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» 2020年04月27日 10時00分 公開

セミナーレポート:DX時代における真の設計環境のあり方とは? インフラとしての3Dデータ活用

製造業にも押し寄せる「デジタルトランスフォーメーション(DX)」の流れを受け、オンデマンドセミナー「製造業のDXを推進する設計環境とは 〜データ中心のモノづくりの実践へ〜」が開催され、未来のモノづくりを支える“真の設計環境のあり方”について有益な情報が発信された。

[PR/MONOist]
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 設計者向けに幅広いソリューションを提供するSB C&Sは、昨今、製造業にも押し寄せる「デジタルトランスフォーメーション(DX)」の流れを受け、オンデマンドセミナー「製造業のDXを推進する設計環境とは 〜データ中心のモノづくりの実践へ〜」を開催した。

 同セミナーでは、設計現場におけるDX推進のキーとなる技術トレンドを踏まえつつ、これからのモノづくりを支える“真の設計環境のあり方”について、有益な情報が発信された。

3D推進者が目指す、未来のモノづくりに向けた理想の設計環境

 同セミナーの基調講演では「製造業のDX推進 〜未来のモノづくりを見据えた設計環境の作り方〜」をテーマに、飯沼ゲージ製作所 経営企画室 経営企画課 課長の土橋美博氏が登壇。社内の3D推進活動をけん引してきた立場から、設計環境のあるべき姿について自身の考えを示した。

 はじめに、DXの定義について土橋氏は、アナログ的業務をデジタルに置き換えるデジタライゼーションに対して、「DXは、人々の生活や環境をより良い方向に変化させるものだ」とし、デジタル化そのものが本質ではなく、「デジタル化によって、どうやって仕事のやり方を変えていくかが重要となる」(土橋氏)と説く。

画像1 基調講演に登壇した飯沼ゲージ製作所の土橋美博氏 画像1 基調講演に登壇した飯沼ゲージ製作所の土橋美博氏

 設計環境の変化として、土橋氏は設計ツールの変遷を取り上げ、製図台に向かって紙とペンで設計していた時代から、デジタル化が進み2D CAD、3D CAD導入、そして、CAE、レンダリングの活用までの道のりを紹介。「製図台を使用していたころは、1本の線の重みが現在の比ではなく、図面の修正や設計変更はとても大変な作業だった。しかし、1990年代に2D CADの導入が始まり、ツール上で手軽に図面を編集できるようになり、レイヤーなどを活用することで表現の幅も広がった」と土橋氏。そして、2000年代に入ってからは本格的に3D CADの導入が進み、3次元形状で設計できる3D CADの世界観に驚き、これからは3Dの設計環境が主流になると確信。その後、設計だけにとどまらず、CAEやレンダリングまで活用の幅を広げていったという。

 同時に、ハードウェア環境も進化してきた。これまでデスクトップ型ワークステーションが主流であったが、小型で高性能なモバイルワークステーションが登場し、3D CADやCAE環境をより手軽に利用できるようになった。さらに、土橋氏は2018年ごろから社内でハイエンドCAEの活用を始め、HPCマシンを用いた高度なシミュレーションの実践にも取り組んでいる。「このようにハードウェアの進化はとどまることを知らず、最近ではGPUコンピューティングを活用したリアルタイムシミュレーションなども登場し始め、設計・解析環境がますます充実してきている」と土橋氏は語る。

 次に、土橋氏は3D CADそのものが設計現場にどのような変化をもたらしたのかについて紹介した。当然ながら、設計現場の考え方そのものを変えなければ2Dから3Dへのシフト、3Dデータ中心のモノづくりの実践は難しい。例えば、3D CADを現場導入する場合、従来の2次元中心の設計運用ルールを見直す必要が出てくる。そして、ようやく3D CADの利用が始まると、CAEを用いた構造解析などに取り組み始め、さらには3Dビュワーを用いたデザインレビューが行われるようになる。そうなっていくと従来のデータ管理では不十分となり、PDMによる3Dデータ管理へと活用の幅が広がっていく。

 もちろん、こうした道のりは平たんではない。3D CADの導入フェーズでは設計工数も一時的に増加するし、2次元設計の時代に直面していた課題が100%払しょくできるわけでもない。しかし、3D推進活動を継続し、改善が進んでいくことで、これまでの課題が少しずつ解消されるようになっていく。「ここまで来ると、次は『全社で3Dデータを活用できないか』という話になり、いよいよ3Dデータの全社展開を考えるフェーズに突入する」(土橋氏)。

画像2 3Dデータを全社で活用していくフェーズ 画像2 3Dデータを全社で活用していくフェーズ(出典:飯沼ゲージ製作所)

 この段階では、例えば、3Dデータを組み立て指示書や作業マニュアルに展開したり、制御ソフトウェアとの連携(協調設計)に活用したり、生産管理システムとつなげたりといった、設計現場にとどまらない、全社における業務効率化に向けた3Dデータ活用の新たなニーズが出てくる。また、その先の展開としては、AR/VRを活用したコミュニケーションや、AI、IoTと連携したさらなるデータ活用なども考えられる。

