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» 2020年06月01日 10時00分 公開

AI人材育成:製造業のAI人材育成には何が必要か、座学では学べない“ハンズオン”の効用

多くの製造業が活用を目指そうとしているエッジAI。しかしそこで課題になっているのがAI開発を主導できる技術力をもった人材の育成だ。多くの製造業では担当分野が細分化しており、目の前の開発も手いっぱいで、新たにAIの専門知識やスキルを習得するのは容易ではない。そうした中で注目したいのが、マクニカが注力している、AIレースカー「JetRacer」などを使ったハンズオンセミナーだ。

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AIを活用したビジネス展開に向けて高まる熱意

 産業機器から自動車、家電に至るまで、さまざまなシステムやデバイス上でAI(人工知能)を動作させる「エッジAI」の開発は、世界各国の企業がしのぎを削る分野となっている。もちろん、日本の製造業も例外ではない。

 マクニカ クラビスカンパニー プロダクトセールス第1部 第1課 課長の山田智教氏は、「電子部品関連の専門商社である弊社は、製品開発の現場に近いポジションにいることもあり、エッジAI開発用プラットフォームの引き合いが、昨年から急速な勢いで増えています。足元の新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響を受けてスローダウンするかと思われましたが、その予想に反してWebサイト経由での引き合いがますます増えている状況です」と語る。既にアフターコロナの世界を見据え、各企業は臨戦態勢に入っているようだ。

 実際、各企業から寄せられる問い合わせ内容の変化からも、AIに対する取り組みのフェーズが変わったことが見て取れる。「2018〜2019年あたりまでは、『会社の上層部からAIを検討せよと指示されているものの、何から、どこから手を付けたらいいのか分からないので教えてほしい』という顧客の声がほとんどでした。それが現在では、『GPUを活用したエッジAIでビジネスを展開するにはどんな方法があるのか』といった、より具体的なソリューションを求める声が高まっています」(山田氏)。

 そんなマクニカが提供するさまざまなエッジAIソリューションの中で、ひと際注目されているのがNVIDIAの「Jetsonシリーズ(以下、Jetson)」だ。CPU、GPU、PMIC、DRAM、フラッシュストレージをSOM(System-on-Module)で提供し、自律動作するエッジAIソフトウェアを高速に実行できる、Performance Per Wattに優れたボードコンピュータである。

 山田氏は「Jetsonが人気を博している理由は、すでに広範なエコシステムが確立されている点にあります。機械学習や深層学習(ディープラーニング)を用いたAI開発のほとんどは、NVIDIAのGPUを搭載したサーバなどのインフラ上で行われています。Jetsonは、それと同じソフトウェア環境を使ってそのままエッジ側にAIをデプロイできるのです。こうした使い勝手の良さが、多くの顧客から高く評価されています」と説明する。

 また、さまざまなAI開発を支えるNVIDIAのエコシステムが基盤となり、多くの学習済みモデルがオープンソースソフトウェアとして公開されている。これらを活用すれば、AIの開発をさらに短期間で行えるようになる。つまり、これまでハードウェア中心の製品開発を手掛けてきた製造業にとっても、AIを活用した新規ビジネスを短期間で具現化できる環境が整ってきたというわけだ。

AI開発に立ちはだかる人材育成の課題

 ただ、そこに立ちはだかるのが人材の問題だ。

 マクニカ クラビスカンパニー プロダクトセールス第1部第1課の松岡宏樹氏は「AIの専門スキルを持った人材の新規採用はどの企業にとっても困難な状況でしょう。まずは、社内に今いる人材を育成するしか手がありません」と強調する。

 さらに、社内の人材を育成するにしても、それをどの部署が主導するのかという問題に直面することになる。「製造業における設計開発の業務は、非常に細かく担当が分かれているのが一般的です。例えば、電機メーカーであれば、電源、センサー、映像などの機能ごとに細分化されており、それぞれの分野に専門特化した技術者が設計開発を担っています。ところが、エッジAIの開発となれば、エレ、メカ、ソフトを一体化したものが対象になります。縦割りで細分化された組織において、このような横串を通した知識が必要なAI人材の育成をどこから始めるかは解決の難しい課題です」(松岡氏)という。

 また、AI開発のためのインフラ整備についても同様の問題が起こる。社内でAI開発プロジェクトを立ち上げるとなれば、組織横断で使用する共有GPUサーバやクラウドベースの仮想マシンを調達する他、開発環境の構築、学習で共有する計算リソースの管理、開発した推論モデルの管理など多くの作業が発生する。その業務をどこが負担するのかという“譲り合い”が起きてしまうのだ。

 山田氏は「全社的なインフラである以上、本来であれば情報システム部門の管轄となりますが、彼らにとってもAIの開発は未経験であり、そもそも開発者がどんなスペックや学習環境を求めているのかという具体的な要件もつかみ切れません。そこで設計開発の現場にインフラ整備が一任されることになるのですが、その結果として肝心のAI開発に時間を割けなくなるという本末転倒の事態に陥ってしまいます」と指摘する。

ハンズオンセミナーがAI人材育成の端緒に

 マクニカに多くの引き合いが寄せられているのは、まさに上記のようなAI開発の課題に対するソリューションを取りそろえているからに他ならない。

 まず人材育成に関してマクニカが注力しているのが、さまざまなパートナー企業と共同で開催しているハンズオンセミナーだ。

 2019年12月にNTTコム エンジニアリングが主催し、マクニカが協賛した「JetRacerハンズオンイベント」もその1つである。「JetRacer」とは、Jetsonシリーズの中でエントリーレベルに位置付けられるモジュール「Jetson Nano」をタミヤ製の10分の1スケールラジコンカーに搭載したAIレースカーだ。

