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» 2020年09月17日 11時00分 公開

イノベーションのレシピ:コロナ禍を契機にデジタルシフトできるのか、日本に期待されるイノベーション像 (1/3)

NEDOは2020年7月31日、「2020年度NEDO『TSC Foresight』オンラインセミナー」を開催。同セミナーでは、NEDO TSC(技術戦略研究センター) デジタルイノベーションユニット長の伊藤智氏が「コロナ禍後の社会変化と期待されるイノベーション像」をテーマに講演を行った。

[長町基,MONOist]

 NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)は2020年7月31日、「2020年度NEDO『TSC Foresight』オンラインセミナー」を開催。同セミナーでは、NEDO TSC(技術戦略研究センター) デジタルイノベーションユニット長の伊藤智氏が「コロナ禍後の社会変化と期待されるイノベーション像」をテーマに講演を行った。

NEDOの伊藤智氏 NEDOの伊藤智氏

 TSCは、NEDOにおいて、調査・研究を通じ、産業技術やエネルギー・環境技術分野の技術戦略の策定およびこれに基づくプロジェクトの企画に取り組む研究機関である。国内外の技術、産業、政策動向について多様な視点から分析を実施し、技術戦略の提言を行うとともにその実現に取り組んでいる。

 TSCでは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大を受けて、「今何が起こっているのか」「コロナ禍後の社会はどうなるか」、さらには「コロナ禍後の社会に期待されるイノベーション像は何か」などについて特別チームを設置して分析を行い、「TSC Foresight短信レポート『コロナ禍後の社会変化と期待されるイノベーション像』」として2020年6月に公表している※)。セミナーでは同レポートの内容を紹介した。

※)NEDO:短信レポート「コロナ禍後の社会変化と期待されるイノベーション像」を公表

コロナ禍によりトリプルショックが発生

 今回のコロナ禍では、これまで当たり前だと思われてきた常識が大きく変化し、新たな生活様式や従来にないビジネス、これまでに気付かなかった新しい価値観が登場してきた。ここで注目すべき変化は、コロナ禍により気付き、気付かされたことが、今後どのように社会を変えていくかであり、この社会変化を捉えて、イノベーション像を描くことが重要となる。

 現在、起こっていることを「医療・感染予防」「行政」「教育・生活」「仕事・産業」の大まかに分けて4つの視点でまとめると、国内、海外ともに大きな変化がみられる。今後の想定されるシナリオについても多くの調査会社が示しており、こうした各種シナリオなども踏まえて、今後期待されるコロナ禍を経験した人々が将来に期待する社会像と、その際に必要とされるイノベーション像を予測し、レポートに掲載したという。

コロナ禍がもたらした国内の社会変化コロナ禍がもたらした海外の社会変化 コロナ禍がもたらした国内(左)と海外(右)の社会変化(クリックで拡大) 出典:NEDO

 コロナ禍により、世界各国で国境の閉鎖や、ヒト、モノの移動が制限されたことで「需要ショック」「供給ショック」「金融ショック」のトリプルショックが発生した。反グローバル化や国内回帰の意識が強まり、大量生産、大量消費からの脱却が叫ばれ始めた。それに伴って、サステイナビリティ(持続可能性)意識も高まり、ベーシックインカムや、交通手段、病院の国営化など公共システムの重要性が再認識されている。

コロナ禍後に起こる社会変化コロナ禍後に起こる社会変化 コロナ禍後に起こる社会変化。各国の経済・社会運営の脆弱性を露呈させ(左)、普遍的価値の精査・新しい価値の創造が起こる(右)(クリックで拡大) 出典:NEDO

 このように、新しい社会像、社会的価値観が求められており、その社会変化をレポートでは(1)デジタルシフト、(2)政治体制や国際情勢変化、(3)産業構造の変化、(4)集中型から分散型への変化、(5)人々の行動変化、(6)環境問題への意識変化の6つに大別して示した。

 それぞれをみると、(1)のデジタルシフトではAI(人工知能)、ロボット、キャッシュレスなどこれまで進んできたデジタル化がさらに加速している。一方でデジタル化できない体験や共感、誰もまねができない技術や感性に価値が高まる動きがみられる。

 (2)の政治体制や国際情勢変化では、多くの国が景気回復のための財政政策や雇用を守る政策を打ち出した。また、COVID-19への感染や濃厚接触を追跡する動きに対し、プライバシーとデータ活用のバランスを取る仕組みを各国が模索している。(3)の産業構造の変化では、持続可能社会の実現や自給型サプライチェーンの構築など産業構造の大きな変化が予想される。

デジタルシフト政治体制や国際情勢変化産業構造の変化 左から、(1)デジタルシフト、(2)政治体制や国際情勢変化、(3)産業構造の変化(クリックで拡大) 出典:NEDO

 (4)の中型から分散型への変化では、集まることの自由が奪われ、回復後も意識や社会の在り方に影響が残るとみられる。分散型の利点が強調され、都市への一極集中から、分散ネットワーク型の変化があると予想される。(5)の人々の行動変化では、都市封鎖期から収束・対応期を経て“ニューノーマル(新常態)”の形成時期が来た中で、デジタル技術の普及により、新しい価値観、生き方が模索されている。そして(6)の環境問題への意識変化では、欧米においては景気刺激策と環境問題を結び付けたグリーンリカバリーの動きがでている。環境問題の重要性が再認識されてきた。

集中型から分散型への変化人々の行動変化環境問題への意識変化 左から、(4)集中型から分散型への変化、(5)人々の行動変化、(6)環境問題への意識変化(クリックで拡大) 出典:NEDO

 コロナ禍によりこれまでとは違った価値観が必要となり、社会が大きく変化するだけでなく、医療・感染予防、行政、教育・家庭、仕事・産業という4つの視点に加えて、都市についても変化がみられる。いずれでも、リモート化、オンライン化などのデジタルシフトがキーワードとなり、都市全体がデジタル化対応することが求められる。各現場での状況をみると、医療関係では、限られた医療資源を当面コロナ対応に重点をおき集約化が必要となる。AIやセンシング技術を用いた感染対策も始まっている。仕事・産業についてもリモート化、オンライン化、テレワークも進んでいる。

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