日産が事業構造改革を再スタート、まずは今後1年半で新型車12モデル製造マネジメントニュース(1/2 ページ)

日産自動車は2020年5月28日、事業構造改革計画を発表した。同社は2019年5月に2022年へ向けた中期経営計画を発表したが、代表執行役社長兼CEOの内田誠氏が2019年12月に就任した際に中計見直しに言及していた。

» 2020年05月29日 06時00分 公開
[齊藤由希MONOist]

 日産自動車は2020年5月28日、事業構造改革計画を発表した。同社は2019年5月に2022年へ向けた中期経営計画を発表したが、代表執行役社長兼CEOの内田誠氏が2019年12月に就任した際に中計見直しに言及していた。

 今回発表した事業構造改革計画では、過度な販売拡大を狙わないことや着実な収益で成長を果たすことを重視する。生産能力の適正化と稼働率の改善、固定費削減、新型車の積極的な投入、電動化技術や運転支援技術の搭載車種拡大などの基本方針は、前回発表した中計から引き継いだ。前回発表した中計では営業利益率6.0%以上を目標としていたが、今回の事業構造改革計画では2023年度末に営業利益率5%、シェア6%を目指す(2018年度の営業利益率は2.7%)。

2023年度に目指す姿(クリックして拡大) 出典:日産自動車

 日産自動車が同日発表した2020年3月期(2019年4月〜2020年3月)の通期決算は売上高が前期比14.6%減の9兆8789億円、営業損益が405億円の損失、当期純損益が6712億円の損失となった。2019年度に決定した構造改革費用や減損損失で6030億円を計上したことが大きく響いた。また、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響による各国の市場低迷も業績悪化につながった。赤字の状態から営業利益率5%に向けたスタートを切る。

 当初、グローバルでの生産能力は2018年度の720万台から2022年度に660万台削減する計画だったが、今回の事業構造改革計画では2023年度までに最大生産能力を600万台、通常シフトで540万台とする。内田氏は、これまで台数を追いながら計画を達成できずにサプライヤーの投資に負担をかけたことへの反省も述べ、「チャレンジできる台数を基にサプライヤーと付き合っていきたい」(内田氏)とコメントした。

生産能力は最大600万台、通常シフトで540万台に削減する(クリックして拡大) 出典:日産自動車

 生産能力は2018年度から20%削減する。これに向けて、生産ラインの削減や一部拠点の閉鎖を進める。現時点ではインドネシア工場の閉鎖を決めており、スペイン・バルセロナ工場も閉鎖に向けた協議と準備を進めている。英国・サンダーランド工場は維持する。工場の稼働率は80%以上を維持する目標だ。また、次世代の自動車生産のコンセプト「ニッサンインテリジェントファクトリー」への投資計画も継続する。

 今後、日産はASEAN向けではタイ工場を活用する。日本にも導入予定の「キックス」をタイで生産するなど、輸出ハブ拠点と位置付ける。工場を閉鎖するがインドネシアでのブランドは維持する。フィリピンでは同じアライアンスのメンバーである三菱自動車と協力を深める。三菱はフィリピンでフレームSUVやピックアップトラックを生産しており、日産は姉妹車として供給を受けている。物流面でのシナジーも創出している。

 バルセロナ工場閉鎖に向けた準備を進める欧州事業は、ルノーの資産を活用しながら事業を継続する。A、Bセグメントの小型車はルノーが主導して開発する「マザーモデル」を活用。日産はCセグメントのクロスオーバーSUVに集中する。

 2020年5月27日に開いた会見では、ルノー日産三菱のアライアンスでアッパーボディーの共有を進めることや、車両セグメントごとにリーダーとなる企業を決めたことを公表した。内田氏は「ブランドのバッジだけを変えるということは考えていないが、ブランドとしての差別化への投資を抑えながらアライアンスのアセットを活用していく。ドアが同じでも差別化に成功している自動車メーカーもいる。これまで、ルノーとの関係において、食い合いにならないことを意識しすぎて、大きな違いを求めるための投資で効率化が図れていなかった。その反省を生かしていく」とコメントした。

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