特集:IoTがもたらす製造業の革新〜進化する製品、サービス、工場のかたち〜

ラズパイとカメラと100均の組み合わせで機械工具の在庫を可視化するラズパイで製造業のお手軽IoT活用(3)(1/2 ページ)

小型ボードコンピュータ「Raspberry Pi(ラズパイ)」を使って、低コストかつ現場レベルでIoTを活用する手法について解説する本連載。第3回は、カメラを組み合わせた画像解析の事例として、機械工具の在庫の2Sと在庫可視化をどのように実現するかについて具体的に解説します。

» 2020年05月25日 10時00分 公開
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 今回は、小型ボードコンピュータの「Raspberry Pi(ラズベリーパイ、略してラズパイ)」とカメラを組み合わせた画像解析の事例として、機械工具の在庫の2S(整理、整頓)と在庫可視化をどのように実現するかについて具体的に解説します。

⇒連載「ラズパイで製造業のお手軽IoT活用」バックナンバー

工具の欠品による手待ち発生

 例えば、金型を製作する場合には、マシニングセンターを活用して、多種のドリルや刃具といった工具を設置して金属を切削加工します。作成する金型の寸法が毎回異なるので、使用する工具の組み合わせは都度変わります。工具についても、1回の切削で使い切るものと再研磨して再利用するものがあるため、種類ごとに管理の仕方が異なります。

 これらの工具は専用の置き場にまとめて保管してあります。寸法の違いが一見では分かりにくいため、現場に必要な工具を選ぶ際には、型番を見てメジャーで寸法を再確認してから運び出しています。しかし、置き場に必要としている工具がないことがあります。この工具の欠品により、手待ちが発生してしまうのです。

ラズパイによる工具在庫管理システムの作り方

 このような工具の欠品を発生させないために、ラズパイとカメラの画像解析を用いた工具在庫管理システムが役に立ちます。以下のような手順でシステムを作っていきましょう。

  1. 工具の購入実績を確認しABC分析で適正在庫量を算出する
  2. 工具の配置図を作成する
  3. 工具を配置換えする
  4. 画像解析により在庫を「見える化」する

1.工具の購入実績を確認しABC分析で適正在庫量を算出する

 まずは、直近1年間における工具の型番ごとの購入実績を確認して、型番ごとに「ABC分析」を行います。ABC分析とは、全体に占める構成比が多い順に要素を上位(Aランク)、中位(Bランク)、下位(Cランク)の3つのグループに分割して分析を行いやすくする手法のことです。今回は、量と金額のそれぞれでA、B、Cのランクに分けます(図1)。

図1 図1 工具のABC分析例(クリックで拡大)

 そして、金額と量がともにAランクとなるものから改善していきます。多品種少量生産の製造業で在庫分析を行ってみる、意外なことに毎日たくさん使うものが不足しており、あまり使用しないものが余分になっている傾向にあります。理屈上は逆だと思いがちですし、現場管理のレベルにもよりますが、実際に分析をするとそのような結果になることが多いのです。

 その理由は在庫保有の数量をあらかじめ決めているからです。たくさん使用する工具の場合、刃具を100個用意しても毎日30個使用すれば3日でなくなります。他に使用するものが日当たり数個のものと比較するとたくさん持っている感覚になりますが、実際には不足しています。在庫量の算出は数量ではなく、在庫日数で算出して保有することが重要です。

2.工具の配置図を作成する

 改善対象の工具と適正在庫量が算出できたら、工具の配置図を作ります。工具は寸法違いで似たようなものが多種存在しますので、寸法の順番に配置図を作ると分かりやすいでしょう。購入実績からABC分析を行うと、現在使用していない寸法の工具も出てくるかもしれません。その場合には「空席」を作ります。このような空席は余分なスペースではありますが、工具を探しやすくなります。また、今後空席にある寸法の工具を使用するケースも出てきます(図2)。

図2 図2 工具の配置図例(クリックで拡大)

3.工具を配置換えする

 工具の配置図を作成できたら、配置換えを行います。配置をする際には100円ショップにある事務用品用の整理棚などを活用すると低価格で済みます(図3)。

図3 図3 工具配置の例。左側が改善前、右側が改善後。ここまでの対応をすれば、現場を見たときにどの寸法の工具がどこにあるかが一目で分かります(クリックで拡大)
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