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» 2020年06月22日 06時00分 公開

いまさら聞けない自動車業界用語(2):新車開発は時間との戦い、サプライヤーも参加する怒涛の試作イベント (2/4)

[カッパッパ,MONOist]

そのクルマ、その部品、本当に量産できるか

 新車の開発にあたって新機能が搭載される場合は、さまざまな技術課題が発生しますが、それらをクリアした上で実際に車両の図面化が進みます。CAE(Computer Aided Engineering)やシミュレータなどコンピュータを使ったシミュレーションも活用されます。

 ただ、CAEやシミュレータで上手く機能していても、実際の車両で性能が出るのかは実物で評価しないと分かりません。そのため、試作車が製作され、試験が実施され本当に製品として成り立つのか性能を評価します。

 人の命を預かるクルマは高い品質が求められますが、同時に毎月数千台を作り出す安定した生産能力や、企業として利益を出すことも必要です。生産準備では、高い品質と生産性、低コスト、これらを同時に成立させる製造ラインの準備、品質や原価の作り込みを行います。

 開発の中で生み出されたすばらしいクルマの図面も、実際に製造ラインで作れなければ意味がありません。そのため、どのような設備や材料を使うか、どんな手順や時間、人員体制で生産するのか、工程設計を行い、それぞれ準備を進めます。

実際に製造ラインで組み立てる量産の日まで、さまざまな準備が行われています。写真はイメージです(クリックして拡大)

 生産準備に最も時間がかかるのは、金型や設備の準備期間です。通常は最短でも1年ほどかかります。設備の面では、既存のラインで生産するのか、新規でラインを立ち上げるのか、質や量、品質の面から判断し、コストがミニマムになるよう準備していきます。

 このとき、設備機械メーカーと協力し、ラインが完成してから量産品が問題なく生産できるように、加工のプログラムなど生産の条件を決定します。同時に、部品が加工や組み立ての際に正しい作業位置になるよう調整するための「治具(治工具)」や、部品が決められた寸法で作られているかを確認する「検査治具」も手配が必要です。

 また、製品を良品として生産するためには、品質を確保するために各工程の管理、方法を示す「QC工程表」や、作業者がどのような作業を行うのかを定めた「標準作業票」などが必要です。

2年前から1カ月前まで、何度も行う「試作イベント」

 さて、こうして進む生産準備の中では「試作イベント」が発生します。これは、自動車メーカーが一定の時期に試作車を製作し、問題がないかを評価、確認するためのものです。新車向けに受注したサプライヤーも、試作イベントに間に合うように生産準備を進める必要があります。

車両の試作から量産までの道のりとは(クリックして拡大)

 「試作イベント」の説明に入る前に「試作品」「本型品」について理解しておくことが重要です。試作品は車両の耐久評価、試験などに使用し、ごく少量を開発の初期段階で使う部品です。基本的には図面の公差や規格を満たした部品であればOKであり、その工程については厳格に求められません。部品は試作用の金型で作られ、加工に関しても試作用のラインで特注品として加工されることが多いです。

 一方、本型品は量産金型で生産される製品です。本型品で実際の量産ラインで作られたものを「本型本工程品(Off tool Off process)」と言います。本型工程品は低コストで大量生産する必要があり、耐久性の高い量産金型、量産製造ラインでの生産が必須です。またラインの中で性能、品質を保証するプロセスも要求されます。

 この試作品と本型品の区別を踏まえ、トヨタを例にとり「試作イベント」がどのように進んでいくのかを説明します。

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