特集:IoTがもたらす製造業の革新〜進化する製品、サービス、工場のかたち〜
連載
» 2020年04月21日 11時00分 公開

製造マネジメント インタビュー:機械は人を追い詰めるのか、日本とドイツに見る“人と機械の新たな関係” (1/3)

デジタル化が進む中で人と機械の関係はどう変わっていくのだろうか――。こうした疑問を解消すべく日本とドイツの共同研究により「Revitalizing Human-Machine Interaction for the Advancement of Society(デジタル社会における人と機械の新たな関係)」が発行された。共同発行者である日立製作所 研究開発グループ 生産イノベーションセンタ 主管研究長の野中洋一氏に話を聞いた。

[三島一孝,MONOist]

 AI(人工知能)やロボット技術の進化により、領域によっては機械が人間の能力を超越するような状況が生まれつつある。こうした中で、人と機械の関係性はどのように変わっていくのだろうか。

 そのような疑問を解消すべく日本とドイツの共同研究により白書「Revitalizing Human-Machine Interaction for the Advancement of Society(デジタル社会における人と機械の新たな関係)」が発行された。発行者はインダストリー4.0の生みの親ともいわれるドイツ工業アカデミー評議会(acatech)議長のヘニング・カガーマン(Henning Kagermann)氏(※)と、日立製作所 研究開発グループ 生産イノベーションセンタ 主管研究長の野中洋一氏である。同レポートの内容と「人と機械の関係」についての野中氏の考えを聞いた。

(※)関連記事:“生みの親”が語るインダストリー4.0の本質とこれから

「人と機械」のこれからの働き方

MONOist そもそもこの共同研究はどういう経緯で始まったのですか。

野中氏 日本政府が新たな社会の姿として描いて推進している「Society 5.0」だが、日立製作所でも各方面で力を入れている。しかし、「Society 5.0」として描かれた世界は今までの世界にない新しいもので、何が正解なのかが分からない。日立製作所としても何らかのベンチマークが欲しいと考えていた。そこで「インダストリー4.0」などを推進しているドイツをベンチマークとするため、さまざまな共同研究を進めてきた。

photo 日立製作所 研究開発グループ 生産イノベーションセンタ 主管研究長の野中洋一氏

 日立製作所ではもともとacatechの正会員でありacatech内でもさまざまな研究を行っている。今回の「人と機械の関係性」については、「人」が強い日本だからこそ、日立製作所が主導して研究したいテーマだと考えていた。そこで、日立製作所が起案しacatechの中で何らかの成果を生み出すことを考えた。しかし、ちょうど同じようなテーマを持っていたカガーマン氏が「一緒にやろう」と声をかけてくれ、共同で研究を進めることになった。その中でカガーマン氏に「このテーマはもっとオープンにやるべきだ」と言われ、最終的に日本とドイツの18団体が参加し、共同研究を行う流れとなった。

photo 共同研究に参加した企業や団体 出典:「Revitalizing Human-Machine Interaction for the Advancement of Society

MONOist 研究の狙いというのはどういうものだったのですか。

野中氏 「社会問題を誰がどう解くのか」という観点で考えた場合、日本やドイツなど先進国は少子高齢化が進み、国として老いてきている状況がある。

 日本の経済成長は人口ボーナス(総人口における生産年齢人口が大きく上回る、もしくは増加し続けている状態)により支え続けられてきたが、それは既に30年以上前の状況である。総人口が減少し、生産年齢人口の減少が急速に進む中でどのようなことに取り組むべきかというのは大きな課題になってきている。

 さらに製造業の現状についていえば、熟練工の高齢化という人の問題が大きい。さらにそれだけでなく機械や設備の老朽化という問題もある。早期に自動化や機械化が進んだ状況があり、これらの機械や設備の更新が日本やドイツなど製造立国の大きな課題となっている。近隣に生産年齢人口が増加し新しい機械や設備を導入している国があるという点なども共通課題としてある。

 これらの課題を解決するために、デジタル化を進めていく必要がある。ただ、デジタル化で機械ができることが広がる中で、人と機械の関係性は変わってくる。こうした共通する課題に対して、ドイツと日本がそれぞれデジタル化の中での人と機械の関係性についてどのように考えているのかを明確化し、共通項や違いなどを見つけ出すことで、今後の取り組みの指針を作り出していくことを目的とした。

       1|2|3 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.