ミズノ史上最高の反発性を実現した新素材は用具開発のノウハウから生まれた材料技術(1/2 ページ)

ミズノは、オンラインプレスカンファレンスを開催し、「ミズノ史上最高」をうたう優れた反発性を実現した新素材「MIZUNO ENERZY(ミズノエナジー)」と、同素材を使用した2つの新シューズを発表した。

» 2020年07月02日 07時30分 公開
[八木沢篤MONOist]

 ミズノは2020年7月1日、オンラインプレスカンファレンスを開催し、「ミズノ史上最高」をうたう優れた反発性を実現した新素材「MIZUNO ENERZY(ミズノエナジー)」と、同素材を使用した2つの新シューズを発表した。

 MIZUNO ENERZYは、同社が約2年の歳月をかけて独自開発したシューズソール用の新素材。最大の特長は、反発性の高さで、柔らかさによってためた接地時のエネルギーを、ロスを少なく効率的に反発させることにより、走りの推進力に変換することができる。

 「ミズノはシューズだけでなく、総合スポーツ用品メーカーとしてさまざまな製品を手掛けてきた。その中でも『反発』については、野球用バットやゴルフクラブの製品開発を通じて長らく研究してきた。新素材MIZUNO ENERZYはシューズ開発だけでなく、総合スポーツ用品メーカーとして培ってきた『反発』に関するノウハウがあったからこそ生み出せた」と、同社 代表取締役社長の水野明人氏は語る。

ミズノ 代表取締役社長 水野明人氏 ミズノ 代表取締役社長の水野明人氏 ※画像提供:ミズノ [クリックで拡大]

 MIZUNO ENERZYのラインアップは、スタンダードタイプの「MIZUNO ENERZY」、軽量タイプの「MIZUNO ENERZY LITE」、最上位タイプの「MIZUNO ENERZY CORE」の3種類だ。そのうち、MIZUNO ENERZY COREは最も高い反発性を有し、従来ソール素材の「U4ic(ユーフォリック)」と比較して反発性が約56%、柔らかさが約293%向上しているという(表1)。

タイプ 反発性 柔らかさ 特長
MIZUNO ENERZY CORE 約56% 約293% 柔らかさと反発性に優れたタイプ
MIZUNO ENERZY LITE 約35% 約22% 柔らかさと反発性に加え、軽量性に優れたタイプ
MIZUNO ENERZY 約15% 約17% 幅広い用途で使用可能なタイプ
表1 MIZUNO ENERZYの特性について、従来ソール(U4ic)と材料性能のみを比較した数値

 「MIZUNO ENERZYは、ランニングだけでなくウォーキング、あるいはバレーボール、卓球、バスケットボールといったさまざまなスポーツシーンで活用できる新素材だ。今後も材料開発を進めていきアスリートの活躍を支えるスポーツ用品を提供していきたい」(水野氏)

発表会ではミズノブランドアンバサダーを務める松岡修造さん、ラグビーの田中史朗選手、陸上競技の飯塚翔太選手の3人によるトークセッションも行われた 発表会ではミズノブランドアンバサダーを務める松岡修造さん(中央)、ラグビーの田中史朗選手(右)、陸上競技の飯塚翔太選手(左)の3人によるトークセッションも行われた ※画像提供:ミズノ [クリックで拡大]

総合スポーツ用品メーカーだからこそ生み出せた「MIZUNO ENERZY」

 MIZUNO ENERZYの実現を支えたのが、同社がモットーとする科学的視点に立ったモノづくりだ。水野氏が言う通り、MIZUNO ENERZYの開発に大きく貢献したのが用具開発における反発性を高めるための幅広いノウハウで、これらは総合スポーツ用品メーカーとして同社が長年培ってきたものだ。野球用バットやゴルフクラブであれば、衝突エネルギーを少ないロスで伝え、とにかくボールを遠くへ飛ばすために、瞬間的な反発をどう高めることができるのかを、原理や事象の理解を深めつつ、シミュレーション技術などを用いて今もなお研究し続け、その知見やノウハウが製品開発に生かされている。

解析(1)解析(2) 野球用バットやゴルフクラブなどの製品開発で長年「反発」の研究に取り組んできた ※出典:ミズノ [クリックで拡大]
用具開発で培ってきた反発のための設計ノウハウをシューズ用に調整 用具開発で培ってきた反発のための設計ノウハウをシューズ用に調整 ※出典:ミズノ [クリックで拡大]
ミズノ グローバル研究開発部 次長の佐藤夏樹氏 ミズノ グローバル研究開発部 次長 佐藤夏樹氏 ※画像提供:ミズノ [クリックで拡大]

 「反発は非常に奥が深い。用具を開発するという視点からシューズを見たとき、人の足が地面と衝突した(地面を踏み込んだ)際、どのように跳ね返るのか、1つの衝突現象として捉えることができる。MIZUNO ENERZYは、用具向けに研究中だった素材がヒントになり、さらに用具開発で培ってきた反発のための設計ノウハウを生かし、それらをシューズ用に調整することで生み出すことができた。スポーツ用品の統合メーカーだからこそ開発できた新素材だ」と、同社 グローバル研究開発部 次長の佐藤夏樹氏は説明する。

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