争力をアップできるのか」――現場の管理監督者として考えるべきはこの点に尽きるといっても過言ではありません。しかし、日々の雑務に追われ、とてもそのような時間は無いという管理監督者も多いかと思います。まさに「日々の雑務」がすぐに改善すべき問題になっているのです。

 職場のモノづくりに何か違った知恵がついていないと、他社との競争には決して勝てません。頭の中で考えていたプランが本当に現場で通用するのかどうかを自分で確認してみましょう。最初はうまくいかないかも知れませんが、うまくいくように自分自身の手で改善を積み重ねていけば、必ず効果が出てくるはずです。部下の人たちに何かを言う前に自分自身が変わらなければ、決して現場は変わりません。その上で、いろいろな課題の中から皆がやる気を起こすテーマを見つけて推進していきます。

 「働きやすさ」というのは、どれだけ作業がやりやすく、自分の能力をフルに発揮できるかで決まってくるものです。どうすれば効率の良いモノづくりが可能かを工夫することが大切なのは当然といえます。

 「いかに安く良いものを作るか」は、現場での試行錯誤の繰り返しからしか生まれてきません。そのためにはモノづくりを通して、部下の人たちを実践訓練でキチンと育てていかなければなりません。身に付けるべき能力や技術の目標をはっきりと明示して全員がチャレンジできる体制をつくり、生産職場で働く一人一人が知恵を生かして、積極的に作業を改善していくシステムを確立することが肝要です。何も考えずに、ただ上司から言われた指示だけを日々繰り返していくやり方に比べ、どちらがより働きがいがあり人が育つかは歴然としています。

2.磐石なモノづくりの現場を目指す

 現場の管理監督者の最も重要な仕事は、「職場改善(生産性向上)」であることは理解していただけたと思いますが、この際のよりどころとなる指標が、本連載のテーマである標準時間(ST:Standard Time)です。例えば、改善計画、改善前後の効果算出、作業訓練などに活用することができます。また、標準時間の設定や作業管理に欠かせないのが標準作業です。

 管理監督者は、常に作業者に対して「標準作業は、守らねばならないものである」という雰囲気作りに努力しなければなりません。「標準作業を守る」ということは、管理監督者の仕事ですから、標準作業を絶対に守るということが、目標品質を満足し、安価な製品を安全に生産することにつながるということを、部下である作業者に理解してもらうように努力しなければなりません。

 そして、標準作業が徹底され、実施されているか、やり難い点はないかなどの調査をし、十分に見極めていく必要があります。標準作業は生きていて、常に未完成であり、いつでも変更可能な課題を持っているものであると理解してください。標準作業を定める管理監督者も、それを順守する作業者も、お互いに進歩向上させていくために、常に作業改善を心掛け、その改善に基づき、標準作業の改訂を繰り返していくということが大切です。

 改訂が行われていない標準作業票がいつまでもぶら下がっている職場の管理監督者は、改善に対して「無能者である」と自ら証明するようなものだと先輩から聞かされていました。管理監督者が、しばしば標準作業を部下が守ってくれないと嘆いている場面を見受けますが、部下に守ってもらうためには、標準作業を作成するときに、現場でその作業を一番よく知っている作業者に参画を依頼したり、意見を聞いたりすることも一案です。

 いずれにしても、標準作業の実施は、標準作業を守ることであり、改善は標準作業を改訂することです。標準作業が守られていれば、作業結果に異常があったとき、常に標準作業に基づいて調査をすることで原因の追求が容易にでき、また、改善の手掛かりや問題点の所在を知ることができます。

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