AIカメラなどで業務時間を91%削減、パナソニックの介護施設向け新サービス組み込み開発ニュース

パナソニックは2020年7月13日、AIカメラや体動センサーを組み合わせたシステムをベースとする介護業務支援サービス「ライフレンズ」を同年7月から提供開始すると発表した。室内の状況を自動的に把握するシステムによって、介護施設における夜間見回りなどの業務効率化を目指す。

» 2020年07月15日 14時00分 公開
[池谷翼MONOist]

 パナソニックは2020年7月13日、AIカメラやIoT(モノのインターネット)センサーを組み合わせたシステムをベースとする介護業務支援サービス「ライフレンズ」を同年7月から提供開始すると発表した。室内の状況を自動的に把握するシステムによって、介護施設における夜間見回りなどの業務効率化を目指す。

AIカメラなどを活用した介護施設向け介護業務支援サービス「ライフレンズ」[クリックして拡大]出典:パナソニック AIカメラなどを活用した介護施設向け介護業務支援サービス「ライフレンズ」[クリックして拡大]出典:パナソニック

負担の大きい夜間巡視業務を効率化

 ライフレンズはパナソニックが開発したAIカメラ「Vieureka(ビューレカ)」とベッド装着型のシート型加圧式センサーなどを組み合わせたシステムを活用することで、介護施設の職員による巡視作業の負担を軽減するサービスである。シート型センサーで入居者の睡眠状況や在床状況などのデータを取得して、入居者が無断で離室した場合はナースコールに異常発生の通知を送る。また注意が必要な入居者の部屋はVieurekaが撮影した映像を見て安否を確認できるので、直接訪室する手間が省ける。

ライフレンズのAIカメラ「Vieureka」(左)とシート型センサー(右)[クリックして拡大]出典:パナソニック
パナソニック テクノロジー本部 事業開発室 スマートエイジングケアプロジェクト 総括担当の山岡勝氏 パナソニック テクノロジー本部 事業開発室 スマートエイジングケアプロジェクト 総括担当の山岡勝氏

 導入によって特に効率化が進むと想定されるのが夜間巡視業務だ。パナソニック テクノロジー本部 事業開発室 スマートエイジングケアプロジェクト 総括担当の山岡勝氏は「夜間巡視業務は職員が1人で多数の入居者の部屋を回らなければならない上、認知症ケアや体調異常などの突発的な業務が発生しやすく業務負担が大きい。確認ミスを未然に防ぐ注意力も求められるので、精神的にも疲弊する。このため介護施設では夜勤時間帯の従業員の定着率が悪く、以前から課題となっていた」と語る。

 ライフレンズの導入効果は実証実験によっても示されている。パナソニックが2018年から協業している、老人ホーム運営などを手掛けるHITOWAケアサービスの施設では、夜間巡視時間を1日当たり約200分と従来比91%削減することに成功したという。

夜間巡視作業の労働時間を91%削減[クリックして拡大]出典:HITOWAケアサービス、パナソニック 夜間巡視作業の労働時間を91%削減[クリックして拡大]出典:HITOWAケアサービス、パナソニック

データ活用で高齢者の重病化防止を実現したい

 ライフレンズはパナソニックが以前から提供していた介護施設向けソリューション「みまもり安心サービス」をベースとして開発された。

 みまもり安心サービスは入居者の部屋にIoT対応のエアコンと電波センサーを設置して、入居者の睡眠情報や安否状況を職員が遠隔から確認する仕組み。このシステムをHITOWAケアサービスの施設で導入したところ、夜間巡視の作業時間を43%削減することに成功した。

 しかし、山岡氏によると「HITOWAケアサービスからは、電波センサーによる情報取得だけでは実際の状況が分からない入居者もいるため、一定の訪室作業が残されたままになるという問題点があると指摘された。正直に言えば、43%の時間削減でも効率化という観点では十分な成果だと考えていたが、改善の余地がまだあることに気付かされた」という。

 そこで、入居者の様子を遠隔から把握しやすくするために考案したのがVieurekaを組み入れたライフレンズのシステムだ。また入居者の在室確認をより正確に行うことや、電波干渉の可能性を低減するなどの目的で、電波センサーではなくシート型加圧式センサーを採用するなどの工夫も取り入れた。

みまもり安心サービスの課題点を改善する形でライフレンズを開発した[クリックして拡大]出典:パナソニック みまもり安心サービスの課題点を改善する形でライフレンズを開発した[クリックして拡大]出典:パナソニック

 介護向けサービス開発の展望について、山岡氏は「施設職員のさらなる業務効率化を目指すことはもちろんだが、最終目標としては高齢者に重病化につながる異変が生じていないか、また、QOLに問題はないかをセンサー類で取得したデータを基に分析、予測するシステムを開発したいと考えている」と語った。

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