 では、実際の市場環境と照らし合わせて考えたらどうか。現場では、設計の高度化/複雑化が進み品質の維持向上が困難な状況になりつつある。また、グローバル競争の激化により価格競争も厳しさが増し、開発期間のさらなるスピードアップも要求されている。そして、これに追い打ちをかけるように労働人口は減少する一方であり、日本の製造業、設計現場は本当に厳しい状況にあるといえる。だからこそ、さまざまなテクノロジー、DXに対する関心が急速に高まっており、そうした変化に柔軟に対応できるよう、新たなワークフローや働き方の確立、設計環境の見直しが急務となっているのだ。

 土橋氏は、設計環境の理想像として「3D CADを中心に設計から始まる、インフラとしての3Dデータ活用」を掲げる。3D CADによる設計を起点に、そこから生まれた3Dデータが、シミュレーション、製造、サプライチェーン、マーケティング、そしてAI/IoTといった領域にまで行き渡り、クラウドや外部サービスとの連携を含めた形で、モノづくり全体を下支えしていく世界だ。「設計部門で作った3Dデータが全ての関連部門、関係者に展開されていく。こうした流れは既に現実のものになりつつあり、3Dデータはモノづくりになくてはならない『インフラ』と呼べる存在といえる。この理想の設計環境を作り上げていくには2Dではなく、3Dでなくてはならない」(土橋氏)。

画像3 土橋氏が掲げる設計から始まる理想のゴール 画像3 土橋氏が掲げる設計から始まる理想のゴール(出典:飯沼ゲージ製作所)

 また、講演の後半で土橋氏は、これからの設計環境として、デスクトップとクラウドのハイブリッド活用、プラットフォーム思考へのシフトなどの重要性を説き、旧来思考にこだわり続けるのではなく、“柔軟な対応力”が未来のモノづくりに不可欠である点を強調。そして、設計者自身がこうした視点に立ち、全社における3Dデータ活用に向けた3D推進活動に取り組み、スキルを磨き、時にはコミュニティーなどにも参加しながらモノづくりと向き合っていく必要があるとし、「10年、20年先を見据えた設計環境のあり方を共に探求し続けていこう」(土橋氏)と呼び掛けた。

人間とコンピュータのより良い関係を築くジェネレーティブデザイン

 続く特別講演では「ものづくりの未来 〜クラウドから始まる設計の未来〜」と題して、オートデスク BSM D&M Fusion 360 セールスマネージャーの藤村祐爾氏が登壇し、同社が推進する「ジェネレーティブデザイン」が設計業務にどのような効果をもたらし、デザインプロセスを進化させるのかを解説した。

 近年のモノづくりを取り巻く環境を見てみると、従来手法に代わる新たなテクノロジーが続々と登場している。「これらは設計、製造現場を根本的に改革する可能性を秘めており、ここで取り上げるジェネレーティブデザインもそうした革新的テクノロジーの1つである」と藤村氏は述べる。

 では、具体的にジェネレーティブデザインで何ができるのか。本来、設計とは、さまざまなアイデアの中から目的に応じた理想的な形状を導き出し、要求仕様を満たす最適な形状を提示することだ。例えば、既存のブラケットの形状をより良くするためには、材料や製造方法といった視点から無数のアイデアを検討し、そこから最適解を見つけ出す必要がある。しかし、開発期間の短縮が叫ばれる昨今、設計に多くの時間を割くことは難しく、1人の設計者がいくつもの設計案を、短期間で生み出すことは現実的ではない。つまり、裏を返せば、現実の設計の世界ではさまざまな制約を踏まえ、どこかで妥協せざるを得ない状況の中で、最適形状を生み出しているといえる。この制約、妥協の壁を打ち壊すことができれば、より理想的な形状に近づけるはずだ。

画像4 本来、設計案は材料と製造方法の掛け合わせにより無限に可能性が存在するものだ 画像4 本来、設計案は材料と製造方法の掛け合わせにより無限に可能性が存在するものだ(出典:オートデスク)

 その1つの答えとして、同社はクラウドコンピューティングの活用を掲げる。「これからは設計者(人間)が、どのようなものがほしいかをインプットするだけで、クラウドの大規模な演算能力を活用し、コンピュータが無数の形状案を導き出してくれる。後は人間がその設計案から最適なものを選べばよい。これこそがジェネレーティブデザインの考え方である」と藤村氏は説明する。既に、多くの現場でジェネレーティブデザインが活用されており、軽量化や部品点数の削減、剛性の維持向上、体積の縮小、各種コスト削減といった効果が得られているという。

 次に、藤村氏は、同社の3D設計ソリューションである「Fusion 360」に搭載されているジェネレーティブデザイン機能を用いた設計プロセスについて解説した。始めに、設計者はジェネレーティブデザインを適用したいパーツを決める。そして、最終的に残す必要のある部分(他部品との接合部、連動部など)を定義。また、他の部品などと組み上げて使用する場合は、干渉を避けたい範囲や必要な空間をあらかじめ指定しておく。さらに、必要な荷重と拘束条件を定義し、目的、製造条件、素材も指定する。

