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» 2020年06月23日 10時00分 公開

ポスト・メイカームーブメント(5):医療現場を救え! Maker製フェイスシールドによる支援の輪はどのように広がったのか (3/4)

[越智岳人,MONOist]

驚きから支援に動いた中小企業

 実際にDOYO modelを基に金型を作り、量産版モデルを医療関係者に配布した例を紹介しよう。

 愛知県南東部に位置する安城市は、自動車産業を中心に製造業関連の中小企業が集積するエリアだ。その安城市に拠点を構える中小企業と商工会議所が組み、新たな産業創出を目的に地域ブランド「アンジョウハーツ」を2010年に立ち上げた。

アンジョウハーツが製造するフェイスシールド「A-MASK」はDOYO Modelがベースとなっている(写真提供:アンジョウハーツ) アンジョウハーツが製造するフェイスシールド「A-MASK」はDOYO Modelがベースとなっている(写真提供:アンジョウハーツ)[クリックで拡大]

 これまでペットボトルのキャップをリサイクルした製品を開発、販売してきたが、2020年4月からフェイスシールドを量産し、無償で配布。これまでに累計3万個を日本各地の医療機関に無償で配布している。1週間で4万個を量産できる体制を築くなど、生産能力も群を抜いている。

 無償配布を決めたのは、道用氏が公開したフェイスシールドを報道で見たのがきっかけだったという。

 「モノづくり企業から見れば、3Dデータを無償で公開するのはあり得ないことで、それ自体にも驚いたが、3Dプリントして個人が配ったり、金型を町工場が作ろうとしたりしていることも知り、これは新しい動きだと思った」(金型製造を担当する高木金型製作 高木英樹氏)

 しかし、3Dプリンタだけでは到底間に合うとは思えない。そう考えた高木氏は、道用氏にDOYO Modelを使った量産をSNSで相談する。快諾した道用氏からサンプルを受け取り、データを金型用に加工して金型設計に取り掛かる。並行してアンジョウハーツの活動で使用していたペットボトルキャップのリサイクル材を手配した。道用氏にコンタクトを取ってから8日後には金型と樹脂がそろい、量産がスタートした。

フェイスシールド用の金型(写真提供:アンジョウハーツ) フェイスシールド用の金型(写真提供:アンジョウハーツ)[クリックで拡大]

 高木氏も、射出成形を担当する壱武工業所の竹口達也氏も、これまでにボランティア活動の経験はなかったという。何が原動力になったのだろうか。

 「大企業でもフェイスシールドを製造する動きはあったが、日本全国で数百万個は必要だという報道もあった中で、1日数百個程度の生産能力と知り危機感を覚えた。『こういうときに製造業の人間が本気でやらないでどうするんだ」という気持ちが先行した」(高木氏)

 アンジョウハーツという複数の企業から成るチームがあったことも、活動の下支えになっている。

 「1社だけであれば難しいが、複数の企業がお互いにできることを持ち寄ることで本業と並行して無理なく活動ができている」(竹口氏)

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