「生産日程計画」では「作業設計」の粗密が生産性を決定づける工程管理は、あらゆる現場問題を解決する(3)(2/3 ページ)

» 2020年10月01日 10時00分 公開

1.1 手番(手配番数)

 「手番(手#)」とは、“手配番数”の略で基準日程により決められます。製品の作業着手日から前にさかのぼった日数を「手番」といいます。これは、リードタイムや先行日数などと同じ考え方で、通常1日を1手番としている場合が多く、着手手番の算定に用いられます。

 また、リードタイム(Lead Time)は、一般的に発注から納品までに必要な時間をいいます。リードタイムは、開発リードタイム、調達リードタイム、生産リードタイム、配送リードタイムに分解されます。また、製造オペレーションの品質を測定する場合、“スピード”“正確性”“コスト”“継続性”の4つの指標が用いられますが、このうち“スピード”を測る評価指標として使われる場合もあります。

 一例として、材料や部品が納入されなければならない時点までの日数を「納入手番」といいますが、手番は組立着手日からの必要な先行度であって、これは作業の方法が、材料が待たない「連続生産方式」、材料が待つ「個別生産方式」、あるいは、ある数量をまとめて生産する「ロット生産方式」などの生産方式および単位作業当たりの所要時間などで決まります。

 例えば、1工程の標準時間が4.8分の部品を1ロット100個の「ロット生産方式」で5工程を経て組立に入る部品を作業すると、完成するまでに5日間(4.8分×100個×5工程=2400分)を要します。従って、手番は“5”となります。また、1個ずつの順送り(いわゆる1個流し)で流れ作業をすれば、5工程目の作業開始時間の遅れとして、19.2分(4.8分×4個分)が発生しますので、5工程目の作業完了は作業開始から499.2分(19.2分+4.8分×100個)後となります。つまり、1.04日で完成することになりますので、手番は“2”となります。同様に、事務処理の所要日数も5箇所の部門を流れる書類が最後の部門の処理を完了するまでに5日を要したとすれば、これを1つの部門だけで処理するようにすれば1日に短縮できるかも知れません。

1.2 基準日程

 「基準日程」という考え方もよく用いられます。日程計画の基礎となる標準日程、すなわち個々の作業の生産期間(作業着手から完成までの所要日数)に対しての基準を示したもので、通常は最終完成日から逆算して何日前に着手すべきかで表現されます。一般にこれらを標準手番(標準手配番数)と呼んでいます。この標準手番(いわゆる基準日程)は、以下のようなものに使われます。

  1. 小日程計画の作成時における各工程の日程展開
  2. 外注部品の納期指定
  3. 現場材料や治工具類などの手配期限の設定
  4. 標準仕掛かり量の設定

 なお、この標準手番はその名の通り標準的なものであって、実際の手番の設定は製品や機種およびその組み合わせ、物の流し方(生産方式)、作業時間や稼働時間、作業工程などによって異なり、できるだけ実際の手番を使って日程計画を組むことが望ましいとされています。

2.生産中日程計画

 通常、毎月末に立案する翌月分と、それに続く数カ月間の部門別(職場別)の生産計画を「生産中日程計画」といいます。この計画内容に基づいて、材料や購入部品の手配が行われるため、調達期間が比較的長い材料や部品の入荷が間に合うように十分に先行して計画が立てられている必要があります。受注生産形態における生産中日程計画は負荷計画(Loading)と呼ばれるもので、注文を受けた製品を完成させるために必要な作業を完成予定日(あるいは納期)に間に合うように、基準日程を考慮しながら作業が行われる部門や職場に割り付けていくことをいいます。

 負荷計画の多くは、「山積み」と「山崩し」の2段階の処理を経て作成されます。「山積み」は、まずは部門の生産能力を無視して各受注品にとって必要な作業をあらかじめ設定された完成予定日(あるいは納期)を基準にして手番(先行日程)の小さい物から順々に製作部署へ割り付けることによって行われます。その結果として、求められた負荷の状況は当然のことながら変動し、負荷量の山と谷ができます。

 次に、割り振られた部門の生産能力を負荷が超えないように作業の開始時期をずらしたり、外注に適した作業を計画から外したりしながら負荷量(時間)の平準化を行いますが、この処理を「山崩し」といいます。負荷量は、それぞれに割り当てた作業の所要工数の総和です。また、生産能力は、その該当部門の単位期間中の稼働時間と機械設備台数や作業者人員の積となります。単位時間の長さは、一般に作業の所要時間に応じて長くなる傾向にあります。

 生産大日程計画は、受注の都度に立てられる生産日程計画書ですが、中日程計画および小日程計画は、製造部門ごとの一定期間内、例えば1週間あるいは1カ月の生産の内容を示したものであるということがいえます。中日程計画は、製品の制作手配ごとの組立日程を計画し、作成時期や対象期間は、製品の標準工完期間によって異なります。

 材料や部品の発注手配は、生産中日程計画の作成時点では間に合わないものについては、大日程計画に従って行われています。大日程計画と中日程計画との間には、多少のずれが生じますが、このずれの原因は、計画精度が高くなったことによるもので、既に進行している、例えば、既に購入手配された材料や部品の納期などに対しての影響を最小限にするように計画されなければなりません。

 生産中日程計画は、計画期間内の生産活動を規定するものですが、工程管理上は主として材料、部品の入手、加工工程の統制に使用されます。どうしても計画通りにいかない場合が発生するものですが、この際に、進度調整の基準となるのが中日程計画です。どうしても中日程計画の実行が危ぶまれる場合には、この状況が次に述べる小日程計画に反映されることになります。

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