デジタルデータを最大限に活用する、企業のDX推進を支えるPTCの取り組みPTC Virtual DX Forum Japan 2020(2/3 ページ)

» 2020年08月24日 13時00分 公開
[八木沢篤MONOist]

人とデジタルの融合において重要な役割を担うAR

 では、リモートワークができず、現場の最前線で働く人たちに対して、デジタル技術はどのような支援ができるのだろうか。

 桑原氏は、人とデジタルの融合について「DXにおいて大量のデジタルデータは役に立つものだが、人にダイレクトにアルファニューメリック(英数文字)だけのデジタルデータを伝えても意味を理解できない。仮に、ビッグデータ解析を用いて伝えるデータを絞り込んだとしても結果は同じで、作業の効率化などにつなげることは難しい。だが、ARであれば視覚的に物事を判断でき、デジタルデータをビジュアル化して目の前に表示させながら作業を行えるため、現場の最前線で働く人たちを支援できるのではないか」と述べ、人とデジタルの融合において、ARが欠かせないテクノロジーであることを強調した。

人とデジタルの融合において重要な役割を担うARテクノロジー 図3 人とデジタルの融合において重要な役割を担うARテクノロジー ※出典:PTCジャパン [クリックで拡大]

 人とデジタルの融合をARで支援することで、装置の操作やメンテナンス作業の手順などを可視化できる他、安全確保や法令順守、さらにはIoTを活用することでリアルタイムの情報を取得し、現場の状況に応じたシステムの制御や重要情報の視覚化などを行うこともできる。「このような観点から、AR活用によって、現場の最前線で働く人たちの業務を支援できると考えている」(桑原氏)。また、こうした業務支援の他、技術伝承においてもAR活用の期待は大きいとし、労働人口の変化(若手人材不足)やスキル不足の対策として有効であることを示した。

コロナ禍で業務を止めないためには

 続いて桑原氏は、コロナ禍において業務を止めないためにデジタルデータをどのように活用すべきか、短期、中期、長期の視点で解説した。

 まず、短期的にはARなどを活用した緊急対応、リモートコラボレーションの実現が有効であるという。これは単なる会話のコミュニケーションを実現するものではなく、ARによって現実世界に情報を付加した形での作業指示やデジタルモックアップを用いたデザインレビューを行うといったものだ。中期的には事業継続リスクを緩和するという観点から、ARを活用したトレーニングなどによって従業員の多能工化を進めていく、あるいはサプライチェーンの俊敏性を高めるといった取り組みが必要だという。そして、ニューノーマルな時代に向けた長期的な視点では、段階を経ながらデジタルデータを駆使して抜本的なプロセス変革に取り組む、DX戦略がキーとなる。

コロナ禍において業務を止めないためには 図4 コロナ禍において業務を止めないためには ※出典:PTCジャパン [クリックで拡大]

 「デジタルデータを企業全体で最大限活用し、DXを実現するには、システム連携を行うだけではなく、人や設備にもデジタルデータをつないでいくという考え方が必要だ。こうすることで初めて、DXを実現することができる」(桑原氏)

 そして、桑原氏はこれからの時代、ニューノーマルな時代におけるデジタル活用に不可欠な4つの柱として、「モビリティ」「フレキシビリティ」「コラボレーション」「リモート」の4つを挙げる。モビリティとは労働者の作業に対して機動力と弾力性を、フレキシビリティとはサプライチェーンマネジメントに柔軟性と革新性を、コラボレーションとは最前線で働く労働者に協業支援と接続性を、リモートとは遠隔から製品と工場の監視を実現することだという。

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