 これら必要な情報をFusion 360の画面上で指定することで、クラウド上での処理が始まり、多数の設計案を並列計算により短時間で生成してくれる。「このように、Fusion 360のジェネレーティブデザイン機能は与える条件、製造方法と素材の組み合わせにより、無数の最適化された結果を得ることができる。設計者はその結果の中からニーズに合ったものを選べばよい」(藤村氏)。

 ただ、このときコンピュータが導き出した膨大な最適形状の中から、1つの設計案をどうやって選択したらよいのかという疑問が残る。実は同社のジェネレーティブデザイン機能には専用の検討画面が用意されており、直感的に候補を取捨選択できるようになっている。例えば、安全率や質量といった重要視したい項目がある場合、条件を指定してフィルタリングすることで画面上にその結果を可視化し、簡単に比較検討が行える。

画像5 ジェネレーティブデザインのメリット 画像5 ジェネレーティブデザインのメリット(出典:オートデスク)

 「従来の製品開発プロセスでは1人の設計者が導き出せる設計案には限りがあるため、どうしても手戻りが発生してしまい、時間のロスやコストの増加などにつながっていた。これに対し、ジェネレーティブデザインであれば、設計初期の段階で全ての製造方法と素材の組み合わせから、無数の最適形状を短時間で導き出せる。しかも、そこから選んだ設計案は既に製造方法を加味したものであり、あらゆる要求使用を満たした形状であるため、すぐに設計者はより良い形状にするための最終調整に専念できる」(藤村氏)

 実際の成果として、講演の中ではバイクのスイングアームにジェネレーティブデザインを適用した事例の他、GMのブラケット、WHILLのフレームパーツ、デンソーのECUといった実際の製品にジェネレーティブデザインが採用されたケースを紹介した。さらに、バイクのカスタムパーツを例に、ジェネレーティブデザイン形状を金属3Dプリンタで製造すべきか、2.5軸加工で製造すべきかを、コストや生産効率の観点からどうやって検討・選択すべきかのヒントなども提示された。

未来の設計環境の実現に向け、ワークステーションを選択すべき理由

 ここまで、同セミナーの講演内容を紹介してきたが、3Dデータ活用を前提とする、未来の設計環境を検討する上では、ハードウェア環境の存在も欠かせない。最後に、同セミナーの開催に併せて寄せられた、ワークステーションベンダー3社(デル、日本HP、レノボ・ジャパン)のコメントを交えて、設計業務におけるワークステーションの利用メリットについて簡単に触れておこう。

 設計現場では、汎用PCで3D CADを動かしているケースも少なくない。DXの波が押し寄せる製造業、設計現場において、そもそもワークステーションを利用するメリットはどこにあるのだろうか。

 まず挙げられるのは、圧倒的なパフォーマンスだ。「動作が不安定だったり、表示が遅かったりすると、設計に集中できず、それだけでストレスになってしまう。設計者のパフォーマンス、そして生産性を最大限に引き出すには、パワフルなCPUやNVIDIA社のQuadroグラフィックスカードを搭載したワークステーションが不可欠だ」(日本HP)。

 また、長時間の設計や高負荷の掛かる解析業務を行う際、万一、エラーなどが生じてマシンが停止してしまっては大きな損失にもなりかねない。だが、ワークステーションであればそうした問題にも対処できる。「例えば、長時間演算を続けてもマシンが停止しないように、ワークステーションではエラー訂正機能を有したECCメモリーを採用したり、高耐久なコンポーネントを使用したりするなど、長期間、安定した稼働環境が提供できるよう、汎用PCにはない高信頼設計が図られている」(レノボ・ジャパン)。

 一方、ワークステーションを購入する際、目的に応じてCPUやメモリー、ストレージ容量など、構成を選択できるが、3D CADをはじめとするソフトウェアベンダーの動作認証(ISV認証)をあらかじめ取得している製品もあり、ソフトウェア/ハードウェアの両面で安定した動作環境が担保されたものを選択することも可能だ。「かつてはOSもCPUも各社各様で選定が難しい時代だったが、現在は各社標準的な技術要素をベースに高品質な製品づくりを行っており、ISV認証を取得したワークステーションが提供されている。複数の選択肢があることは大きなメリットだ」(デル)。

 その他にも、可搬性の高いモバイルワークステーションや、近年注目を浴びているVR対応が可能なVR Ready認定ワークステーションなどもあり、目的や用途、働き方などによりハードウェア環境を自由に選択できる時代となっている。

 ソフトウェア同様、技術革新とともにワークステーションも日々進化し続けている。自身が求める設計環境、理想とする未来の設計環境を思い描く際、さまざまな選択肢の中から、どのワークステーションを活用すべきかもしっかりと検討しておくべきだろう。

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提供:SB C&S株式会社
アイティメディア営業企画/制作:MONOist 編集部/掲載内容有効期限:2020年6月26日