Excelによる計画情報管理から脱し「デジタルサプライチェーンツイン」を目指せ製造業DXの鍵−デジタルサプライチェーン推進の勘所(4)(3/3 ページ)

» 2020年09月07日 10時00分 公開
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SCM全体でデータを共有、活用、つなぐためには

 以上、連載第3回と合わせて「AIを活用した需要予測」「グローバルPSI計画」「流通PSI計画」「サプライヤー計画連携」という4つの事例を紹介した。

 繰り返しとなるが、SCMは需要と供給のギャップのコントロール(=変化対応)であり、そのためには、需要側と供給側の双方向からの“データ”を早く、確実に、相互に伝えることが重要であり、業務領域を超えてデータをつなぎ、E2Eでサプライチェーンを可視化、共有することが必須となる。個別領域だけに特化してデジタルツール、技術を活用し業務の高度化、効率化を図るだけではSCM全体での高度化にはならない。

 ここで、SCMにおけるデジタルモデルを図5に示す。筆者は、SCM全体でデータを共有、活用、つなぐためには、データのデジタル化は大きな武器であり、「個別領域の情報のデジタルツイン化」ならびに「E2Eのサプライチェーンモデルで情報をつなぐことによるデジタルサプライチェーンツイン」を実現することが必要であると考えている。

図5 図5 SCMにおけるデジタルサプライチェーンツインモデル(クリックで拡大)

 デジタルツインとは、デジタル空間上に物理空間をリアルタイムに再現する概念であり、製造業のデジタル化において注目されている。例えば、IoT(モノのインターネット)関連技術を製造工程に活用し、デジタル空間上に物理空間(ここでは、製造工程を指す)をリアルタイムに再現、各製造設備や製品の状態をリアルタイムに確認、コントロールするといった取り組みである。こういった「個別領域の情報のデジタルツイン化」に加えて、「サプライチェーン全体でデジタルツイン」を実現し、サプライチェーン可視化、分析、計画、意思決定につなげる。

 ただし、サプライチェーンは複雑化しており、ただ単純に各領域のデータを結合するだけでは、デジタル空間にサプライチェーンを再現することはできない。そこで必要になるのが、現実のサプライチェーン全体構造をデジタル上に再現するためのサプライチェーンモデルである。サプライチェーンモデルは、実際のサプライチェーンの物流、商流、情報流を定義したモデルであり、デジタルサプライチェーンの肝になるものだ。



 そこで次回は、デジタルサプライチェーンツインを実現するためのE2Eサプライチェーンモデルおよびデジタル基盤(プラットフォーム)とは何かを紹介する。

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筆者プロフィール

宍戸徹哉(ししど てつや) クニエ シニアマネージャー

大手国内システムインテグレーターにてSCM関連システム構築に従事し現職。ハイテク・エレクトロニクス、自動車、ヘルスケア、非鉄金属、建設、化学、製薬業界など、サプライチェーン分野のコンサルティングに従事。

主に、SCM/S&OP業務改革、組織改革、ITを活用した改革構想および導入を担当している。

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筆者プロフィール

笹川亮平(ささかわ りょうへい) クニエ マネージングディレクター

ハイテク機器、自動車など組み立て系、プロセス系製造業の企画構想から定着化まで生産管理、在庫管理、需給管理を中心としたSCM/S&OP業務改革、ERP/SCP構想策定および導入コンサルティングに従事している。

編著に「“数"の管理から“利益"の管理へ S&OPで儲かるSCMを創る!」がある。

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