「JetRacerハンズオンイベント」に用いられた「JetRacer」 「JetRacerハンズオンイベント」に用いられた「JetRacer」

 具体的には、イベント会場に特設されたサーキット上でJetRacerに搭載されたカメラでコースを撮影し、撮影した画像に対してJetRacerの進むべき方向を指示するアノテーションを行い、ベースとなる学習用データセットを作成。このデータセットを機械学習フレームワーク「PyTorch」に投入して学習を行い、自律走行用の推論モデルを作成する。この推論モデルをJetRacerのJetson Nanoにデプロイすることで、カメラでとらえた前方映像に対してハンドルの最適角度を導き出しながら自律走行できるようになる。

 3回行われたこのハンズオンセミナーは、予定していた計100人の定員を大幅に超える募集が殺到。最初のうちはコースアウトしてしまうJetRacerも多発したが、参加者はうまく走行できなかったコーナーで画像を撮り直すなどして、データセットの作成、学習、試走を繰り返すことで推論モデル作成の勘所をつかんでいった。

「JetRacer」をコースで走らせる様子 「JetRacer」をコースで走らせる様子

 マクニカは他にもエッジAI人材育成に向けた展開を広げている。日立アカデミーとの協業により2020年3月に開講したのは、「NVIDIA Jetson Nanoを用いたAIエッジコンピューティングハンズオン -ディープラーニング×JetBotによる自動走行体験-」という教育コースだ。

 「JetBot」は、カメラで撮影した画像をもとに動作を自動制御する二輪のAIロボットであり、JetRacerと同様にJetson Nanoを搭載している。これを教材としてハンズオンセミナーの参加者は、「AIに学習させ、推論モデルを搭載したモノ(デバイス)をセッティングし、その場で動かし、デバイスから新たに抽出したデータをもとにさらなる学習を重ねながら処理性能を高めていく」というAI開発の一連の流れを学ぶことができる。

 松岡氏は「これまでのAI系のセミナーは座学が中心で、難解な理論に傾きがちな講義内容はなかなか頭に入ってこないのが実情でした。これに対してJetRacerやJetBotを使ったハンズオンセミナーは、体験型ならではの直感的なAIに対する理解を深められますし、実践的な知識とスキルも習得できます」と述べる。山田氏も「Jetsonに推論モデルを実装し、実際の動きを確かめながら課題を解決していくというプロセスがAIの人材開発では欠かせません」と語っており、製造業を中心としたユーザー企業におけるAI人材の底上げを後押ししていく考えだ。

AI開発のためのインフラも最短1〜2週間で立ち上げ可能

 もう1つの大きな課題であるAI開発のためのインフラ整備について、マクニカはどんな解決策を用意しているのだろうか。この観点で注目すべきなのが「AI学習環境構築サービス」で、AI開発者がAIの開発に集中して取り組めるような開発環境の構築サービスを提供する。

 例えば、GPUを搭載したサーバを導入しても、そこには最低限のソフトウェアしかインストールされておらず、チームで計算リソースを共有利用するための仕組みなどは入っていない。また、学習やモデル開発の負荷が上昇してGPUの処理能力が不足した際に、必要なリソースを追加できる仕組みも必要となる。

 さらに、AIの開発環境を運用していく上では、AIとは直接関係のないさまざまな技術知識が要求されることになる。例えば昨今の主要なAIフレームワークはDockerと呼ばれるコンテナ型の仮想イメージで配布されるケースが増えており、機械学習においてもコンテナを利用することが一般的となってきた。NVIDIAもNGCと呼ばれるクラウドサービスを通じて深層学習に最適化されたGPUアクセラレーションプラットフォームをコンテナで提供している。ITの専門家ではないAI開発者にとって、これらの技術の習得には一定の時間を要することになる。

 加えて決しておろそかにしてはならないのがセキュリティ対策だ。AI開発を本格的に推進していく過程ではオープンソースのフレームワークやライブラリを外部から調達する必要が出てくるが、それらをそのまま社内ネットワークに持ち込むわけにはいかない。マルウェアの侵入や不正アクセスから防御するための仕組みが不可欠だ。

 これらの課題を包括的にカバーしつつ、企業ごとの開発要件に合わせたインフラ整備を支援するのがAI学習環境構築サービスなのである。

AI学習環境構築サービスのイメージ AI学習環境構築サービスのイメージ

 山田氏は「AI開発のためのインフラ整備に初めて取り組む場合、通常は3カ月程度の期間を要します。この作業をわれわれにお任せいただき、決まった構成であれば最短1〜2週間でインフラを立ち上げることが可能です。ユーザーは無駄な工数を費やすことなく、最短期間でAIの学習やモデル開発に乗り出すことができます」と訴える。

 この他にもマクニカは、Jetson Japan User Groupが共著した書籍「Jetson Nano 超入門」(ソーテック社)の執筆に同社エンジニアが参加しており、オープンなWebセミナーなどを通じてJetsonを基盤とするAI開発の啓蒙を行っている。実ビジネスへの展開を目指して本気でAI開発に取り組もうとする企業にとって、これらの情報は非常に有益な足掛かりとなるだろう。

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提供:エヌビディア合同会社
アイティメディア営業企画/制作:MONOist 編集部/掲載内容有効期限:2020年6月30日