中小企業を取り巻くリスクと新型コロナウイルス感染症の影響2020年版中小企業白書を読み解く(1)(5/6 ページ)

» 2020年10月05日 11時00分 公開
[長島清香MONOist]

新型コロナウイルスが中小企業に与えた影響

 日本は世界の中でも自然災害が多く、2019年も台風などの自然災害が立て続けに発生し、多くの中小企業の経営に影響をもたらした。こうした頻発する自然災害に対する企業の対応状況について、企業規模別に自然災害に対する経営上のリスクへの対応を見ると「十分に対応を進めている」「ある程度対応を進めている」と回答した割合は、大企業が約4割であるのに対して、中小企業は約2割となっており、大企業と比べて中小企業の自然災害へのリスク対応が進んでいない状況が分かる(図17)。また、大企業、中小企業共に半数以上が「あまり対応を進めていない」「ほとんど対応を進めていない」と回答しており、企業の規模にかかわらず自然災害のリスクに対する取組は十分に進んでいないといえる。

photo 図17:自然災害に対する企業の対応状況(クリックで拡大)出典:中小企業白書2020

数多く寄せられる資金繰り関連の相談

 自然災害以外に、そのリスクが実際に影響となって表れたのが新型コロナウイルス感染症の発生である。新型コロナウイルスの感染拡大により、国民生活はもちろん、企業活動にも影響が及んでいる。

 政府系金融機関や商工団体など全国1050か所に設置した「新型コロナウイルスに関する経営相談窓口」の利用状況を見てみると(3月31日時点)、寄せられている相談はほぼ全て資金繰り関連であり、「飲食業(28.5%)」「製造業(21.5%)」「卸売業(17.9%)」「小売業(17.8%)」「宿泊業(6.9%)」の事業者からの相談が多いことが分かる(図18)。

photo 図18:新型コロナウイルスに関する経営相談窓口」の利用状況(クリックで拡大)出典:中小企業白書2020

中国の生産や貿易の減少が生産活動に影響

 新型コロナウイルス感染症の広がりにより中国の生産や貿易が減少したことで、関係する日本の中小企業にも大きな影響があった。図19は、中小企業が中国に持つ海外子会社(以下、中国子会社)の数を業種別に見たものだが、これによると中小企業においては「卸売業(20.3%)」「その他の製造業(11.1%)」「生産用機械(8.8%)」「輸送機械(6.6%)」「化学(6.0%)」「金属製品(5.9%)」の中国子会社が多いことが分かる。

photo 図19:業種別に見た、中小企業の中国子会社数(クリックで拡大)出典:中小企業白書2020

 また、仕入れ高の中国依存度が高い業種については、「電気機械器具製造業」や「電子部品・デバイス・電子回路製造業」「生産用機械器具製造業」「情報通信機械器具製造業」などで中国依存度と仕入れ額が共に大きくなっており、こうした業種では中国からの輸入が減少すると生産活動に大きな影響が及ぶことが分かる(図20)。

photo 図20:仕入れ高の中国依存度が高い業種(クリックで拡大)出典:中小企業白書2020

 さらに中小企業白書2020は、新型コロナウイルスの感染拡大による生産への影響について、2020年2月は中国からの部品調達の停滞による影響が大きかったが、日本の主要な輸出先(図21)である欧米での感染拡大を受け、今後は輸出の減少による影響も大きくなる可能性があると述べている。

photo 図21:国・地域別に見た、日本の輸入額・輸出額に占める割合(2018年)(クリックで拡大)出典:中小企業白書2020

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