ワイヤレス給電市場は2030年に2700億円、EVが成長の余地大きい、AGVも堅調電気自動車

矢野経済研究所は2020年5月28日、ワイヤレス給電の受電モジュールや受電機器を対象とした市場調査結果を発表した。2030年に市場規模が2019年比7割増の2739億円に拡大する見通しだ。

» 2020年06月03日 06時00分 公開
[齊藤由希MONOist]

 矢野経済研究所は2020年5月28日、ワイヤレス給電の受電モジュールや受電機器を対象とした市場調査結果を発表した。2030年に市場規模が2019年比7割増の2739億円に拡大する見通しだ。

 市場をけん引するのは小型電子機器用だが、産業機器向けが堅調な成長を見せている。また、電気自動車(EV向け)は現時点ではまだ本格的な成長は見られないものの、今後の成長の余地が最も大きな市場として期待できるという。この他にも、家電や医療機器などさまざまな分野でワイヤレス給電が広まると見込む。

ワイヤレス給電の市場見通し(クリックして拡大) 出典:矢野経済研究所

 産業機器向けのワイヤレス給電の需要をけん引するのはAGV(無人搬送車)だ。AGV用のワイヤレス給電は主に自動車メーカーの工場で利用されているが、物流企業が倉庫内の自動化を進める中で需要が高まっている。物流倉庫では、作業員をなるべく歩かせないことを目指したスマート化が進む。例えば、アマゾン(Amazon.com)は商品棚を持ち上げて自在に移動するAGVを活用。ユニクロを展開するファーストリテイリングは、ダイフクと提携して従来比9割の省人化を達成した。こうした動向を受けて、AGV向けをターゲットにワイヤレス給電市場に参入する企業が増えている。

 EV向けのワイヤレス給電は、EV本体の普及によって市場規模が左右される。各国の環境規制強化やEV普及政策によって中国を中心にEVの販売台数が増えているが、エンジン車と価格や走行距離を比較すると不利な部分がある。充電インフラの普及も課題となるため、EV向けワイヤレス給電の普及には時間がかかりそうだ。

 小型電子機器分野は、現時点でワイヤレス給電が最も普及している製品分野だ。今後は高価格帯のスマートフォンで標準搭載となる動きがあると言う。また、2030年に向けて、スマートフォン以外のデバイスでも搭載が本格化し、普及がさらに進むとしている。

 ワイヤレス給電は、コネクタや接触電極部が不要となる点や、外部接触がなくなることで防水防塵化がしやすくなるというメリットがある。また、ワイヤレス給電で頻繁に継ぎ足し充電することで、バッテリーの小型化も図れる。ただ、ワイヤレス給電の送受電の開始や停止、受電装置の認証、高効率な電力伝送の維持などシステム全体を小型軽量化することが課題となっている。ワイヤレス給電機器を手掛けるメーカーは、こうした課題の解決に加えて、複数機器への給電、移動体への給電など新技術に取り組んでおり、技術の進化も市場拡大をけん引するとみられる。

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