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トヨタNTTの“がっかり”提携会見、その背後にある真の狙いとはモビリティサービス(1/4 ページ)

2020年3月24日、トヨタ自動車とNTTが資本業務提携についての記者会見を開いた。主要な題目はスマートシティービジネスとなっていたが、両社の説明は具体性に欠け“がっかり”させる内容だった。今回の会見の背景にある狙いについて、自動車産業ジャーナリストの桃田健史氏が読み解く。

» 2020年04月03日 10時00分 公開
[桃田健史MONOist]

なぜ、このタイミングなのか?

 トヨタ自動車(以下、トヨタ)と日本電信電話(以下、NTT)が2020年3月24日、資本業務提携について記者会見を開いた。

 主要な題目は、スマートシティービジネスだ。

 報道陣に開催実施の通知があったのは、同日午前11時前で、開始時間は午後3時から。新型コロナウイルス感染を予防する観点から、東京都内の会見場での取材は新聞や通信社など、いわゆる“トヨタ番(記者)”を主体として参加人数を絞り、会見の模様はYouTubeライブ映像として日本語と英語で配信した。

記者会見に登壇したトヨタ 社長の豊田章男氏(左)とNTT 社長の澤田純氏(右) 記者会見に登壇したトヨタ 社長の豊田章男氏(左)とNTT 社長の澤田純氏(右)(クリックで拡大) 出典:トヨタ自動車

 なぜ、このタイミングで会見を実施したのか。

 理由は幾つか考えられる。

 まずは、NTTドコモによる5Gの商用サービス開始が、会見翌日の3月25日だったから。とはいえ、NTTとしてはサービス訴求に関する事業戦略工程表は事前に策定されているのだから、ここまでギリギリのタイミングで会見をする必要もないだろう。

 一方、トヨタサイドから見れば、将来に向けたポジティブな話題が欲しかった時期といえる。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響で中国、北米、欧州での需要が急減速し、また一部サプライヤーからの部品納入が滞ったことも重なり、日本を含めて最終組み立て工場の一時休止を余儀なくされており、その影響は今後、さらに長期化する可能性が高まっている。世界的な株価下落もあり、トヨタとして企業広報上、明るい将来構想を情報発信することが必要だったと考えられる。

 ただ、会見内容は、両社の将来事業に関する詳細な紹介はなく、記事を書くのに困った報道関係者が多かったのではないだろうか。

トヨタとNTTの共同記者会見の模様(クリックで再生) 出典:トヨタ自動車

 明確に提示されたのは、資本業務提携における株式譲渡金額となる、トヨタとNTTそれぞれ約2000億円という数字だけだ。トヨタはNTTの普通株式8077万5400株、またNTTはトヨタの普通株式2973万900株を取得する。発行済み株式枚数に対する所有割合では、トヨタがNTTの約2.07%に対して、NTTはトヨタの0.90%となる。

 合意書締結日が2020年3月24日で、株式取得日(払込期日)が同年4月9日。株式市場は2008年のリーマンショック以来となる、株価乱高下が続いており、その中で株式取得日を設定して、そこから逆算しての会見になったとみるべきだろうか。

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