「つながるクルマ」が変えるモビリティの未来像
特集
» 2020年05月28日 06時00分 公開

モビリティサービス:小田急がMaaSに取り組むのは、持続可能な街づくりのため (1/2)

スマートドライブは2020年4月28日、オンラインセミナー「Mobility Transformation 2020」を開催した。次世代モビリティに関するセッションでは、小田急電鉄 経営戦略部 課長 次世代モビリティチーム統括リーダーの西村潤也氏がスマートドライブ CRO レベニュー責任者の弘中丈巳氏とともに登壇。

[長町基,MONOist]

 スマートドライブは2020年4月28日、オンラインセミナー「Mobility Transformation 2020」を開催した。次世代モビリティに関するセッションでは、小田急電鉄 経営戦略部 課長 次世代モビリティチーム統括リーダーの西村潤也氏がスマートドライブ CRO レベニュー責任者の弘中丈巳氏とともに登壇。「モビリティデータを活用した安心・快適な新しいモビリティ・ライフの実現」をテーマに、取り組むプロジェクトの事例を中心に、住人に新しいモビリティライフを提供するための方法を紹介した。

 小田急では持続可能な社会にしていくためにMaaS(Mobility-as-a-Service、モビリティを所有せずサービスとして利用すること)向けのアプリや自動運転などのツールだけでなく、街のビジョンを共有し、サービスを共創していくという考えを打ち出している。特に、高齢者の移動手段の選択肢を増やしながら、運用の効率性を追求していくことを目指す。西村氏は「クルマの所有から公共サービス中心の新しいモビリティライフに転換してもらい、各事業者と連携して持続可能な街をつくっていくというのがわれわれの考えるMaaSの未来だ」(西村氏)とする。

小田急がMaaSに取り組む理由(クリックして拡大) 出典:小田急

 セッションはモビリティデータと人々の生活の関わり方や、モビリティライフの未来像に焦点を当てて進めた。小田急などの鉄道会社は、高度経済成長期における人口増加にあわせて、鉄道輸送、住宅の供給、小売店やレジャーの供給といった多角経営を行ってきた。しかし、人口減少の時代に入り、多角的なビジネスモデルが通用しない時代に入ったといわれている。そうしたタイミングで2018年に複々線を完成した小田急が次に取り組む目標としたのがMaaSだった。

 小田急は、1日約205万人を運ぶ運輸業(路線全長120.5km)と、流通、不動産、ホテルなどの経営を行う。路線は、箱根や江ノ島などの観光地だけでなく、都心の新宿、高級住宅地の世田谷、新百合ヶ丘のほか、町田、海老名、厚木など多様な都市環境をもつ地域を結んでいる。人口減少時代を迎え、公共交通は乗降客が減ることや、ドライバーとなる人手の不足が考えられる。

 さらに、Eコマース市場の拡大、働き方改革、VR(Virtual Reality)旅行の普及など外出率の低下につながるトレンドがみられる。一方で、自家用車に対してネガティブな層が増えることが予想されることから、移動機会を提供する交通事業者にはチャンスも生まれてくる。西村氏は「高齢者に対しては自家用車以外の交通手段の選択肢を増やし、若者にはアプリやサブスクリプションなどを活用した新しい体験や移動を提供することで、マイナストレンドに打ち勝つプラスの要素、需要を創出できると考えている」という。

 小田急では、高齢者、若者をターゲットに新しい世界を構築していくことを目指している。2018年に発表した中期経営計画の中で「モビリティ × 安心・快適 〜新しい“モビリティ・ライフ“をまちに〜」をテーマに、これまで積み重ねてきた安心や快適という普遍的な価値を土台にして、これからのテクノロジーを生かして、「会いたいときに、会いたい人に、会いに行ける」、次世代のモビリティライフをまちに生み出す、ということを打ち出した。

 具体的な取り組みとして、運賃や料金の柔軟化、キャッシュレス化の推進を目指したアプリの開発に加えて、自動運転バスやオンデマンドバスの実証実験をここ2年間で進めている。アプリは「EMOT(エモット)」(Emotion+Mobilityの造語)という名前で、「いつもの道が行き方を変えるだけで新しくなる」「移動することで心や経験が豊かになって生き方が変わる」という2つの世界観を持たせた。「つまり、エモットは日々の行動の利便性を高め、新しい生活スタイルや観光の楽しみ方を見つけるアプリだ」(西村氏)。エモットの機能のひとつに複合経路検索がある。鉄道やバスの路線検索に加えて、タクシー、カーシェアやバイクシェアの予約、決済などが可能だ。

小田急が目指すモビリティと街の関わり方(クリックして拡大) 出典:小田急
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