ヤマ発の三輪バイクLMWに300ccモデル、NIKENのステア機構も応用車両デザイン

ヤマハ発動機は2020年8月24日、前2輪/後1輪の三輪バイクLMW(Leaning Multi Wheel)シリーズの新モデル「TRICITY(トリシティ)300 ABS」を発表した。LMWの大型スポーツモデル「NIKEN(ナイケン)」の技術を応用しながら、TRICITYシリーズの上位機種として開発。同年9月30日に発売する。税込メーカー希望小売価格は95万7000円で、日本国内の年間販売台数は400台を計画している。

» 2020年08月25日 06時00分 公開
[齊藤由希MONOist]
新モデル「TRICITY(トリシティ)300 ABS」を発表した(クリックして拡大) 出典:ヤマハ発動機

 ヤマハ発動機は2020年8月24日、前2輪/後1輪の三輪バイクLMW(Leaning Multi Wheel)シリーズの新モデル「TRICITY(トリシティ)300 ABS」を発表した。

 LMWの大型スポーツモデル「NIKEN(ナイケン)」の技術を応用しながら、TRICITYシリーズの上位機種として開発。同年9月30日に発売する。税込メーカー希望小売価格は95万7000円で、日本国内の年間販売台数は400台を計画している。

 LMWシリーズでは通勤など日常の移動がメインのTRICITY125/155と、スポーツバイクのNIKENを展開してきた。新モデルのTRICITY300は、TRICITY125/155のユーザーのステップアップとツーリング需要を取り込む役割を担う。ターゲット層は、郊外に暮らしており50〜100kmの中長距離を通勤する40〜50代だという。

LMWシリーズでの位置付け(クリックして拡大) 出典:ヤマハ発動機
LMWの強み(クリックして拡大) 出典:ヤマハ発動機

 2019年におけるLMWシリーズの国内販売は、TRICITY125が1000台、TRICITY155が1200台、NIKENが250台だった。グローバルではTRICITYシリーズで5600台、NIKENが1500台だ。ヤマハ発動機は、TRICITY300の投入によって欧州ではシェア倍増を狙う。

 また、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大でパーソナルモビリティへの需要が高まっていることを踏まえ、グローバルでも販売拡大につなげる。LMWならではの安定感や安心を、二輪車に乗っておらず不安があるという人に向けて大きくアピールしていく考えだ。

 都市封鎖で販売や生産が停止すると需要が落ち込むため、予断を許さない状況ではあるが、二輪車市場は四輪車よりもCOVID-19の影響から需要が早く立ち直っている。また、“パーソナルモビリティ特需”とまではいかないとしつつも、需要は伸びているという。欧州ではコミューターが前年比でプラスとなった他、ASEANなど各地域で整備の入庫も落ち込んでいない。また、先進国ではレジャー用とが盛り上がっており、米国では前年比150〜170%の伸びを見せている。

両の自立をアシストする機構「スタンディングアシスト」を市販モデルでは初採用(クリックして拡大) 出典:ヤマハ発動機

 TRICITY300には、NIKENにも搭載したステアリング機構「LMW アッカーマン・ジオメトリ」を新たに専用設計して採用。フロントサスペンションとのバランスを最適化し、自然なハンドリングと接地感で快適な乗り心地を実現するとしている。

 また、車両の自立をアシストする機構「スタンディングアシスト」を市販モデルでは初採用した。LMW機構上部のアームに設置したディスクをスイッチ操作によってロックし、押し歩きや段差を越えるときの取り回しのよさを向上させる。スタンディングアシスト作動中もサスペンションの伸縮機能は維持する。既存モデルでのスタンディングアシストの搭載にはトレッドや重心、レイアウトの検討が必要になるため、スタンディングアシスト搭載モデルの今後の拡大については明らかにしなかった。

LMW アッカーマン・ジオメトリの仕組み(左)と旋回イメージ(右)(クリックして拡大) 出典:ヤマハ発動機

 TRICITY300に搭載する排気量300ccのエンジンは、欧州向けスポーツスクーター「XMAX300」に搭載した「BLUE CORE エンジン」をベースに仕様を最適化している。フレームは細径パイプと板材を組み合わせた新設計で、ステアリングパイプとフレームの接合部を箱型とすることで剛性を高めた。フレームへのエンジン搭載方法はリンク式とし、搭載位置を最適化するとともに走行中に伝わる振動を低減する。また、三輪のLMWに対応したABS(アンチロックブレーキシステム)とUBS(ユニファイドブレーキシステム)も搭載。制動時の車体の挙動を穏やかにする。

 TRICITYシリーズは当初、若年層の二輪車ユーザーを開拓する目的で投入。グローバルではTRICITY125の購入者の6〜7割が四輪車の運転免許保有者で、二輪車特有のユーザーとは違う層を取り込んだ。日本国内では、30代以上が通勤需要でボリュームゾーンとなっており、新規ユーザーが増えているという。

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