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» 2020年03月04日 10時00分 公開

海外医療技術トレンド(56):米国は新型コロナウイルスに「バイオディフェンス」で対応、イノベーション創出も (3/4)

[笹原英司,MONOist]

縦割サイロ組織の弊害を排したデータ連携がバイオディフェンスの課題

 他方、歴史の浅い国家バイオディフェンス戦略には課題も多い。2019年6月26日、米国会計検査院(GAO)は、「バイオディフェンス:生物学的脅威への防御に関する積年の課題に国家は直面する」(関連情報)と題した報告書を公表した。この報告書は、2009年12月から2019年3月までの間にGAOが発行した生物学的脅威やバイオディフェンス関連の報告書、提言書などを収集・分析した結果をとりまとめたものである。

 図3は、GAOが2017年10月に公表した「バイオディフェンス:生物学的脅威の認識を構築するための連邦政府の取り組み」(関連情報)で提示した、脅威認識の3大要素であり、個々の要素ごとにDHS、国防総省(DOD)、HHS、農務省(USDA)、環境保護庁(EPA)などの主要省庁が関わっていることが分かる。

図3 図3 バイオディフェンスにおける脅威認識の3大要素(クリックで拡大) 出典:U.S Government Accountability Office (GAO)「BIODEFENSE: The Nation Faces Long-Standing Challenges Related to Defending Against Biological Threats」(2019年6月26日)
  • インテリジェンス収集:人間や動物、植物に害を及ぼす可能性のある敵の機能や新たな感染症に関する情報
  • 科学研究:毒性、表面安定性のようなエージェントの特徴を理解するための研究所の作業
  • 分析活動:モデリングやシミュレーション研究を通じた潜在的な生物学的イベントのスコープとインパクトの決定

 次に図4は、GAOがこの報告書の中で提示したバイオディフェンスと脅威認識のための政府機関間における協働メカニズム例である。

図4 図4 バイオディフェンスと脅威認識のための政府機関間における協働メカニズム例(クリックで拡大) 出典:U.S Government Accountability Office (GAO)「BIODEFENSE: The Nation Faces Long-Standing Challenges Related to Defending Against Biological Threats」(2019年6月26日)

 ここでは、以下のような協働メカニズムと各省庁の参画状況をマトリックスで示している。

  • 政府機関間のバイオテロリズム・リスク強化作業部会
  • 公衆衛生緊急医療対応組織体
  • 化学的、生物学的、放射線学的、原子力学的、爆発的脅威のためのテロ対策技術支援作業小部会
  • バイオディフェンスに関する覚書
  • 国家政府機関間のバイオディフェンス・キャンパス
  • DHS科学技術局研究プロジェクト

 DODおよびDHSは、全てのメカニズムに参画しているのに対して、HHSを含む他の政府機関の参画状況にはばらつきがあることが分かる。

 このような分析を踏まえ、GAOは以下のような点について課題を指摘している。

  • 組織体全体の脅威評価
  • 状況認識とデータ統合
  • バイオ検知技術
  • 生物学研究所のセーフティとセキュリティ

 これらのうち、状況認識とデータ統合に関連して、GAOが課題を指摘しているのが、DHS傘下の国家バイオサーベイランス統合センター(NBIC)である。NBICは、2012年11月に「国家バイオサーベイランス統合センター戦略計画」を策定し(関連情報)、さまざまな国土安全保障関連コンポーネントを集約して、バイオ脅威への対応を計画・調整するハブ機能の提供が期待されてきたが、組織目的の明確化、他の政府機関との協働、パートナーエコシステムの構築など、継続的な課題を抱えているのが実情だ。

 なお、前述の国家バイオディフェンス戦略については、GAOが過去に指摘した継続的課題の解決に役立つ可能性があるとしているが、まだ戦略展開の初期段階であり、国家として限られたバイオディフェンスのリソースを有効活用するために、各省庁の展開方法や進捗状況を見守る必要があるとしている。

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