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» 2020年07月14日 10時00分 公開

IoT尿検査デバイスのBisu、技術へのこだわりが招いた試作時の失敗とはモノづくりスタートアップ開発物語(2)(3/3 ページ)

[大沼慶祐(DMM.make AKIBA)/河野正一郎(テックベンチャー総研),MONOist]
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試作品の失敗は「技術のための技術」だったから

――方針転換してからは、一気に現在のビジネスに向かったのですね。

ダニエル氏 そう簡単ではなかった。当時は従来の尿検査より検査項目を増やすことや、検査精度を上げてデバイスの競争優位性をとるために液体試薬を使うことにこだわりすぎていた。このせいで尿、液体試薬、洗浄水を入れる容器が必要になり、さらに修正を重ねているうちに検査デバイスが大型化してしまった。しかも一部の部品は3Dプリンタで製作していたので、実際に量産化する体制を整えるのも難しいという悪循環にも陥っていた。

――量産できなければ、ビジネスとして成り立ちませんね。

ダニエル氏 振り返るとデバイスを複雑な仕組みにしていくことで「プロダクトが進化している」と勘違いしていたのだと思う。自分たちの技術を愛しすぎて駄目になるパターンの典型だった。一歩引いて自分のビジネスを見つめ直そうと、2018年4月ごろに思い直した。

――見つめ直した結果、どのようなことに気付けましたか。

ダニエル氏 「技術のための技術」になってしまっていて、利用者の視点が欠けていたと痛感した。そこで、利用者のことを考えたデバイス設計を実現するために「一般の人が簡単に使えるものにする」「シンプルなデバイスにする」という方針を決めて一から設計をやり直した。2018年4月から取り組み始めて10月まで、最終的に現在の検査デバイスの形に落ち着くまで約半年かかった。

 利用者に使いやすいデバイス設計をしようと決めた際、最優先で取り組むべきは検査デバイスの小型化だと考えた。デバイスが大きくなった原因は液体試薬にこだわっていたせいだ。ブーワからの提案もあり、まずはそのこだわりを捨てた。ブーワを全面的に信頼しているので提案自体はすぐに受け入れたが、大きな決断であったことは確かだ。

新しいアプローチで作った試作品。このコンセプトを改善し、量産タイプにしたものが現状のものになる[クリックして拡大]出典:Bisu 新しいアプローチで作った試作品。このコンセプトを改善し、量産タイプにしたものが現状のものになる[クリックして拡大]出典:Bisu

 その過程があったからこそ、尿を付ける検査チップに載せられる試薬数を5種類から8種類に増やすことができた。さらに、詳しくは説明できないが、チップの情報を読み取る分析機の方法も進化したので、小型化も実現した。

――今後も尿検査デバイスを主軸に会社を成長させていくお考えですか。

ダニエル氏 私たちはただ尿検査デバイスを製作する会社ではなく、健康を守るサービスを提供する会社だと自らを定義している。デバイスから得られるデータを新たな健康食材やサプリメント、薬の開発に役立てるデータプラットフォームの構築を目指して、Eコマースのソリューションをつくりたいと考えている。

――具体的にはどう進めていきますか。

ダニエル氏 2021年はアメリカでは人間用の栄養検査、日本ではペット用の健康チェックから販売開始する予定だ。また、2022年にはオムツにマイクロ流体技術を生かした検査チップを埋め込むことで、乳児や被介護者の健康状態のチェックができるような検査製品の販売も計画している。

 さらに検査対象を尿だけでなく、唾液にも広げたいと思っている。口内環境が体全体の健康状態に影響することが判明しつつあり、唾液と尿を併せて検査することで、ヘルスケア分野のIoT企業になれると構想している。

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