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» 2020年03月09日 11時00分 公開

SEMICON Japan 2019:空飛ぶクルマ、SUBARUの取り組み

 半導体製造技術の展示会「SEMICON Japan(2019年12月11日〜13日、東京ビッグサイト)」で開催されたセミナー「SMART TransportationフォーラムII」にSUBARU(スバル) 航空宇宙カンパニー 技術開発センター自律システム設計部長の山根章弘氏が登壇。「空の移動革命に向けたSUBARUの安全への取り組みについて」をテーマに講演した。

[長町基,MONOist]

 半導体製造技術の展示会「SEMICON Japan(2019年12月11日〜13日、東京ビッグサイト)」で開催されたセミナー「SMART TransportationフォーラムII」にSUBARU(スバル) 航空宇宙カンパニー 技術開発センター自律システム設計部長の山根章弘氏が登壇。「空の移動革命に向けたSUBARUの安全への取り組みについて」をテーマに講演した。これまで自動車と航空機分野で新たな技術に挑戦し独創的な製品を提供してきたスバルが、空のモビリティを実現するために重要な課題である安全確保のために取り組んできた技術開発の例を紹介した。

航空機技術と自動車技術を融合する「空飛ぶクルマ」

 スバルの前身は1917年に群馬県で創設された飛行機研究所(のちの中島飛行機)である。戦時中は「隼」などの戦闘機を製造していたが、戦後になると一時解体された。1953年に再結成して富士重工業として再スタートを切り、その際に自動車と、戦前からの技術を生かして航空機の開発・製造を事業の中心とした。2017年に創設から100年たったことを機会に社名を「SUBARU」(スバル)へと変更している。

 スバルでは、創業から現在まで、自動車、航空機それぞれの分野で新しい技術に挑戦してきた。例えば、自動車ではアイサイト(EyeSight、運転支援システム)、航空機の分野では無人航空機など、自動制御技術の開発に取り組んできた。さらに現在取り組んでいるのが、自社生産するヘリコプターの垂直離着陸技術や無人航空機の自動飛行技術、自動車の電動化技術を融合させて取り組む「空飛ぶクルマ」である。

 自動車の分野では、CASE(コネクテッド、自動運転、シェアード、電動化)がトレンドとして大きな注目を集めている。これは「空飛ぶクルマ」にもそのまま当てはまる。コネクテッドは「空飛ぶクルマ」を運航するための新たな管制システムであり、自動運転はパイロットレスの自動制御技術、シェアードは多機種を効率的に運航させるノウハウやシステムとなる。また、電動化は機体および運航維持コストの低減化につながる。さらに、自動化によって安全性は向上し、利用の拡大が進む。環境問題の改善にもつながる。山根氏は「このサイクルを回すことで、次の需要が生まれる。こうした流れを空飛ぶクルマで実現できれば、世界で利用されるようになる」と考えを述べている。

「空飛ぶクルマ」の安全技術

 「空飛ぶクルマ」で必要となる技術の中で、スバルは「安全性」を最も重視している。中島飛行機時代から航空機メーカーとして「他社が性能、速度などを求めていた中で『パイロットの命を守ること』に力を注いだ飛行機づくりをずっと行っていた。それが現在にも受け継がれている」と山根氏は安全性への取り組みを強調する。さらに「これがスバルの『すべての人に安心と楽しさを』というキャッチフレーズとなってつながっている」(山根氏)という。

 スバルの航空宇宙カンパニーでは、これまで安全性確保に向けてさまざまな技術開発に取り組んできた。約15年前には、着陸地点の状況に合わせた自動離着陸技術を実証した。同技術は、無人のヘリコプターに使っていたもので、ステレオカメラを用いた画像認識技術や、人工知能(AI)を使ってヘリコプターを安全に離着陸できるようにした。さらに、機体の故障、損傷が発生しても安全に飛行継続ができる技術も約10年前に実証している。

 現在研究開発を行う安全関連技術としては、衝突回避技術がある。2019年7月には、相対速度が時速100kmでの中型の無人航空機における自律的な衝突回避試験を実施した。カメラやレーダーなどを搭載した中型の無人航空機が時速40km程度で飛行し、正面から時速60km程度で前進飛行してくる有人ヘリコプターを探知し、自律的に衝突を回避するものである。さらに、飛行中に遭遇する気象リスクを低減する予測システムにも取り組んでいる。これは、主に日本の空で多い雷を対象としたもので、雷に関したデータをAIによって分析し雷の発生を予測する。

 空の移動革命の実現に向けては、技術だけでなく関連する法律、インフラ、事業者などのさまざまな要素を同時に進める必要がある。これらを推進することで社会の受容性が拡大することができる。そのためには、まずは先行開発を行い、同時に安全性、電動化など要素技術の開発を並行させて実施することが求められる。山根氏は「モビリティのメーカーとしてスバルでは、安全・安心を確保して、かつ、空飛ぶクルマだけでなく、自動車、鉄道、さまざま乗り物と連携したシームレスな移動を実現する」と考えを述べている。

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