特集:IoTがもたらす製造業の革新〜進化する製品、サービス、工場のかたち〜
連載
» 2020年09月23日 11時00分 公開

顧客起点でデザインするサービスイノベーション(3):アジャイル型製品開発の成功要因と落とし穴 (1/3)

製造業がサービス化を実現するためのポイントとしてサービスイノベーションの手法や事例について紹介する本連載だが、第3回となる今回はPoC(概念実証)など、ソリューション開発におけるアジャイル型の取り組みや、将来の実務適用を加味したアーキテクチャデザインについて、その有効性と方法論について紹介する。

[柴田健一、井上拓/フューチャー,MONOist]

 製造業を取り巻く環境で不確実性が増す中、持続可能性を確保するために「モノ」としてのビジネスに加え、サービスビジネスを組み合わせることが重要になってきている。本連載では、製造業におけるサービス化を実現するための示唆を、製造業の読者に与えることを目的として、顧客起点でデザインするサービスイノベーションの手法、事例、勘所について全4回の連載記事でお伝えしている。

 第1回では、製造業を取り巻く環境の変化とサービスイノベーションの重要性について、第2回では顧客理解のステップについて紹介したが、第3回となる今回は、プロトタイピング開発について紹介する。モックアップなどを用いたPoC(Proof of Concept、概念実証)などソリューション開発におけるアジャイル型の取り組みや、将来の実務適用を視野に入れたアーキテクチャデザインについて、その有効性と方法論を、具体的な事例を示しながら解説する。

photo 図1 第3回で取り上げる対象領域(クリックで拡大)出典:フューチャー

顧客に体験を早く提供しフィードバックをもらう

 製造業における一般的なモノ作りは「研究」「開発(設計)」「製造」「市場導入」というステップを踏む。そのため、製品分野によって異なるものの、商品初期の企画や研究段階からは5年以上かかるケースも珍しくない。しかし、環境の変化が激しい現在では、このタイムラグは大きく、顧客へモノが提供される頃には、既にその製品を望んでいないということが起こり得る。そこで、モノ作りにおいてもこれらのリードタイムを抜本的に短縮する、これまでとは異なるアプローチが求められている。これを具体的に推進できる企業が競争優位性を得ることができる。

 この“異なるアプローチ”の1つの例が「研究段階と並行して、実証実験を繰り返し行う」こととなる。これをアジャイル型の開発アプローチという。とにかく試作を早く作り、商品の本質的価値を象徴する簡素なモデルを、製品に近い形で示しながら顧客や市場に問い、それを改善するというサイクルを繰り返すことで、顧客の要望に適合するものを結果的により早く生み出す考えだ。

 企業内で全てを消化して初めて製品化を行う手法に比べて、アジャイル型のアプローチでは、この繰り返しを何度も素早く進めることで、「顧客や現場が求めるもの」を的確に製品化できる利点がある。また、企業の中だけで試行錯誤を進めると、保険的に無駄な機能を開発してしまうケースがあるが、ニーズを的確に把握できることで、こうした無駄を省き、最終的に市場導入を開始するまでの期間を短縮することが可能となる。

 ただ、こうした新たなアプローチを実現するには、社内のさまざまな体制の整備が必要になる。例えば、製品の開発期間を従来の5年から1年以内に短縮することを考えた場合、従来の延長線上となるやり方では到底実現できないため、部門間の壁を取り払ってプロセスの無駄を省いたり、新たなコミュニケーション方法を確立したりすることなどが求められる。また、業界の常識(場合によっては規制)や商習慣の壁などもあえて一度ないものとして考えて、新たな形を発想することなどが求められる。これらの壁を乗り越えられて初めて、顧客への体験を早く提供し、フィードバックをすぐにもらうことが可能となり、提供するモノの真の価値を深掘り、時代の変化に合わせて調整することが実現可能となる。

 一足飛びにこれらの仕組みを実現することは難しく、徐々に文化を変えていく必要がある。言葉だけでその変化や変革を訴えてもなかなか理解は深まらないため、実際に一歩踏み出してプロジェクトを早期にキックオフすることが大切となるだろう。ここで、アジャイル型の取り組みと、これまでの取り組みとを比較整理し、次ページから具体的な内容について紹介していく。

photo 表1 これまでの取り組みとアジャイル型の取り組みの比較(クリックで拡大)出典:フューチャー
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