「ひとりメーカー」Bsizeが生き残ったシンプルな理由ポスト・メイカームーブメント(1)(2/5 ページ)

» 2020年02月21日 10時00分 公開
[越智岳人MONOist]

なぜ、Bsizeは大ヒット商品を生み出せたのか

 日本におけるメイカームーブメントの代表格ともいえるスタートアップがいる。八木啓太氏が率いるBsize(ビーサイズ)だ。

 八木氏は富士フイルムで医療機器の機構設計に従事しながら、独学でデザインを学んだ。2011年に退職して、Bsizeを創業。町工場と組んで開発したLEDデスクライト「STROKE」は、そのデザイン性の高さもさることながら、製品化までの全ての工程を“ほぼ1人”でこなしたことから、「ひとりメーカー」としてメディアにも大きく取り上げられた。

Bsizeが開発した製品 Bsizeが開発した製品。上から2011年に発表したLEDデスクライト「STROKE」の後継機「STROKE2」、2013年に発表したワイヤレス充電器「REST」、2017年に発表した見守りGPSサービス端末「GPS BoT」 [クリックで拡大]

 折しも2012年にクリス・アンダーソン著の『MAKERS』の邦訳書が日本でも発売され、「メイカームーブメント」という言葉が聞かれ始めた頃だったこともあり、Bsizeは「日本版メイカームーブメント」の象徴として認知されるようになった。

 その後、Bsizeは2013年に無線充電器「REST」を発売し、2017年から販売を開始した子供の見守りGPSサービス「GPS BoT」は、小学生の保護者の間で大人気のヒット商品となった。現在は、10人の社員とともにGPS BoTのサービス運用と開発を継続している。

 多くのスタートアップがハードウェアの量産や経営に苦労する中、なぜBsizeは大ヒット商品を生み出すことに成功したのか。最初のプロダクトであるSTROKEを世に送り出し、「ひとりメーカー」と紹介されることが多かった当時を、八木氏は次のように振り返る。

 「当時、『ひとりメーカー』と言ってもらえたのは非常にありがたかったのですが、自分自身ではどちらかといえば『零細企業』だと思っていたので、ご期待と現実との乖離(かいり)に違和感はありましたね。むしろ、今の方がハードウェアスタートアップらしい状況に近づいていると思います」(八木氏)

 当初、八木氏のみだったBsizeだが、現在は社員10人。子供の見守り用GPSデバイスであるGPS BoTは、小学生の保護者の間で高い支持を得るなど急成長を遂げている。メイカームーブメントを体現する起業家として紹介されたことによって、採用や工場との商談では有利に働いた面もあったという。

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