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» 2020年08月27日 14時00分 公開

こんな広告活動には要注意! 比較広告や「ステマ」に潜む法的リスクとは弁護士が解説!知財戦略のイロハ(5)(2/2 ページ)

[山本飛翔,MONOist]
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「ステルスマーケティング」は法的に問題?

 昨今、SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)やブログを通じて読者やフォロアーに多大な影響力を与える、インフルエンサーを起用したマーケティング手法をとる企業が散見されます。例えば、自社の新商品を宣伝するに当たり、インフルエンサーに自社の新商品をSNSで紹介してほしいと依頼する、などです。

 しかし、その際に意図せず、いわゆる「ステルスマーケティング」を行ってしまう可能性もあります。ステルスマーケティングとは、企業による何らかの宣伝/広報活動の一環であることを隠して、中立的な立場を装って、あるいは、商品と直接の利害関係がない「ファン」の感想を装って行う批評行為などを指します。ステルスマーケティングは、法的な規制に抵触する恐れだけでなく、企業のレピュテーション(評判)低下のリスクを伴います。現時点で、ステルスマーケティングに関する法的な定義は国内には存在しません。しかし、不正競争防止法や景品表示法への違反に問われる可能性はあります。

「口コミサイト」に関わる過去判例

 まずは、ステルスマーケティングが不正競争防止法に抵触し得る可能性を検討してみましょう。直接的にインフルエンサーマーケティングに関わる事案ではありませんが、ここでは外壁塗装リフォーム業者による「自演」が問題視された裁判例を取り上げたいと思います。

 裁判では、同社が管理、運営する口コミサイトで、自社サイトを「口コミランキング1位」と表示したことが不正競争防止法上の品質等誤認惹起行為に該当するとして、同業種の企業が訴訟を起こしました(大阪地判平成31年4月11日(平成29年(ワ)7764号))*5)。この裁判では、以下の判示が出されています(太字化は筆者が付記、「本件サイト」とは口コミサイトのこと)。

*5)この事案では争われていないものの、他社の評価を下げるべく何らかの働きかけを行った場合には、信用毀損行為に該当する恐れもあろう。

(前略)被告は、架空の投稿を相当数行うことによって、ランキング1位の表示を作出していたと推認するのが相当である。

(…中略…)以上からすると、本件サイトにおける被告がランキング1位であるという本件ランキング表示は、実際の口コミ件数及び内容に基づくものとの間にかい離があると認められる。

 そして、本件サイトが表示するようないわゆる口コミランキングは、投稿者の主観に基づくものではあるが、実際にサービスの提供を受けた不特定多数の施主等の意見が集積されるものである点で、需要者の業者選択に一定の影響を及ぼすものである。したがって、本件サイトにおけるランキングで1位と表示することは、需要者に対し、そのような不特定多数の施主等の意見を集約した結果として、その提供するサービスの質、内容が掲載業者の中で最も優良であると評価されたことを表示する点で、役務の質、内容の表示に当たる。そして、その表示が投稿の実態とかい離があるのであるから、本件ランキング表示は、被告の提供する「役務の質、内容…について誤認させるような表示」に当たると認めるのが相当である。

 この事例では被告側の企業が作成した架空の投稿が、結果的にサイトの口コミランキングを意図的に押し上げ、他社に比べて優れたものであるかのように見せかけたことが問題視されています。この点においては、一般消費者に依頼することでネット空間上にポジティブな「口コミ」を増やそうとするステルスマーケティングも同様の理由で、不正競争防止法に抵触しかねないことには留意すべきでしょう。

 他方、景品表示法については、消費者庁が「インターネット消費者取引に係る広告表示に関する景品表示法上の問題点及び留意事項」 の中で、「『口コミ』情報が、当該事業者の商品・サービスの内容又は取引条件について、実際のもの又は競争事業者に係るものよりも著しく優良又は有利であると一般消費者に誤認されるものである場合には、景品表示法の不当表示として問題となる」と言及しています。ステルスマーケティングもこうした一事例になり得ると考えられるでしょう。

現時点で直接規制する法律はないが…

 ただし、不正競争防止法も景品表示法も、ステルスマーケティングの問題の本質である「広告主がインフルエンサーに報酬を払って、自社のプロダクト/サービスをSNSなどでの掲載を依頼しているにもかかわらず、それらの者が報酬を受けた事実を掲載していない」という点を問題としたものではありません。この問題については、日本国内で直接規制する法律などはないものと思われますが、欧米では一定の規制が施されています*6)*7)。グローバルにプロモーション活動を行う場合に留意すべきなのはもちろんですが、今後日本においても同様の規制が設けられる可能性も否定できません。意図せずステルスマーケティングを行わないよう、留意しておく必要があるでしょう。

*6)米国では、連邦取引委員会法第5条において、「不公正な競争手法」と「欺瞞的な行為」は違法であると規定され、「金銭を受け取っていながら、公平な消費者や専門家の独立した意見であるかのように装って推奨表現をすること」は「欺瞞的な行為」にあたるとされている。また、連邦取引委員会法の執行に関する「広告における推奨及び証言の利用に関する指針」は、商品又はサービスの推奨者とマーケターや広告主との間の重大な関係の有無や金銭授受の有無などを開示する義務を関係者に課し、また、「欺瞞(ぎまん)的な広告形式に関する法執行指針」は、「金銭を受け取っていながら、公平な消費者や専門家の独立した意見であるかのように装って推奨表現をすること」が違法であるとしている。

*7)EUの不公正取引行為指令は「不公正な取引行為は禁止されるものとする」として「誤認惹起的行為」や「誤認惹起的不作為」は不公正な取引方法に該当するとしている。そして、「商品の販売を促進するためにメディアの論説記事を利用し、かつ、このことを消費者が明確に認識できるように記事内容において又は画像若しくは音声により示さないこと」は「誤認惹起的不作為」に当たると定めている。

筆者プロフィール

山本 飛翔(やまもと つばさ)

2014年3月 東京大学大学院法学政治学研究科法曹養成専攻修了

2014年9月 司法試験合格(司法修習68期)

2016年1月 中村合同特許法律事務所入所

2018年8月 一般社団法人日本ストリートサッカー協会理事

2019年〜  特許庁・経済産業省「オープンイノベーションを促進するための支援人材育成及び契約ガイドラインに関する調査研究」WG・事務局

2019年〜  神奈川県アクセラレーションプログラム「KSAP」メンター

2020年2月 東京都アクセラレーションプログラム「NEXs Tokyo」知財戦略講師

2020年3月 「スタートアップの知財戦略」出版(単著)

2020年3月 特許庁主催「第1回IP BASE AWARD」知財専門家部門奨励賞受賞


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