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» 2020年09月08日 11時00分 公開

PTC Virtual DX Forum Japan 2020:住友ゴム工業が取り組むスマート工場化、データ活用における4つの提言

PTCジャパンは2020年8月20日〜9月25日までの期間、オンラインイベント「PTC Virtual DX Forum Japan 2020」を開催。その特別講演として住友ゴム工業 製造IoT推進室 室長の山田清樹氏と同推進室 金子秀一氏が「ThingWorxを活用したIoT基盤の構築および製造現場におけるデータ分析の事例」をテーマに同社のスマートファクトリー化への取り組みを紹介した。

[長町基,MONOist]

 PTCジャパンは2020年8月20日〜9月25日までの期間、オンラインイベント「PTC Virtual DX Forum Japan 2020」を開催。その特別講演として住友ゴム工業 製造IoT推進室 室長の山田清樹氏と同推進室 金子秀一氏が「ThingWorxを活用したIoT基盤の構築および製造現場におけるデータ分析の事例」をテーマに同社のスマートファクトリー化への取り組みを紹介した。

ビッグデータ分析の仕組み構築と、データドリブン文化の醸成

 住友ゴム工業は1913年に自動車用タイヤの国産第一号を生産以来、日本のモータリゼーションの発展に貢献してきた。現在、同グループではこのタイヤ事業の他、ゴルフ、テニス用品などのスポーツ事業、プリンタ用部品などの産業品事業の3つが基幹事業となっている。この内、タイヤ事業の国内拠点は白河工場(福島県)、名古屋工場(愛知県)、泉大津工場(大阪府)、宮崎工場(宮崎県)を構え、海外では中国をはじめインドネシア、タイ、ブラジル、南アフリカ、トルコ、米国など8拠点を展開している。

photo オンラインで講演を行った住友ゴム工業 製造IoT推進室 室長の山田清樹氏(右)と同推進室 金子秀一氏(左) 出典:PTC

 住友ゴム工業の国内工場は歴史が古く、従来は各工場間での競争により、改善を進めてきた。そのため工場によって生産設備の仕様が異なり、独自の設備を構えるという問題が出てきた。また、似たような改善を各工場がそれぞれでリソースを投入しながら重複して行い、開発人員や投資のムダが発生していた。そこで、IoT(モノのインターネット)技術の発展に伴い、改善のスピードを速めるため、同社は2017年4月に製造IoT推進室を設立し、さまざまな取り組みを開始した。

 同推進室のミッションの1つが、ビッグデータを活用できる仕組みを構築し、生産工程の効率向上を実現することである。データを収集し、それを解析・分析し現場にフィードバックするというループの構築を目指す。ビッグデータについては頻度、種類を増やし、分析についてはさらに高度な分析手法を導入する。さらに、フィードバックについては、現在は人に向けたものだけだが「将来はオンラインで直接設備に送り制御を最適化するフィードバックも想定している」(山田氏)という。

 もう1つのミッションは、社内にデータドリブン文化の醸成を行うことだ。これまでの熟練技術者の勘やノウハウに頼ってきたものから、現場の全ての人がデータに基づく意思決定(データドリブン)をできるようにして、適切なアクションを素早く実施する組織を目指す。これにより「生産性の改善、品質の向上、予知保全に代表される設備の安定稼働、省エネの4つの領域において発生したさまざまなロスを分析・改善する。これにより高品質、高効率なタイヤづくりを目指す。これをある限られた人だけで行うのではなく誰でも実現できるようにするのが取り組みのポイントだ」と山田氏は述べている。

 将来的には、工場の全ての情報を統合し制御の指示などをフィードバックする「集中コントロールセンター」を構築することも構想にあるという。工場から上がってきたデータを同センターで分析し、結果を工場に戻してその効果を発揮する。ただ、スピード感の必要な改善の場合は、各工場でクローズされた領域での開発も行い「それぞれの良い点を両立させることが重要だ」(山田氏)。現在は集中コントロールセンターの構想の実現に向けて、名古屋工場をモデルにプラットフォームの構築を行っている。名古屋工場でミニセンターを構築し、それを他工場に拡大することで最終的に全社展開を図る計画だ。その後、2025年までに世界12拠拠点への展開を完了することを目標としている。

photo 集中コントロールセンター構想のイメージ(クリックで拡大)出典:住友ゴム工業

データ活用における4つの提言

 これまでの取り組みでは、品質向上や不良削減分野において、データ収集基盤の構築、AI(人工知能)とBI(Business Intelligence)を活用した分析などを行っているという。また、生産性改善分野では、人の動きのデータ取得、スキルの見える化を実現した。予知保全・効率化の観点からは異常検知、設備情報のデータベース構築を行っているという。エネルギーロス低減に関連しては、蒸気の見える化、エネルギー使用状態の監視などを行っている。

 目標値の設定については、コントロールしやすい労務費、動力費、修繕費、仕損費を対象とした。それまで予想していたロス金額のある決まった指標を、IoTやAIを活用することで、削減することを目指している。投資採算については、PoC(概念実証)における投資の考え方の改善をスタート。投資の回収よりも問題の重要性を認識し、効果予測を行う。一方で、実装時における投資の考え方は、PoCの結果よりも採算を計算することで承認を得てきたという。

 データ収集についてはPTCのIoTプラットフォーム「ThingWorx」を活用しデータ収集活用基盤を構築したという。ThingWorxを活用するメリットは「多様な設備と簡単に接続ができる」「リアルタイムにデータを閲覧できる」「アプリケーションを他工場に素早く展開できる」の3つがあるとし「実際に、データ活用までのスピードが大きく向上した」(金子氏)という。また「収集はしたものの活用できていないデータ項目が多く存在する他、今後のIoTプロジェクトの推進でデータ項目はさらに増える見込みだ。従来の人手中心の手法では到底活用できなかったデータが、データ基盤によって効率的に活用できると考えている」と金子氏は考えを述べている。

 収集したデータの分析については、従来手法は各工場での人手による分析が中心で、限られた範囲だけが対象となっていた。また、分析が単一の視点になることが多く、技術者のスキルに依存していた。さらに、管理項目が増えて、人が全てを把握するのが困難となっている。こうした課題を解決し、全体を見て、スキルに依存せずに素早く分析から改善へとつなげていくことが必要となってきた。そこでAI(機械学習で新たな知見を得る。ビッグデータの分析を高速化、データ分析人材による活用)とBI(ビジュアル・アナリティクスの活用、既存データの分析高速化、現場を含め全ての人による活用)の両面で工場の改善を推進できる環境づくりを行う。

 このうちBIの取り組みについてはセルフBIツールの「Tableau」を活用したデータドリブン文化を醸成し、現状のさまざまな課題とのギャップを埋めるために、現場が自らデータを探索・改善できる組織を目指している。金子氏は「AIを考える前にBIでできることはたくさんある」「データ収集・加工こそが最も大変であり、そこにリソースを使うべきである」「AIでできた結果の担保(内容・精度)は分析側の責務だ。『何か結果出た』ではダメ」「現場で改善に活用してもらえないと意味がない。ストーリーとして伝えられるように」というデータ分析における4つの提言を行っている。

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