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» 2020年09月14日 06時30分 公開

ホンダが挑む高効率材料開発、マテリアルズインフォマティクスの活用に向けてAnsys INNOVATION CONFERENCE 2020(2/2 ページ)

[八木沢篤,MONOist]
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材料データベースの管理における問題点

 そして、これらの課題を踏まえ、材料データベースの管理の観点からいくつかの問題点が浮き彫りになったという。

 まず問題点として考えられるのが、入力テンプレートの頻繁な変更だ。材料データや製造技術は日々進化し、管理パラメーターや評価項目も頻繁に更新されるため、入力テンプレートの変更の必要性が生じることが考えられる。また、大量のデータ修正についても検討する必要がある。「不特定多数の人間がデータを入力していくと表現のバラツキが生じ、検索性の悪化が懸念される」(伊藤氏)。さらに、材料分類/階層構造の変更についての問題として、データが増加するとフォルダによる階層管理が行われるようになり、管理が煩雑化する懸念がある。データの出力と活用においては、蓄積されたデータを有効活用するにはデータを横ぐしで比較したり、サプライヤー同士のバラツキを比較したりといった自由な出力が求められる。「このようなことから、材料データベースには、データの入出力の自由度と修正に対する柔軟性が求められる」と伊藤氏は指摘する。

材料データベースの管理における問題点 材料データベースの管理における問題点 ※出典:ホンダ [クリックで拡大]

「GRANTA MI」の導入、運用に向けた取り組み

 同社では、このように材料データベースの運用管理の側面から事前に問題点を洗い出した上で、複数の材料データベースツールを比較検討。その結果、前述の問題点に対して柔軟な対応が可能な他、レコード間のリンクの自動生成、複数レコードに含まれるデータを基にしたグラフ作成などにも対応する、アンシスの材料データベース「ANSYS GRANTA MI(Material Intelligence)」(以下、GRANTA MI)を採用した。

 GRANTA MIの本格活用に向け、ユーザーの専門性や立場を考慮したデータベース構造を採用。また、ユーザー管理の負荷軽減とデータの信頼性を両立させるべく、ユーザーに対して役割と権限を付与するアクセス制御を実施した。さらに入力テンプレートに関してもデータの量と質を確保するために、各項目への入力支援機能を付加し、作業の効率化を図った。そして、これらの取り組みとともに、社内向けセミナーを開催することで、材料データベースの導入/活用効果についての啓蒙(けいもう)を行ったり、材料担当者とデータベース担当者との相互理解を深めるためのコミュニケーション促進を図ったりなど、運用に向けたさまざまな取り組みを行ったという。

「GRANTA MI」を用いたマテリアルズインフォマティクスの事例

 最後に、伊藤氏はGRANTA MIを用いたマテリアルズインフォマティクスの活用事例について紹介した。

 マテリアルズインフォマティクスとは、従来のトライ&エラーによる材料開発ではなく、材料データと機械学習などによる分析を組み合わせ、効率的に材料を開発していくアプローチだ。その一方、マテリアルズインフォマティクスを実践する上で考えられる課題としては、「データの量が足りないこと」「データの質が不十分であること」が挙げられ、これらを解消するために、データを収集したり、変換したり、整理したりといった“データクレンジング”の作業に多大な時間と労力を要することになる。「このようなことからも分かる通り、マテリアルズインフォマティクスを活用する上でも材料データベースに、データをきちんと蓄積していくことが重要となる」(伊藤氏)。

 実際、同社では化成材開発において、少量の試験データから要求特性を満たす材料配合をマテリアルズインフォマティクスによって抽出するという実証を行った。

マテリアルズインフォマティクスの活用事例(1)マテリアルズインフォマティクスの活用事例(2) マテリアルズインフォマティクスの活用事例について ※出典:ホンダ [クリックで拡大]

 通常、実機に求められる特性が得られる材料配合を導き出すには、非常に多くの実験が必要となるが、これまでの実験データの蓄積と機械学習の活用によって、効率的に候補材料を抽出することに成功。マテリアルズインフォマティクスによる特性予測精度は非常に高く、「従来の経験則によるトライ&エラーと比べ、試作する材料の数、試験の回数が約半分となり、開発期間を大幅に短縮できた」と、伊藤氏は材料開発においてマテリアルズインフォマティクスの活用が有効であることを示した。

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