駆動用バッテリーのモニタリング精度向上へ、不可欠なノイズフィルタリング電源システム解説(2/2 ページ)

» 2020年07月27日 06時00分 公開
前のページへ 1|2       

ノイズフィルタリングに外付け部品を使用しても計算通りにならない

 効率的でコスト最適化されたソリューションのために、必要な外付け部品を最小限に抑え、究極的には不要にしながらバッテリー管理システムのノイズをフィルタリングするというのが、TIが車載バッテリーモニターやバランサー製品で採用してきたやり方です。

 「BQ79616-Q1」では、A/Dコンバーターでの測定の前にフロントエンドフィルターを組み込み、サンプリングを行う前に高周波数ノイズを抑制するという方法でノイズ問題を解決します。内蔵フロントエンドフィルターにより、セル入力チャネルにシンプルで低電圧定格の差動RCフィルターを実装したシステムが可能になります。

 さらに、A/Dコンバーターでの変換後に測定精度を向上させるため、測定後のフィルターが内蔵されますが、さまざまな周波数フィルタリングのオプションから選択できます。A/Dコンバーターの後の内蔵デジタルローパスフィルターによって電圧を測定できるため、充電状態をより的確に計算できます。TIのモニターは、過熱状態を防ぐための温度監視や自動一時停止および再起動バランシングにより、Ta=80℃のときに最大240mAの自律的内部セルバランシングをサポートします。これにより、ECUのオーバーヘッドが削減され、より多くの処理を高速で実行できるようになります。

 全てのセルの測定結果の伝送を高速化するために、「BQ79616-Q1」は、デイジーチェーン構成での高速データ返送向けに通信プロトコルを最適化して、デバイス間の遅延をさらに削減できるようにしました。例えば、6個の「BQ79616」がデイジーチェーン方式で接続された96セルの400Vシステムでは、1Mbpsのボーレートにより2.5msでシステムに電圧測定値を返すことができ、この場合、チャネル間のセル電圧測定の時間差はわずか120msです。このように通信時間が短縮されることでECUに他の作業をする余裕ができ、障害検知時間全体の許容差が改善されます。

図2:TIの「BQ796XX」バッテリーモニターファミリーを用いたデイジーチェーン構成の例(クリックして拡大) 出典:TI

 双方向の絶縁型デイジーチェーンポートを内蔵することで、コンデンサー絶縁とトランス絶縁の両方に対応し、EVパワートレインシステムで一般的な集中または分散アーキテクチャ用に、効率が最も高い部品を使用できるようになります。さらに、絶縁型の差動デイジーチェーン通信インタフェースにより、ホストは1つのインタフェースでバッテリースタック全体と通信できます。デイジーチェーン通信インタフェースは、通信ラインが破損した場合のために、スタックのどちらのエンドからでもデバイスと通信できるリング型アーキテクチャに構成することが可能です。

長期的な費用対効果も

 外付けのノイズフィルタリング部品の必要性がなくなることで、測定の整合性と精度が向上し、チャネル間の測定が同期化され、全ての測定値がホストに返されるまでの時間が短縮されます。このプロセスからは、費用対効果の高い最適化されたソリューションも生まれ、自動車メーカーでは充電状態とSOH(State of Health、健全性状態)の目標値に対して誤差1%を達成できるに違いありません。

 このような技術の進歩が電動車市場に浸透するにつれ、費用対効果と信頼性がさらに高くなった製品を利用できるようになることで信頼性の向上が実現するでしょう。

→その他の「電源システム解説」の記事はこちら

前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.