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「EUROMAP」で広がるオープン化の波、射出成形機の方向性いまさら聞けないEUROMAP入門(3)(3/3 ページ)

» 2020年04月13日 11時00分 公開
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OPC UA CSにより進むオープン化の波

 OPC UAをベースとしてそれを補完する形で機種ごとに異なる要求仕様の詳細に対応するために策定されているのが、OPC UA CS(CompanionSpecification:コンパニオン仕様)のEUROMAPであることは第1回で紹介した。OPC UAをベースとしたコンパニオン仕様によるオープン化の取り組みは射出成形機に限った話ではなく、OPC UAの主幹をするOPC Foundationとドイツ機械工業連盟(VDMA)の協力により15を超える業界でOPC UA CSの検討と策定が進められている。

 その中でも、EUROMAPと並んで仕様のリリースまで進んでいるのは、ロボットに関する「OPC UA Companion Specification for Robotics(OPC UA Robotics)」、マシンビジョンの「OPC UA Companion Specification for Machine Vision(OPC UA Vision)」、工作機械の「universal machine tool interface(umati)」の3つである(umatiについてはリリース間近)。

photo Overview of OPC UA Companion Specification Working Groups(クリックで拡大)出典:OPC Foundation「OPC Unified Architecture Interoperability for Industrie 4.0 and the Internet of Things」より抜粋

 これら先行する4つのコンパニオン仕様の他にも「Overview of OPC UA Companion Specification Working Groups」の一覧にある通り、多くの業界でワーキンググループによる仕様検討が行われている。オープン化の取り組みはあらゆる業界で着実に進んでいることが伺い知れる。

 スマートファクトリーを実現するための必須要件としてオープン化が進められているわけだが、これがインダストリー4.0という国の施策にひも付いた取り組みであることから、過去に何度かあったような一過性のムーブメントではなく業界の枠を超えた今後の共通のトレンドになることは想像に難くないだろう。


 これまで多くの場面でその重要性が語られてきたオープン化について改めておさらいの意味も兼ねて本稿で紹介した。インダストリー4.0が目指すスマートファクトリーの実現のためにはオープン化が欠かせない要素であること、またオープン化はユーザーにとってのメリットがあるだけではなく設備メーカーにとっても新しい付加価値を生み出すために重要な役割を持っていることをご理解頂けたと思う。

 今後オープン化の波はさまざまな業界に広がっていくと思われるが、本稿でご紹介した日精樹脂工業やU-MHIプラテックなどのように先進的な取り組みを進めていく日本企業がこれから数多く登場することに期待したい。

≫連載「いまさら聞けないEUROMAP入門」の目次


著者紹介:

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篠田和伸(しのだ かずのぶ) 
ベッコフオートメーション ビジネスディベロップメントマネージャー

 日本大学大学院理工学研究科卒業後、日系大手電機メーカーにて省庁に納入するシステムのシステム設計、プロジェクトマネジメントを担当。その後米国系センサーメーカー日本法人の技術部長を経て2017年にPC制御に特化したドイツの制御装置メーカーであるベッコフオートメーション株式会社に入社。

 EtherCATを軸としたPC制御ソリューションによる新たな価値を日本の市場に広めるため、ベッコフの持つ様々なテクノロジーの普及に努めている。



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