特集:IoTがもたらす製造業の革新〜進化する製品、サービス、工場のかたち〜
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» 2020年06月29日 10時00分 公開

アフターコロナを生き抜く製造業が“ニューノーマル”で求められるものとはサブスクで稼ぐ製造業のソフトウェア新時代(5)(2/3 ページ)

[前田利幸(日本セーフネット/タレス・グループ),MONOist]

ビジネスを止めるな! 製造業のニューノーマルを考察する

 ハードウェアと異なり、ソフトウェアビジネスのサプライチェーンを強化することは比較的容易に実現可能だ。今後、“モノ”に代わってソフトウェアを中心とした“コト”による収益を強化させることは、COVID-19の感染拡大により大きく変容した社会情勢を指す“ニューノーマル”において、製造業に必要になることは確かだろう。

イメージ ※図はイメージです

 ビジネスを止めないためのプラットフォームや体制を強化させることについて、必要となるのがライセンシングバックオフィス機能のデジタル化にある。ライセンスのデリバリー業務をデジタル化させることが、第1のステップだ。手動でライセンスを生成したり、出荷管理業務をExcelで管理したりといったアナログなライセンス業務から解放し、デジタル技術で運用効率を向上させることにある。ライセンスを配布するバックオフィスシステムはクラウド化させて、担当者の作業場所は選ばない。クラウドによって運用に必要な作業はいつでもどこでも可能だ。

 また、ERPやCRMといった業務システムとの連携や、オンライン販売に対応させることによってワークフローの自動化が実現し、ライセンスの出荷業務は飛躍的に向上する。オーダリングのシステム間連携の自動化によって人為的なミスを排除し、オーダーを受けてからソフトウェアとライセンスキーを顧客に届けるまで、今まで2〜3日を費やしたプロセスをわずか1時間に短縮させることも不可能ではない。

 そして、デジタル化によって収益認識に必要な履行業務を充足するまでの時間を短縮させることは、運用コストを削減するだけにとどまらない。請求や入金のタイミングが遅くなることが少なくなり、会計上、特に資金管理において有利になる側面があるのだ。

 ライセンシングのバックオフィス機能により顧客別の柔軟な契約管理ができれば、顧客満足度の向上に必要なパーソナライゼーションの実現も容易になる。顧客ごとに異なる機能をライセンス提供したり、個別のライセンスモデルを適用しても業務が煩雑にならないようにしたりするにはバックオフィス機能の性能が鍵を握っている。市場の動向に応じて新しいパッケージプランを構築して即座にリリースできれば、コロナショックのような不測の事態に備えることも可能だろう。

イメージ ※図はイメージです

 さらにソフトウェアの納品も、光ディスクやUSBメモリなどの物理メディアを郵送することによる納品ではなく、ダウンロード配信によってキッティングコストや配送コストが削減される。製造業は収益認識の会計処理上、デジタル納品ではなく物理的な納品を必要とするケースは珍しくないが、それらの多くは代替手段として印刷したライセンス証書の送付に切り替えることで充足でき、従来と比べても業務負荷を軽くすることが可能だ。顧客がソフトウェアのメンテナンス作業を完結できるセルフサービス可能な環境を提供できれば、フィールドエンジニアが現場まで出向くコストさえも削減できる。

 製造業において柔軟なソフトウェアビジネスを難しくしているのは収益認識基準にあるといっても過言ではない。採用するライセンスモデルや商流によっては収益認識のタイミングが異なってくるために、契約ごとに個別の売上計上処理が必要となる場合がある。よって、ライセンシングバックオフィス機能は、多様な収益認識基準に対応できる能力を持っているかどうかが企業の業績を左右しかねない。かといって、採用するライセンスモデルや商流を固定化してしまうのは、ビジネスの柔軟性と収益力の強化を阻害することにつながってしまう。そのため、収益認識のタイミングが異なったとしても、運用に頼ることなくライセンシングバックオフィスと自動化によって売上計上処理に対応できることが、収益力強化にいかに重要なのかが理解できるだろう。

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