特集:IoTがもたらす製造業の革新〜進化する製品、サービス、工場のかたち〜
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» 2020年06月22日 11時00分 公開

モノづくり最前線レポート:“ニューノーマル”でモノづくりはどう変わるか、ロックウェルとPTCの取り組み

米PTCは2020年6月9日(現地時間)、同社初となるバーチャルライブイベント「LiveWorx 20 Virtual」を開催した。本稿では「Expanding Human Possibility(人の可能性の拡張)」をテーマとした、米Rockwell Automation会長兼CEOのブレイク・モレット氏による講演の内容を紹介する。

[三島一孝,MONOist]

 米PTCは2020年6月9日(現地時間)、同社初となるバーチャルライブイベント「LiveWorx 20 Virtual」を開催した。本稿では「Expanding Human Possibility(人の可能性の拡張)」をテーマとした、米Rockwell Automation(以下、ロックウェル)会長兼CEOのBlake Moret(ブレイク・モレット)氏の講演の内容を紹介する。

 ロックウェルとPTCは2018年に戦略的パートナーシップを結び、さまざまな製品分野で協業を進めている(※)が、今回のモレット氏の講演ではこれらのPTCとの協業の成果と新たな取り組みとともに、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)への対応策がモノづくり領域でどういう効果を発揮し、さらに“ニューノーマル”と呼ばれるCOVID-19後の世界でどのように役立つのかを紹介した。

(※)関連記事:ロックウェルがPTCに10億ドル出資、「ThingWorx」と「FactoryTalk」を結合へ

photo オンラインで講演を行うロックウェル 会長 兼 CEOのブレイク・モレット氏

市場投入のスピードや俊敏性が求められる「ニューノーマル」

 COVID-19によりモノづくり環境は大きく変化しているが、モレット氏は「ある意味でこのような状況は、われわれを顧客に近づけている」と語る。「例えば、こうした状況だからこそ生産を維持し続けなければならない企業がある。感染を含めた人へのリスクを下げて生産をどう維持するのかということなどを考えると、われわれの持つ技術や製品が支援できる環境が広がっている」(モレット氏)。

 COVID-19によりもたらされ「ニューノーマル」の時代にも必要になる1つ目の要素に「市場投入へのスピードがある」とモレット氏が語る。

 例えば、COVID-19の影響で人工呼吸器の不足が注目されるが、ロックウェルが提供する技術により、これらの生産の維持や増産に貢献しているという。例として紹介したのがCytivaでの取り組みだ。Cytiva(旧GE Healthcare Life Sciences)は人工呼吸器の生産を行っているが、増産や生産における人材の確保をするために生産研修の簡略化や効率化を求めていた。これに対し、PTCとロックウェルの「FactoryTalk InnovationSuite」を通じて、VR(拡張現実)ソリューションである「Vuforia Expert Capture」および「Vuforia Chalk」を使いこれらの研修を行うようになったという。

 さらに「現場の労働力と生産性をリアルタイムでデータ取得し段階的な指示で改善をしていく。新しい従業員には必要な情報がタイムリーに与えられるために、エラーの数を減らし、品質を維持しつつ、生産能力を高めることができる。また、作業内容なども記録されるため、熟練技術者の音声コマンドやジェスチャー、動線や位置などを参考にすることもできる」と語っている。

 「ニューノーマル」における2つ目の重要な要素が「俊敏性」だ。モレット氏は「ロックウェルが多くの企業に頼まれるのが俊敏性を高めるのを支援してほしいという要望だ。オートメーションが活躍できる領域でCOVID-19以前からも多かったが、さらに高まってきている」と語っている。

 「俊敏性」の例として語ったのがRoche Diagnostics(ロシュ社)での事例だ。ロシュ社は、もともとロックウェルのユーザーで「PharmaSuite MES」を活用しているが、COVID-19の検査キットなどの24時間生産にも適用範囲を拡大した。ただ、生産を進める中でさらに生産性を改善するために、生産をしながらMESのバージョンアップを実行し、切り替え時間を最小化することに成功したという。

 「ニューノーマル」における3つ目の要素が「安全を促進するイノベーションを提供する」ということだ。工場の中で人を使った生産が制限されるようになる中で、ロボットによる製造などが広がる。しかし、一方で生産の自由度や柔軟性は必要で、ロボット工学と製造技術、業界への知見、制御技術との統合を通して簡単に構成可能で自由度の高いモジュール型製造を実現することが求められている。ロックウェルでは現在これらのニーズに応える万能ロボット(ユニバーサルマシン)の共同開発を進めているという。

 モレット氏は、COVID-19やさまざまな災害などに対し「われわれが取り組むものの大部分がわれわれには力の及ばない出来事によって定められている。しかし、それらがよい影響を及ぼすことも多く、こういう状況だからこそわれわれの人間性が現れるものだ」と語った。

PTCやマイクロソフトとの協業拡大、ターンキーのクラウドサービスを提供

 一方でモレット氏は「変化の時期だからこそ重要になるものがパートナーシップや顧客との関係性、産業への知見、技術などへの信頼性など、従来培ってきたものだ」と強調する。ロックウェルでは、2018年からPTCとの協業により、工場データの活用を容易に行える「FactoryTalk InnovationSuite, powered by PTC」を提供してきた。今回はさらに協業を深めることで製品強化を行ったことを明らかにした。

 新たに追加された機能は、OT(制御技術)とIT(情報技術)の統合を改善し、プラントフロアのデバイスや制御プラットフォーム、時系列データベース、製造実行システム(MES)といった重要なソースからリアルタイムのオペレーションデータをコンテキストとして活用できるようにしている。コンテキスト化されたデータと基盤となるデータモデルをPTCのThingWorxのような産業用IoTプラットフォームに自動的に統合することで、OTとITのデータ統合を簡単に自動で行えるようになり、データの前準備作業を大幅に低減できる。

 加えて、PTCとMicrosoftとの連携により、工場データを活用するターンキー型のクラウドソリューション「Factory Insights as a Service」を発表した。これはSaaS型のクラウドソリューションで「製造業のデジタル変革(DX)をこれまでにない範囲やスピードで実現可能とするものだ」(モレット氏)。具体的には「リアルタイムの生産パフォーマンス監視」「資産の監視と活用」「コネクテッドワークセル」「デジタルおよび拡張された作業指示書」をクラウドからサービス型で提供する。

 PTCとロックウェルの「FactoryTalk InnovationSuite」の主要製品コンポーネントの多くが含まれている他、Microsoftのクラウドや産業用IoTの技術、「Azure IoT Hub」や「Azure IoT Edge」などのエッジサービスを活用することで、ユーザーとなるメーカーは個々のサイトを迅速に接続し、企業ネットワーク全体でプロジェクトを実装できる。「デジタル変革にかかる時間や複雑さを低減するという意味で大きなビジネスインパクトをもたらす」とモレット氏は価値を強調する。

 また、ポートフォリオの拡張として、3D業務改善ソフトウェアのEmulate3Dやソフトウェア配信などを行うKalypsoを買収。CAEのAnsysとの連携も含めて、デジタルでつながったエンタープライズ環境の実現を進めている。

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