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» 2020年05月27日 08時00分 公開

なぜロボットにクラウドが必要なのか?クラウド×ロボットの現在(1)(3/3 ページ)

[河田 卓志(アマゾン ウェブ サービス ジャパン),MONOist]
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クラウドロボティクス開発を支援する「AWS RoboMaker」

 ここまではクラウドロボティクスの事例として、主に稼働しているロボットとクラウドとの連携の例を見てきました。しかし、クラウドの活用はロボットアプリケーションの開発のシーンにおいても有効です。一例として、ここでは私が日常的に担当しているAWS RoboMakerを紹介します。

 AWS RoboMakerは、ロボットアプリケーションソフトの開発と運用を支援するクラウドサービスです。オープンソースのロボットアプリケーションの開発フレームワークであるROS(Robot Operating System)に対応しています*1)。ROSは特に研究、開発の用途においては世界で最も広範に使われていて、商用ロボットでの利用も増えてきています。既に紹介したaiboや、別の例ではティアフォーが開発する自動運転ソフト「Autoware(オートウェア)」などがROSをベースに開発されていることが知られています。

*1)ちなみにAWS、そしてAmazonもROSの活用を支持している企業の1つです。AWSはROSの産業用ロボットでの利用を推進するROS-INDUSTRIALのコンソーシアムメンバーの1社として、AmazonはROSの商用利用を目的に、ROSのアーキテクチャを見直しています。再構築を進めているROS2について、その技術的な方向性を決定するテクニカルステアリングコミッティの1社としてオープンソース開発に貢献するなど、それぞれ活動を展開しています。

 AWS RoboMakerは大きく分けて次の3つの機能を提供しています。

クラウドベースシミュレーション

 ロボットアプリケーションのシミュレーションをクラウドのコンピューティングリソースを使って実行できます。クラウドの特性を生かして、複数のシミュレーションを同時に起動することも可能です。

開発環境

 ロボットアプリケーションの開発環境をクラウド上で提供します。開発に必要なツール群は公開されており、同じ開発環境を、状況に応じてクラウドとローカル環境に別々にセットアップすることも可能です。

フリート管理

 ロボットアプリケーションをインターネット経由でロボット本体にインストールする機能です。何十台、何百台というロボットのソフトウェアの更新をクラウドで一括管理できます。

AWS RoboMaker が提供する機能[クリックして拡大](c)2020 Amazon Web Services Inc. or its affiliates. All rights reserved. AWS RoboMaker が提供する機能[クリックして拡大](c)2020 Amazon Web Services, Inc. or its affiliates. All rights reserved.

 AWS RoboMakerはロボットアプリケーションをクラウドで開発、テストして、完成したアプリケーションをロボット本体にデプロイするまでの一連の流れを支援することを想定して設計されたツールです。重要な点として、AWS RoboMakerの機能は他のAWSのサービスと同様にモノリシックアプリケーションをマイクロサービスに分割して提供するという思想に基づいて構成されており、それぞれの機能を単独で利用することも、また他のAWSのサービスとの連携も簡単に実現できるということが挙げられます。

 例えば開発はローカルのPCで行い、大量のシミュレーションが必要になった時にだけAWS RoboMakerのクラウドシミュレーターを活用するという使い方や、開発コードの自動リリース機能を提供するAWS CodePipelineとの連携により、コードの変更が発生するたびに、シミュレーターを使った自動テストを実行するという開発パイプラインの構成が可能です。

AWSが提供するマイクロサービス[クリックして拡大](c)2020 Amazon Web Services Inc. or its affiliates. All rights reserved. AWSが提供するマイクロサービス[クリックして拡大](c)2020 Amazon Web Services Inc. or its affiliates. All rights reserved.

 AWS RoboMakerのクラウドシミュレーターは現在、(1)ROSの標準シミュレーターであるGazeboと(2)あらかじめレコーディングしておいたセンサーデータなどをプレイバックして評価するログベースシミュレーションというシミュレーション2種類に対応しています。GazeboはGUIを持ち、物理シミュレーション機能を搭載したシミュレーターで、ブラウザ上でアクセスして操作できます。

 フリート管理機能ではAWS IoT Greengrassというコンポーネントをロボット本体にセットアップします。これをAWS RoboMakerサービスと連携することで、インターネット経由でロボットアプリケーションをインストールするメカニズムを実現しています。

AWS RoboMaker シミュレーターの画面[クリックして拡大](c)2020 Amazon Web Services Inc. or its affiliates. All rights reserved. AWS RoboMaker シミュレーターの画面[クリックして拡大](c)2020 Amazon Web Services, Inc. or its affiliates. All rights reserved.
ロボットの情報を視覚化するツールrvizの画面。これもAWS RoboMaker シミュレーターの標準提供ツールの1つ[クリックして拡大](c)2020 Amazon Web Services Inc. or its affiliates. All rights reserved. ロボットの情報を視覚化するツールrvizの画面。これもAWS RoboMaker シミュレーターの標準提供ツールの1つ[クリックして拡大](c)2020 Amazon Web Services Inc. or its affiliates. All rights reserved.

 クラウドで実行されるシミュレーターは複数のシミュレーションを同時に実行することが容易なことから、アプリケーションの自動テスト、機械学習環境などでの活用が始まっています。

 今回はクラウドロボティクスの現状について紹介を行ってきました。次回はロボットシミュレーションの課題点とクラウド活用による解決の可能性をお伝えしたいと思います。

筆者プロフィール

河田 卓志(かわた たくじ)

アマゾン ウェブ サービス ジャパン

デジタルトランスフォーメーション本部 AWS RoboMaker シニアソリューションアーキテクト

アマゾン ウェブ サービス ジャパンでAWS RoboMakerのソリューションアーキテクトとして、クラウドを活用したロボットアプリケーション開発の効率化を訴求している。前職のアマゾンジャパンでは、ソリューション・アーキテクトとしてAmazon Alexaを約2年担当した。またソフトバンクロボティクスではデベロッパーマーケティングを担当した。ソフトウェア業界を中心に25年以上の経歴を持つ自称ロボットおじさん。


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