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連載
» 2020年07月21日 10時00分 公開

構造解析、はじめの一歩(6):固有振動数解析の流れを“ステップ・バイ・ステップ”で理解する (1/3)

「構造解析」を“設計をより良いものとするための道具”として捉え、実践活用に向けた第一歩を踏み出そう。第6回は「固有振動数解析」をテーマに取り上げ、その手順についてステップ・バイ・ステップで解説する。

[栗崎 彰/サイバネットシステム シニア・スペシャリスト,MONOist]

 前回に引き続き、今回は「固有振動数解析」について、ステップ・バイ・ステップで解説していきます。誰もが必ずできる固有振動数解析の解説を目指します。

※注意※

  • ヤング率、ポアソン比など、基本的な材料力学の知識があることを前提としています。材料力学の知識を持たずして解析を行うことは、免許を持たずしてクルマの運転をするのと同じことです。「危険」であることを心得ておいてください
  • ソフトウェアのインストールや使用については、自己責任ということでお願いします
  • 今回の記事は、前回の「線形静解析」で説明した部分が大幅に省略されています。ぜひ前回の記事に目を通してからご覧ください

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なぜ振動解析が必要なのか

 最近、日本各地で地震が発生しています。コワイですね……。動かないはずの大地が動くと、生理的にも精神的にもダメージがあります。「地震、雷、火事、親父」とはよく言ったものです。

 「振動」は、構造物にも大きな影響を与えます。「共振」という現象が起きると「まさか、こんなものまで……」と思われるものが壊れてしまいます(参考1参考2)。

 一方で、振動は楽しいことも提供してくれます。それは音楽です。弦楽器の弦の振動、太鼓の膜の振動など、制御された振動はハーモニーとなって音楽となり、私たちを楽しませてくれます。また、公園にあるブランコやテーマパークのアトラクションにも制御された振動が楽しさを提供してくれています。

 以下のYouTube動画(参考3)では、振動や共振の何たるかを優しく楽しく解説してくれていますので、ぜひご覧ください。

 全てのモノには「固有振動数」があります。固有振動数とは、振動している物体が、1秒間に繰り返し運動する回数で単位は「Hz(ヘルツ)」です。モノが存在するだけでは、モノ固有の振動数はモノに何の影響も及ぼしません。ところが、モノには振動が加わります。ビルであれば地震の震動(振動)が加わることになります。構造物はさまざまな振動の影響を受けます。エンジン、モーター、コンプレッサー、ポンプ、など……。この外からの振動が、構造物に振動をもたらすのです。

 クルマのバックミラーを例に、固有振動数解析の意義を解説します。バックミラーの設計をするつもりで読んでください(図1)。

バックミラーの共振を外す 図1 バックミラーの共振を外す [クリックで拡大]

 クルマに計測器を載せていろいろな道を走ります。舗装道路あり、砂利道あり、石畳あり。そのときのクルマの振動波形は、時刻歴で記録されます。横軸が時刻歴で記録されたデータにフーリエ変換を施すと、横軸は周波数に変換されます。フーリエ変換後のグラフにはいくつかのピークがあります。これがクルマの振動の特徴的な周波数となります。

 一方でバックミラーの固有振動数解析をします。固有振動数解析で分かるのは、固有振動数と「固有モード形状」です。固有モード形状とは、固有振動数でどのようなカタチで振動するかを表したものです。バックミラーの固有振動数が、クルマの振動の特徴的な周波数近辺になると、バックミラーは共振を起こします。つまり、クルマの振動特性のピークを避けて、バックミラーの固有振動数を設計する必要があります。

 例えば、クルマがトラックに変わると、振動特性が変わりますからピークの周波数も変わります。バックミラーの設計も変わることになります。いろいろな車種の振動特性を把握して、それらのピーク周波数を避けるように設計すると、多くの車種で共振を起こさないバックミラーができます。

 固有振動数解析をしない場合、実験を繰り返して共振を起こさない設計パラメーターを見つけなければなりません。共振周波数を知るための固有振動数解析の意義がここにあります。

 さらに重要なポイントがあります。

 242件の破壊事象を調査した結果があります。破壊形態は約80%が「疲労」です。振動をするということは、繰り返し変形するということです。繰り返し変形するということは、疲労するということです。つまり、振動は構造物の疲労を引き起こす根本原因なのです。

 「揺れない設計」のために、ぜひ振動解析を身に付けてください。

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