「ECの世界をリアルで再現する」トライアルが関東初のスマートストアを開店スマートリテール(1/2 ページ)

トライアルカンパニーは2020年7月3日、同社の既存店舗である「スーパーセンタートライアル長沼店」(千葉県千葉市)にAIカメラなどの設備を導入を通じてスマートストア化しリニューアルオープンした。AIカメラやセルフレジ機能を搭載したショッピングカートで来店客の購買体験の向上を目指す。

» 2020年07月06日 14時00分 公開
[池谷翼MONOist]

 トライアルカンパニー(以下、トライアル)は2020年7月3日、同社の既存店舗である「スーパーセンタートライアル長沼店」(千葉県千葉市、以下、トライアル長沼店)をAIカメラなどの設備導入によってスマートストア化し、リニューアルオープンした。関東地方でのスマートストア出店は同社初。トライアルは2018年2月のスマートストア「スーパーセンタートライアル アイランドシティ店」のオープンを皮切りに、国内既存店舗などのスマートストア化を推進している。

「スーパーセンタートライアル長沼店」の外観[クリックして拡大] 「スーパーセンタートライアル長沼店」の外観[クリックして拡大]

AIカメラはあえて「シンプル」に

 スマートストア化を目指すトライアル長沼店では、来店客の購買体験の質向上や、購買行動の情報取得などを目的にさまざまな設備を導入している。その中でも、棚の欠品状況などを自動で分析するAIカメラと、セルフレジ機能などを搭載した買い物カート「スマートショッピングカート」の2つは、店舗運営において重要な役割を担う。

店内の天井レール上に設置されているAIカメラ(左)と、スマートショッピングカート(右)[クリックして拡大]

 AIカメラによって、棚の欠品状況の他、来店客の店内動線や棚前行動を遠隔で把握できる。撮影した画像はAIカメラ上で分析され、商品の欠品が検知されるとスタッフへ自動的にアラートが届き、補充のタイミングを知らせる。こうした仕組みによって、トライアルの他店舗では生鮮食料品棚の売り上げが12%向上する効果が確認されたという。この他、従来のPOSデータでは把握できなかった、来店客が商品の前でどの程度の時間立ち止まっていたか、また、いつ商品を手に取ったかなどの情報も取得可能だ。

Retail AI 代表取締役 永田洋幸氏 Retail AI 代表取締役 永田洋幸氏

 AIカメラの開発、運用を担当しているのは、トライアル傘下のRetail AIだ。同社 代表取締役 永田洋幸氏によると、開発時に同社は「いかに機能を単純化するか」という点にこだわったという。「現在、トライアル長沼店では688台のAIカメラを設置しているが、これらのカメラには『欠品情報の検知』と『人流情報の取得』の2機能しか搭載していない。多機能、高機能な他社製のAIカメラと比べると不足感を覚える人もいるかもしれない。だが、むしろ実用性を考えると、リテールAIカメラを多機能化する必要性は薄いと考えている」(永田氏)。

トライアル長沼店では688台のAIカメラを設置している[クリックして拡大] トライアル長沼店では688台のAIカメラを設置している[クリックして拡大]

 永田氏の考えによると、例えば欠品検知の場合、AIカメラに商品の残個数を正確にカウントする機能を搭載する必要はない。「黒色の商品棚に置かれたバナナの欠品状況をAIカメラで分析する場合を想定しよう。この場合、画像内の面積のうちバナナの黄色部分が占める面積が大きければ在庫は十分、反対に棚の色である黒部分の面積が大きければ欠品が多いという判断の根拠になる。これによってカメラの導入コストの他、AIカメラの省電力化を通じて運用コストの低減も期待できる」(永田氏)。

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