「Cortex-A」を超える「Cortex-X」、サムスンが採用へ組み込み開発ニュース(1/2 ページ)

Armは、アプリケーション処理用の「Cortex-A78」、グラフィックス処理用の「Mail-G78」、機械学習処理用の「Ethos-N78」などモバイルデバイス向けプロセッサコアIPの新プロダクトを発表。「Cortex-Aシリーズ」をカスタマイズ開発するプログラム「Cortex-X Custom」と、同プログラムで初めて開発された「Cortex-X1」も紹介した。

» 2020年05月28日 06時30分 公開
[朴尚洙MONOist]

 Armの日本法人アームは2020年5月27日、オンラインで会見を開き、アプリケーション処理用の「Cortex-A78」、グラフィックス処理用の「Mail-G78」、機械学習処理用の「Ethos-N78」などモバイルデバイス向けプロセッサコアIPの新プロダクトを発表した。また、「Cortex-Aシリーズ」をベースに顧客の要求に合わせてカスタマイズ開発するプログラム「Cortex-X Custom」と、同プログラムで初めて開発された「Cortex-X1」も紹介した。

5G時代のデジタルイマージョンを実現

 アーム 社長の内海弦氏は「スマートフォンが生活に欠かせないデバイスとなり、もはやDNAの一部になっている。世界人口の7割がArmテクノロジーを利用しており、IoT(モノのインターネッオ)デバイスからサーバに至るまでArmプロセッサの出荷数は累計で1660億個に達した。そんなArmが今回発表する新プロダクトは、5G時代のデジタルイマージョン(没入)を次世代モバイルデバイスで実現するためのものだ」と胸を張る。

Armプロセッサの出荷数 Armプロセッサの出荷数。2019年のシェアは34%にとどまっているが「まだ8ビット、16ビットの製品の数が多い」(内海氏)という(クリックで拡大) 出典:アーム

 Cortex-A78は、これまで2020年の投入が予告されてきたコードネーム「Hercules」が正式に商品化されたものだ。アーム リージョナルマーケティング・ディレクターの菅波憲一氏は「マイクロアーキテキチャにも手を入れるなどして、歴代Cortex-Aシリーズの中で最も高い効率性を達成した」と説明する。実際に、前モデルの「Cortex-A77」と比べると、1コア当たりの消費電力1Wの条件下で20%の性能向上を実現している。「これは、同じ性能に抑えた場合はそれだけ消費電力を抑えられるということだ」(菅波氏)。

 なお、Cortex-Aシリーズは、大型CPUコアと小型CPUコアを組み合わせて性能と電力効率を追求する「big.LITTLE」構成を採用しており、2017年からはそのアーキテクチャが「DynamIQ」に刷新されている。Cortex-A78のbig.LITTLE構成では、Cortex-A77と同じ「Cortex-A55」を用いることになる。そして、DynamIQで一般的な4+4のオクタコア構成のチップ面積を比較すると、Cortex-A78×4+Cortex-A55×4はCortex-A77×4+Cortex-A55×4よりも15%小さいという。

「Cortex-A78」と「Cortex-A77」の比較 「Cortex-A78」と「Cortex-A77」の比較(クリックで拡大) 出典:アーム

Cortex-X1のピーク性能はCortex-A77比で30%向上

 Cortex-A78に加えて、Cortex-Aシリーズの新たな進化の方向性として発表したのがCortex-X Customだ。Armは2016年にCortex-Aシリーズの性能を顧客の要求に合わせてカスタマイズするプログラム「Built on Arm Cortex Technology」を発表している。今回のCortex-X Customはそこからさらに踏み込み、新規のIPプロダクトの発表前の段階からさらに顧客の求める性能を引き出すためのカスタマイズ開発を行うという内容になっている。菅波氏は「Cortexブランドであることは共通だが、より性能を引き出せるようにするなどの開発を顧客の求めに応じてArmが行っている」と語る。

「Cortex-X1」の概要 「Cortex-X Custom」に基づいて開発された「Cortex-X1」の概要(クリックで拡大) 出典:アーム

 このCortex-X Customに基づいて開発されたのが「Cortex-X1」だ。Cortex-X1のピーク性能はCortex-A77と比べて30%向上している。そして、先述したCortex-A78×4+Cortex-A55×4のオクタコア構成でCortex-A78の1つをCortex-X1に置き換えた場合にも、ピーク性能の30%向上というメリットが得られる。ただし、チップ面積はCortex-A77×4+Cortex-A55×4と比べて15%大きくなる。

「Cortex-X1」による性能向上 「Cortex-A78」のオクタコア構成に「Cortex-X1」を1個入れるだけでピーク性能を引き上げられる(クリックで拡大) 出典:アーム

 ニュースリリースでは、サムスン(Samsung Electronics) SoC設計部門 バイスプレジデントのJoonseok Kim氏が「Cortex-X CustomプログラムによりArmは新たな方向性を示しており、Androidエコシステムにおける次世代のユーザー体験に向けたイノベーションの実現に大きな期待を寄せている」とコメントを寄せている。また、Cortex-X CustomプログラムのWebサイトにもパートナー企業名としてサムスンの名前が出ている。サムスンのスマートフォン向けSoC「Exynos」では、今後Cortex-X1などを採用する可能性が高そうだ。

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