リアルとデジタルの連携を間近で体験、スマート工場化支援の施設がオープンFAニュース

Team Cross FAは2020年9月10日、展示物を通じて製造業のDXを体験できる施設「SMALABO TOKYO」をオープンした。各種シミュレーション技術と、AGVや産業ロボットシステムを連携させた生産ラインのデモ「DX型ロボットジョブショップ」などを見学できる。

» 2020年09月14日 14時00分 公開
[池谷翼MONOist]

 製造業のDX(デジタルトランスフォーメーション)支援を目的とするコンソーシアム「Team Cross FA」は2020年9月10日、展示物を通じて製造業のDXを体験できるというコンセプトの施設「SMALABO(スマラボ) TOKYO」をオープンした。各種シミュレーション技術とAGV(無人搬送車)や産業ロボットシステムを連携させた生産ラインのデモを見学できる「DX型ロボットジョブショップ」などを設ける。【訂正あり】

【訂正】初出時に「3Dピック&治具レス組み立てシステム」との表記がありましたが、正しくは「DX型ロボットジョブショップ」の誤りでした。本文は修正済みです。

 Team Cross FAは2019年8月に、FAプロダクツの他、ロボコムやオフィス エフエイ・コム、日本サポートシステム、ロボコム・アンド・エフエイコム、INDUSTRIAL-X SECURITY、SaaSisなど7社が幹事企業を務める企業コンソーシアムとして設立した。FAプロダクツが強みを持つ生産シミュレーション技術の他、幹事企業のコア技術などを連携させることで国内製造業のDXを一気通貫で支援する各種活動を実施している。

Team Cross FAの組織概略図[クリックして拡大]出典:Team Cross FA Team Cross FAの組織概略図[クリックして拡大]出典:Team Cross FA

 SMALABO TOKYOを訪れた来場者は産業用ロボットや各種デジタル技術を組み合わせた生産ラインを模擬した展示コーナーを実際に見学できる。展示コーナーの内容は、AGVと産業用ロボットが連携するDX型ロボットジョブショップのほか、ライン上に乗せた弁当容器に産業用ロボットが唐揚げをピッキングして盛り付けていく「お弁当盛り付けロボットシステム」、AI(人工知能)搭載のロボットアームが千切りキャベツを適度な力でつかみ上げるという、東京大学の松尾研究室が開発に協力した「AIピッキングシステム」の3種類など。

 中でも一番の目玉はDX型ロボットジョブショップだ。デモ展示ではAGVが筒型形状のワークを産業用ロボットの作業スペースまで運搬し、それをピッキングしたロボットが持ち上げて回転などの動作を加えた後、ピッキングしたのとは異なる位置からAGVに戻すまでの一連の動作を見学できる。

AGVが産業用ロボットの元までワークを運搬するデモ展示が見学できる[クリックして拡大] AGVが産業用ロボットの元までワークを運搬するデモ展示が見学できる[クリックして拡大]

 デモの裏側では、現実のロボットをバーチャル上でのシミュレーション内容などとリンクさせるための仕組みが導入されている。具体的にはロボットの作業シミュレーションやティーチング(教示)作業、機器調整などをデジタル基盤上でバーチャルに行う「動作Simulation」と、生産ラインから収集した実稼働データなどをAIが学習して生産ラインの最適化を目指すための「生産Simulation+AI」といったシミュレーション技術に対応している。見学者はこうしたデジタル技術を説明員による解説を聞きながら実際に見ることで、工場生産ラインのDXに対する理解を深められるという。

 また、DX型ロボットジョブショップは、従来主流だったコンベヤー搬送型の生産ラインではなく、マスカスタマイズ生産による生産変動に合わせて生産セルをフレキシブルに連携させられる仕組みを採用している。これによってDXだけでなく、量産化とカスタマイズを両立させるための仕組みづくりなどFAに関する最新動向も視覚的に理解しやすい構成となっている。

DX型ロボットジョブショップを通じて体験できるシミュレーション要素などをまとめた概要図[クリックして拡大]出典:Team Cross FA DX型ロボットジョブショップを通じて体験できるシミュレーション要素などをまとめた概要図[クリックして拡大]出典:Team Cross FA
Team Cross FAの天野眞也氏 Team Cross FAの天野眞也氏

 製造業全体に対するSMALABO TOKYOの設立の意義について、Team Cross FAのプロデュース統括を務める天野眞也氏は「国内製造業者は固有の問題を抱えている。設備投資のリソースが新規設備投資に向かわないため生産力の向上が難しく、また、慢性的な人手不足や海外製品との価格競争、リードタイム短縮化の要求など課題は多い。これらを解決できる可能性があるのがDXだ。しかし、周知の通り、国内でDXは十分に普及しているとは言い難い。要因の1つに、現実の設備と上位側のシステムをどのように連携させればよいか、現場で収集したデータを経営指標にどのように生かすべきかを具体的にイメージしづらいということがある。これを分かりやすく説明できるような施設が必要だと考えて、SMALABO TOKYOを設立した」と説明した。

Team Cross FAの貴田義和氏 Team Cross FAの貴田義和氏

 なお、SMALABO TOKYOが想定する来場者像について、Team Cross FA ビジネス統括の貴田義和氏は「変化を恐れずに一歩を踏み出そうとする、自社のDXを加速させるための技術やアイデアに出会いたいと考えるようなイノベーター気質の企業担当者にまずは来てほしい。こうした意味で、あらゆる人に開かれた施設というよりは、ある程度限定した来場者像を描いているので、想定来場者数などを現段階で具体的に予測しようとは考えていない」と語っている。

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