「つながるクルマ」が変えるモビリティの未来像

MaaSは地域の課題解決に貢献できるか、実証実験で見えてきたことモビリティサービス(2/2 ページ)

» 2020年09月25日 06時00分 公開
[長町基MONOist]
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地方のMaaSの在り方を探る

 「低密度・中山間地域における地域課題解決」に関するパネルディスカッションでは、それぞれの地域でMaaS関連の実証実験を行っている企業や団体、自治体の担当者を招いた。参加したのは、みちのりホールディングスの浅井康太氏(「ひたち圏域MaaS/会津Samurai MaaS」)、北海道上士幌町の梶達氏、福井県永平寺町の山村徹氏、静岡県浜松市の瀧本陽一氏、長野県塩尻市にある塩尻振興公社の太田幸一氏の5人だ。

 まず、事業内容をパネリストが紹介し、続いて「地方の公共交通・モビリティの将来の在り方」について、ディスカッションに移った。永平寺町で実施している「近所タクシー」について、山村氏は「車両は自家用車で、車両自体はトヨタ自動車の販売店からの支援により、当町が所有している。現在、予約は郵便局で受け付けているが、2020年10月からの実用化では、第三セクターで運行管理を行う」と述べた。

 浜松市では医療MaaS実証を行っており、移動診療車が患者宅に訪問し、同乗している補助員のサポートによって診療所の医師がオンライン診療を実施している。また、医師がオンラインにより服薬指導し、薬剤をドローンで自宅まで配送する。このドローンでの配送について瀧本氏は「ドローンは川沿いに飛ばして、対象の集落に入る。ドローンで持っていきにくいところは薬局の車両で配達する」と“ハイブリッド”で対応している状況を説明した。

 MaaSを使った地域交通・物流の最終的なゴールを尋ねられた浅井氏は「中長期的には、現在取り組んでいる自動運転のある世界を考えている。ひたち圏域での対象地域では自家用車での移動が大多数を占め、公共交通(バス)を利用する人は人口全体の3%しかいない。今後10年というスパンでわれわれの交通サービスに3%でも転換してもらえれば、売り上げは倍になる。短期的には人口が減少しているが、われわれの主なターゲットは高校生と高齢者であり、そのマーケットは今後10年間は微増で推移するとみている」としており、現状を維持拡大しながら、今後技術革新を取り入れて対応する考えのようだ。

スマートモビリティチャレンジ推進協議会の会員となっている自治体(クリックして拡大) 出典:国土交通省

公共交通のベストミックスは

 梶氏は「市街地の賑わいを活性化するために、農村地帯からの移動の足をキメ細かく確保していきたい。一方で、財政負担を減らすことも必要であり、ICTを活用してデータを集めて、より効率的で、利用者にも快適な運用を目指したい」と述べた。山村氏は「現在実証実験を行っている自動運転車や、オンデマンドタクシーがよいという単純な議論ではなく、既存のコミュニティーバスなどを含めて、何がベストミックスなのかを探し出したい。その中で、物流会社だけが荷物を運ぶのがいいのか、貨客混載の方が利便性が高いのかを数字として出す実証にも2020年度は取り組みたい」と意欲をみせた。

 瀧本氏は「技術的には十分できると考えているが、実証していくには制度面や診療所の経営面の問題、地域の人たちから受け入れてもらえるかが課題となる。それらを将来に向けて解決していくことを短期的な目標としている」とした。太田氏は「住民の足を守る仕組みをいかに持続させるかに重きを置いている。その中で課題になりそうなのがドライバー不足だ。公共交通として維持していくためには車体をダウンサイジングし、オンデマンドバスとして大型免許だけでなく2種免許でも運用できるようすること。また、社会実装されたときにいち早く自動運転を導入できるように行政としてアジャストできることが大事だ。最終的にはさまざまな交通機関とミックスして地域の公共交通を整備したい」と述べた。

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