5G 人からモノへ 〜「未踏の時代」迎えた無線技術 特集
インタビュー
» 2020年09月29日 10時00分 公開

組み込み開発 インタビュー:パナソニックの携帯電話技術は息絶えず、sXGPとローカル5Gで生きる (1/2)

パナソニックの携帯電話関連事業は既に“過去のもの”というイメージが強い。しかし、基地局関連技術については、2014年9月の事業売却以降も、テクノロジー本部で研究開発が続けられてきた。同本部の開発担当者に、カナダの通信機器向けICベンダーであるオクタジックとの共同開発を含めた、基地局関連技術の今後の展開について聞いた。

[朴尚洙,MONOist]

 パナソニックは2020年9月17日、カナダの通信機器向けICベンダーであるオクタジック(Octasic)との間で、5Gとその高度化技術であるBeyond 5Gの共同開発に向けて合意したと発表した。今後は、オクタジックの新世代SoC(System on Chip)「OCT3032」上に、両社のリソースと専門知識を掛け合わせ、5Gとその高度化技術を搭載した高信頼、低遅延および低消費電力の無線基地局プラットフォームを共同で開発していくという。

 開発した無線基地局プラットフォームは、B2Bや航空業界向け非地上ネットワーク、その他のミッションクリティカルな業界向けに展開するという。つまり、通信キャリア向けではなく、企業などが独自に通信網を所有するプライベートネットワークとなるローカル5Gを中心とした事業展開となる見込みだ。

パナソニックが開発を進める5G対応の無線基地局(左)とオクタジックジックのSoC(右) パナソニックが開発を進める5G対応の無線基地局(左)とオクタジックジックのSoC(右) 出典:パナソニック
パナソニック テクノロジー本部の金澤岳史氏 パナソニック テクノロジー本部の金澤岳史氏

 パナソニックの携帯電話関連事業と言えば、2013年9月に個人向けスマートフォン事業から撤退し、2014年7月には通信キャリア向け基地局事業をノキア(Nokia)に売却するなど、既に“過去のもの”というイメージが強い。しかし実際には、過酷な現場で使用可能な頑丈ハンドヘルド「TOUGHBOOK」をB2B向けスマートフォンとして展開しており、端末としてのスマートフォン事業は小規模ながら継続している。

 また、今回5G対応の開発を発表した基地局関連を含めた携帯電話技術全般についても、パナソニックのテクノロジー本部で研究開発を続けており、業界団体である3GPPの標準化作業にも参画してきた。パナソニック テクノロジー本部 デジタル・AI技術センター ワイヤレスネットワーク部 1課 課長の金澤岳史氏は「2000年ごろの3G向けから基地局関連の技術開発を続けており、ノキアへの事業売却以降もテクノロジー本部内で研究開発を続け、新たな事業への転地を探っていた」と語る。

自営無線のLTE化で新たな事業への転地を図る

 この“新たな事業への転地”の候補となったのが、2015年ごろにLTEへの対応の検討が始まった自営無線である。パナソニックは、警察無線や防災無線をはじめとする自営無線を長年手掛けるとともに高い国内シェアを有しており、そこで用いられる無線基地局も開発していた。「当初、汎用DSPとFPGAを用いてスクラッチで開発していたべースバンド処理について、専用ICのベンダーを選定することになった。そこで採用したのがオクタジックだ。小型低消費電力であるだけでなく、大ゾーンセル対応などソフトウェア志向でカスタム化しやすいことが決め手になった」(金澤氏)という。

 2015年当時、消費者向けを中心とする公衆無線では既にLTEの採用が拡大している段階にあったが、自営無線ではまだ2Gの技術を利用しており3Gでさえもなかった。これは、3G通信規格が国内ではW-CDMAとCDMA2000で分かれており、北米や欧州、中国など世界各国でも統一されていなかったことが一因となっている。金澤氏は「現在のようにSDR(ソフトウェア無線)技術も進んでいないため、スクラッチ開発になるにもかかわらず、公衆無線と違って市場規模が小さい自営無線に3Gを採用するのは難しかった」と説明する。

 3Gから一転、4GであるLTEでは規格統一が成されたこともあり、それまで通話による音声のやりとりにとどまっていた自営無線にブロードバンド通信を導入できるというメリットから、グローバルで検討が始まったのが2015年ごろというわけだ。このグローバルでの動きを受けて、パナソニックもテクノロジー本部が中心となり、警察無線や防災無線などのパブリックセーフティ向けに、オクタジックのIC上で動作するLTEのソフトウェア開発を進めた。ただし、日本国内では、周波数割り当ての問題などもあり制度化が進まない状態が継続していた。

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