エッジコンピューティングの逆襲 特集

電源をつなげばすぐ動くエッジAIカメラ、ラズパイとSIMの組み合わせで開発エッジコンピューティング(1/2 ページ)

「電源をつなぐだけで稼働する」ソラコムが開発したエッジAIカメラ「S+ Camera Basic」と管理ツールである「SORACOM Mosaic」の特徴を、同社代表取締役社長の玉川憲氏らに聞いた。

» 2020年05月08日 08時00分 公開
[池谷翼MONOist]

 製造業におけるAI(人工知能)カメラへの注目度が高まりつつある。AIカメラを活用することで、商品の在庫数や生産品の仕上がりなどの確認作業を自動化できる。これにより現場作業の省人化や効率化を図れる点などがAIカメラ導入のメリットとして期待されている。

 ただ、AIカメラの導入ハードルは意外に高い。設置場所の現場検証やカメラのレンズ補正などの本体設定の調整、カメラから収集したデータの蓄積場所、セキュアな通信環境の構築、電源の確保手段などを全て考えなければならないからだ。また、カメラの運用や管理作業により、新たな手間やコストが増えかねないという懸念もあるだろう。

 こうした課題点を解消するためソラコムが開発したのが、「電源をつなぐだけで稼働するエッジコンピューティングカメラソリューション」というコンセプトのエッジAIカメラ「S+ Camera Basic(サープラスカメラ ベーシック)」(本体価格は税別7万9800円)と、その管理ツールである「SORACOM Mosaic」だ。

「S+ Camera Basic」の本体外観[クリックして拡大]出典:ソラコム 「S+ Camera Basic」の本体外観[クリックして拡大]出典:ソラコム

 従来のAIカメラと比較して、どのような点で運用や管理が容易になったのか。ソラコム 代表取締役社長の玉川憲氏と同社 セールスマネージャー S+プロジェクトリーダーの齋藤洋徳氏に話を聞いた。

ソラコム 代表取締役社長の玉川憲氏(左)とソラコム セールスマネージャー S+プロジェクトリーダーの齋藤洋徳氏(右)

アルゴリズムの更新とデプロイを遠隔で実行可能

 S+ Camera Basicには大きく分けて2つの特徴がある。1つはシングルボードコンピュータである「Raspberry Pi(ラズベリーパイ)」を搭載したことで、AIアルゴリズムをカメラユニット上で動作できるようにした点。もう1つは、カメラ本体とカメラに搭載したAIアルゴリズムを無線通信で遠隔制御する仕組みを取り入れた点だ。

 「AIカメラの運用時に課題となりやすいのが、AIアルゴリズムの更新とデプロイ作業だ。そもそも従来のAIカメラでは、カメラ本体ではなく、有線でカメラに接続したPC上でAIアルゴリズムは動作させる方式が一般的だった。しかしこの方式では、AIアルゴリズムを最新版にアップデートする度に、最新のアルゴリズムを入れたUSBメモリをPCに接続してアルゴリズムを直接書き換えなければならない。これは手間だし、非効率的だ」(齋藤氏)

AIアルゴリズムの更新、デプロイを遠隔で実行可能[クリックして拡大]出典:ソラコム AIアルゴリズムの更新、デプロイを遠隔で実行可能[クリックして拡大]出典:ソラコム

 一方、S+ Camera Basicは同社のIoTデバイス向け通信サービス「SORACOM Air」による無線通信によってAIアルゴリズムを遠隔から管理できる。このため「カメラの設置場所まで赴く必要もなく、アルゴリズムの更新を通じて、撮影した映像中の物体の認識方式などを容易に変更できる」と齋藤氏は語る。

 またS+ Camera Basicは設置を容易にする工夫もなされている。カメラ本体後部のマウンター(取り付け器具)はアクションカメラの『GoPro』と同じ汎用型マグネットマウンターを採用しており、さまざまな場所に簡単に設置可能だ。首振りによる縦方向や横方向の角度変更も行えるので、設置後にも撮影に最適な画角に調整しやすい。

マグネットマウンターによって設置も容易[クリックして拡大]出典:ソラコム マグネットマウンターによって設置も容易[クリックして拡大]出典:ソラコム

 「コンセプト通り、S+ Camera BasicにはAIカメラの運用に必要となるコンピューティングリソースや電源の他、セルラー回線用の通信モジュールとSIMカードを全て搭載した。電源がオンになった時点でこれらのセットアップは完了する。AIカメラの導入障壁を可能な限り下げることに貢献している」(齋藤氏)

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