インタビュー
» 2020年09月09日 14時00分 公開

製造マネジメント インタビュー:「社内下請け」から競争力の源泉に! これからの調達購買部門が目指すべき姿 (1/2)

国内では「社内下請け部門」と見なされがちな調達購買部門。しかし、海外では企業の競争力を高める、非常に重要な部門だと認識されている。彼らを競争力の源泉にするには何が必要なのか。クラウド型見積もり査定システムを手掛ける気鋭のベンチャー企業、A1A代表取締役に話を聞いた。

[池谷翼,MONOist]

 製造業において、製品売り上げ額の中で多くの割合を占めるのが、製品に使われている部品や原材料などの購入費だ。製品生産のコストダウンを図るためには、サプライヤーと価格交渉を行ったり、より低価格で高品質なサプライヤーを選定してコスト低減を図る取り組みが欠かせない。こうした重要な役割を担う部署が調達購買部門である。

 ただ、国内の製造業界では一部の業種を除いて、調達購買部門は単なる「社内下請け部門」と見なされることも少なくない。このため調達購買部門の重要性や、彼らが抱える課題が社内の経営層に適切に理解されないこともしばしばだ。

 調達購買部門が抱える課題とは何か。また、それらを解決するには何が必要か。製造業向けのクラウド型見積もり査定システム「RFQクラウド」などを事業展開するベンチャー企業、A1A(エーワンエー) 代表取締役の松原脩平氏に話を聞いた。

A1A代表取締役の松原脩平氏 A1A代表取締役の松原脩平氏

同じ製品なのに購入金額がバラバラ

MONOist まずはA1Aの事業内容と沿革を教えてください。

松原脩平氏(以下、松原氏) 現在のA1Aの主要製品は「RFQクラウド」だ。クラウド上に統一フォーマットの見積書を用意して、取引先の企業に直接記入してもらうサービスとなっている。こうして作成した見積書はデータベース化して蓄積することが可能で、調達購買部門内での購買データの横つなぎや、社内全体でのデータ共有が容易になる。

調達購買部門の悩みを解決するクラウド型見積もりシステム「RFQクラウド」[クリックして拡大]出典:A1A

 従来、調達購買部門ではFAXやメール、PDFなどさまざまなフォーマットの見積書をサプライヤーから受け取っていた。RFQクラウドを使えば、調達購買の担当者が見積もり用の入力フォームを自分で用意できるので、フォーマットは統一化されるし、過去の見積もり記録をひとまとめにして保管できる。

 A1Aを設立したのは2018年6月だ。製造業の購買周りの課題を解決したいという思いから創業を決めた。もともと私は新卒でキーエンスに入社し、担当エリアの静岡県浜松市で、自動車関連メーカーを相手に工場の生産ラインに設置する画像検査用センサーを販売していた。その中で、同じグループ系列の企業間でさえ、製品価格の情報が共有されておらず、各企業の購買担当者が同じ製品を異なる価格で買うことに気付いた。こうした事態は、見積もり記録をデータ化して共有する仕組みがあれば防げるはずだ。また、製造業は原価率が高く営業利益率が低いとされるが、こうした仕組みづくりを行えば、さらなる利益率向上を目指す余地があるのではないか、と考えた。

国内では軽視され続けてきた調達購買部門

MONOist そもそも、調達購買部門は社内でどのような役割を果たすことが期待されるのでしょうか。

松原氏 多岐にわたるが、根本は製品品質の維持に欠かせないQCT(Quality、Cost、Time)と呼ばれる要素の調整と最適化を通じて、企業の競争力の源泉を確保することにある。調達購買部門は企業を代表して製品を買うという、購買意思決定の最後の砦として重視されるべきだ。実際に海外の製造業では、調達購買部門のリーダーであるCPO(最高購買責任者)は重要なポジションであると広く認知されている。実際、経営者にもCPO経験者は多い。Apple CEOのティム・クック氏はその一例だ。

 翻って国内製造業においては、現状、調達購買部門は単なる「社内下請け部門」になってしまっている。経営層に調達経験者がいない、そもそも調達購買部門が存在しないので総務部が購買業務を行うという企業もある。競争力の源泉であることが、十分に理解されているとは言えない状況に思える。

 こうした状況になっているのは、これまで日本のモノづくり産業が世界的に見て強力なポジションを確保できていたことが一因だ。こうした環境下では、企業はコストマネジメントよりも「いいモノづくり」を重視するので、優秀な人材はどんどん設計や生産技術に配属され、調達購買業務には関わらなくなる。調達業務は「指示通り、納期通りに購入すればよい」「発注書だけ処理すればよい」仕事だと見られがちだった。国内ではCPOという役職が存在すること自体、あまり知られていないだろう。

 反対に、海外の製造業者はモノづくり、つまり製品品質や生産技術で日本に勝てない状況が続いていた。そこで注力したのが調達購買業務だ。海外の調達システムはリバースオークション型で、「こういう物を買いたい」と要望を提示して提案を募り、一番良い条件の企業を選定するという方式をとる。そして選定した企業は単なる取引先というより、自社の「パートナー」と見なして擦り合わせをしていく文化が強い。これによって、部品や加工方法に関する、より良い提案を受け取るという方向性に活路を見いだした。そのためCPOなどの役職もできたわけだ。

 補足しておくと、カメラや家電といった電機系のメーカーなど、調達部門の地位が高い業界は国内にもある。当社のRFQクラウドのような調達システムを内製して導入している企業も多い。これらの業界では、安価な製品を生産する海外企業との競争が特に激しいからだ。

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