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» 2020年03月09日 06時00分 公開

どうなる? 次世代車の整備(1):高度化する自動車技術、修理や整備は追い付けるか (1/3)

自動車技術の高度化は、快適性の向上や環境負荷の低減など、自動車が抱える多くの課題を解決し、持続的な自動車社会の形成には不可欠なものです。同時に車両技術の高度化に伴い、整備や修理の技術にも変化が求められます。

[友野仙太郎,MONOist]
これまでのクルマに必要な検査を実施している車検だが、クルマの進化に合わせた検査項目の議論が活発化している(クリックして拡大)

 自動車技術の高度化は、快適性の向上や環境負荷の低減など、自動車が抱える多くの課題を解決し、持続的な自動車社会の形成には不可欠なものです。同時に車両技術の高度化に伴い、整備や修理の技術にも変化が求められます。

 自動車が本来の性能を発揮するためには、正しい整備や修理が必要です。その一方で、近年の急激な自動車技術の進化により、修理の現場では新技術に対応できない事例が増えるなど、さまざまな問題が発生しています。

 この連載では、整備や修理の内容、法整備や技術的課題、現場の実情など次世代車の修理を考察していきます。

高度化する自動車整備

次世代車となっても「走る・曲がる・止まる」の安全性を担保する整備の必要性は変わらない(クリックして拡大)

 自動車整備とは、走行距離や経年劣化などにより傷んだ、シャシーやボディー、エンジン、ステアリング、サスペンション、ブレーキなどの部品を、必要に応じて交換や修理を行うことです。また、部品が本来の性能を発揮するためにメンテナンスを行うことも重要な整備作業です。

 加えて、車検制度がある日本では、定められた期間でクルマの状態を検査しなくてはなりません。この車検制度が日本の路上を走るクルマの安全性を担保してきたことに加えて、世界に誇れる日本車の強みでもある高い信頼性につながっているといっても過言ではありません。

 ところが自動車技術の進化とともに車検制度そのものが変わろうとしています。これまで車検といえば、部品の取り付け具合や、ブレーキの作動、灯火類の点灯、排出ガスの数値など、目視や計測による確認といったアナログな検査が中心でした。

 ただ、現代のクルマではエンジンの制御や車両安定装置など多くの電子制御が採用されています。当然、電子制御に不具合があれば本来の性能を発揮することはできないため、正しく電子制御が機能しているかどうかを定期的にチェックするのは必然ともいえます。

 現代のクルマにおける電子制御技術は、クルマの性能を大きく左右する重要な役割を担っています。例えば2015年に発覚した、フォルクスワーゲン(VW)がディーゼルエンジン(DE)の排出ガスを不正に操作した「ディーゼルゲート」事件では、試験走行領域で排出ガスがクリーンになるような不正なプログラムを搭載していました。これにより厳しい排出ガス検査をクリアしながら高い走行性能を実現していました。実際にライバルメーカーのエンジニアは、環境性能と出力を高い次元で両立した当時のVWのDE車に乗り、「これではとても敵わない」とVWの技術力の高さに脅威を感じたと、当時を振り返ります。

電子制御技術によって、同じモーターを使いながら他のモデルとの差別化が図れる(クリックして拡大)

 また、電気自動車(EV)やハイブリッド車(HV)などの駆動用モーターは、構造がシンプルであるために、内燃機関以上に電子制御で出力がコントロールしやすいといえます。

 日産自動車ではEV「リーフ」に搭載するモーターを、シリーズハイブリッドシステム「eパワー」の動力源にも流用しています。同じモーターを使用して、スケールメリットの追求とEVのコストダウンを両立すると同時に、車種ごとに最適な出力を制御によって実現しています。これによりコンパクトカー「ノート」はクラスを超えた加速力、ミニバン「セレナ」ではモーターならではのスムーズな加速など、セグメント内における他車との差別化に生かしています。

 このように電子制御により性能向上を図っている現代のクルマですが、性能を担保するためには電子制御が正しく働いていることが前提となります。このため国土交通省は使用過程車でも電子制御の不具合のチェックが不可欠と判断し、2024年から車検時に車載式故障診断装置(OBD)の検査を義務付けることになりました。対象は2021年以降の新型車(乗用車、トラック、バス)で、輸入車については2025年からの検査実施となります。

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