特集
» 2020年05月25日 06時00分 公開

商用車メーカーは、なぜ積極的にライバルと組めるのかいまさら聞けないクルマのあの話(6)(2/3 ページ)

[友野仙太郎,MONOist]

紆余曲折の歴史をたどるいすゞ

 提携合意前は単独で事業を展開していたいすゞですが、これまでさまざまなメーカーと提携してきた歴史があります。最も長く関係を築いていたのがゼネラルモーターズ(GM)で、資本関係は1971年から2006年まで35年間続きました。当時は乗用車も手がけていたいすゞは、オペルなどGM傘下のブランドとOEM(相手先ブランドによる生産)供給を展開していました。GMの経営悪化により資本関係を解消した2006年以降も、事業としての提携関係は現在まで続いています。

 GMとの資本解消直後、いすゞはトヨタと資本関係を結びました。提携では、小型ディーゼルエンジン(DE)をはじめ、DEの後処理や環境技術の共同開発を柱に掲げました。その中でも中心となるのが欧州市場向けの排気量1.6l(リットル)の乗用車用DEの共同開発で、開発や生産をいすゞ主導で進める計画としていました。

 ただ、小型DEの共同開発は、トヨタが欧州でハイブリッド車(HV)を主軸とした戦略を打ち出したこともあり、「プロトタイプまで作ったが採用には至らなかった」(いすゞ関係者)と頓挫。また、日野とトヨタの関係と違い、トヨタによるいすゞへの出資比率が5.9%と低いこともあり、目立った提携効果が得られないまま2018年8月には資本関係を解消しました。

いすゞは小型トラックの分野で強みを持つ。写真は小型トラック国内販売トップの「エルフ」(クリックして拡大) 出典:いすゞ自動車

 トヨタとの資本解消は、いすゞにとって提携に関する自由度が増したと同時に、他社からの買収リスクも高まることになりました。これを機に、いすゞは矢継ぎ早に提携戦略を進めています。解消直後の2018年10月には、商用車向けエンジンメーカー大手である米国のカミンズと商用車や産業用のパワートレーンに関する事業提携に向けた協議に合意。2019年6月には包括的パートナーシップ契約を締結しました。両社でDEの基本設計を共有化し、開発や調達、生産などの効率化を図る狙いです。さらに中長期的にはDE以外のパワートレーンへの展開や生産、調達などでの連携も検討していきます。

 いすゞの提携は商用車メーカーだけにとどまりません。2020年1月にはホンダとFC大型トラックの共同研究に合意。ホンダのFCに関する知見を生かして大型トラックの電動化の在り方を模索していく狙いです。共同研究は2022年1月までの期限付きとなります。

 そして、GM以来となる大きなパートナーシップとなりそうなのが2019年12月に発表したボルボグループとの提携です。今後の商用車事業で不可欠となるコネクテッド化や自動運転、電動化など先進分野での技術的な協力体制の構築をはじめ、日本およびアジアを中心とした海外市場での大型トラック事業の強化、物流革命に向けた中・小型トラックでの協業など、提携分野は多岐にわたります。

いすゞ+UDの競争力

 いすゞとボルボグループの提携で、日本における商用車業界の構図を大きく変えることになりそうなのが、ボルボグループ傘下であるUDトラックスの買収です。これによりいすゞは国内の商用車市場でトップシェアを狙います。譲渡価格は2500億円と見積もっており、2020年末までの手続き完了を目指します。

 UDの買収は、いすゞに対してどのような効果をもたらすのでしょうか。業績悪化の目立つUDの企業価値として算出した「2500億円」という金額については、割高だという見方もあります。実際に日系商用車メーカーのビジネスにおいて最重要市場であるアジアでも、UDは他社に大きく後れを取っているのが実情です。このアジアでの低迷を何とかしたいというのが、ボルボグループがいすゞへの売却を決めた要因とみられます。

欧州大手との提携は開発負担の大きい分野のリソースを活用できる。写真はUDトラックスの自動運転(クリックして拡大)

 今後必須となるコネクテッド化などでは、車両のメンテナンスや運行管理などの体制整備が競争力の鍵を握ります。いすゞはUDを傘下に収めることで、整備拠点など車両のメンテナンスネットワークを強化することができます。今後、いすゞとUDの両ブランドにおいて、車両の基本構造やテレマティクス機能などの共通化を図っていくと見られます。

 特にコネクテッド化を積極化していく国内において、充実した整備ネットワークによるサービス提供は、他社に比べて大きなアドバンテージとなりそうです。乗用車以上にメンテナンスビジネスが重要な商用車では、次世代サービスへの対応力が今後の市場シェアの鍵を握っているともいえます。現在国内トップの日野と、2番手につけるいすゞの首位争いは一層激しさを増しそうです。

いすゞはUDトラックスの買収でサービスネットワークの強化が可能となる(クリックして拡大)

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.