2020年度グッドデザイン賞発表、「LOVOT」や「VISION-S」などがベスト100にデザインの力

日本デザイン振興会は「2020年度グッドデザイン賞」受賞記者発表会をオンラインで開催した。今回は、1395件がグッドデザイン賞を受賞し、そのうち特に審査委員会の高い評価を受けた100件のプロダクトやサービスに「グッドデザイン・ベスト100」が贈られた。

» 2020年10月06日 13時00分 公開
[八木沢篤MONOist]

 日本デザイン振興会は2020年10月1日、「2020年度グッドデザイン賞」受賞記者発表会をオンラインで開催した。

 「2020年度グッドデザイン賞」のテーマには、デザインを通じて他者や社会、環境などについて考え、それに応えることを示す「交感」が掲げられている。

コロナ禍でも例年並みの応募、重要性が増すデザインの力

日本デザイン振興会 理事長の大井篤氏 日本デザイン振興会 理事長の大井篤氏

 冒頭のあいさつとして、日本デザイン振興会 理事長の大井篤氏は「今回、コロナ禍での実施となったが、例年並みの応募があった。これから新しい日常、新しい世界へ向けて歩み出さなければならない中、デザインが何らかの道しるべや指針になるのではないか。そういう意味でもグッドデザイン賞は大きな役目を担っている」と、デザインの力が持つ可能性について述べた。

 「2020年度グッドデザイン賞」の応募受付期間は4月2日〜6月2日で、最終的に4769件ものプロダクトやサービスなどが集まった。その後、国内外のデザイナーや建築家、専門家からなる94人の審査委員により、一次審査、二次審査、「グッドデザイン・ベスト100」選考会が行われ、今回の発表に至った。期間中は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大防止に努め、キックオフセミナーをオンラインで開催したり、審査の過程でWeb会議システムを活用したりするなど、従来の審査過程と異なる部分もあったものの、滞りなく先行が進められたという。

2020年度グッドデザイン賞審査委員長の安次富隆氏 2020年度グッドデザイン賞審査委員長の安次富隆氏

 審査は「交感」をテーマとし、「人間的視点」「産業的視点」「社会的視点」「時間的視点」の4つの視点で行われ、最終的に1395件(974社)が「2020年度グッドデザイン賞」を受賞した。なお、この中には、東日本大震災復興支援策特例措置での受賞38件、海外デザイン賞連携による受賞30件が含まれる。

 審査委員会で委員長を務める安次富隆氏は、「今回の審査を通じて感じたのは、『消費』という概念や文化を終わらせるということだ。ただモノを作って放出して終わるのではなく、もう一度自分たちの所へ戻していくという循環型社会の実現を目指すものが多く見られた」と総評を述べる。

グッドデザイン・ベスト100に、「LOVOT」や「VISION-S」も

 そして、「2020年度グッドデザイン賞」を受賞した全対象(1395件)の中から、完成度や今後の期待度などで、特に審査委員会の高い評価を受けた100件のプロダクトやサービスなどが「グッドデザイン・ベスト100」として選出された。

 例えば、東京都による「東京都新型コロナウイルス感染症対策サイト」やZoom Video Communicationsのビデオ会議システム「Zoom」などの他、イトーキのタスクチェア「バーテブラゼロサン」、GROOVE Xの家族型ロボット「LOVOT」、日本コカ・コーラの「い・ろ・は・す 天然水 ラベルレス」、ソニーの次世代電気自動車(EV)「VISION-S」、日本環境設計の「BRING」などが「グッドデザイン・ベスト100」に選ばれている。

「グッドデザイン・ベスト100」に選ばれたGROOVE Xの家族型ロボット「LOVOT」 「グッドデザイン・ベスト100」に選ばれたGROOVE Xの家族型ロボット「LOVOT」 [クリックで拡大]
「グッドデザイン・ベスト100」に選ばれたソニーの次世代EV「VISION-S」 「グッドデザイン・ベスト100」に選ばれたソニーの次世代EV「VISION-S」 [クリックで拡大]
2020年度グッドデザイン賞審査副委員長の齋藤精一氏 2020年度グッドデザイン賞審査副委員長の齋藤精一氏

 審査委員会 副委員長を務める齋藤精一氏は、総評として「個人的に見えてきた1つのテーマが『実装』だ。SDGs(持続可能な開発目標)などのキーワードが叫ばれる中で、実際にどうやってそれらに対する解を社会実装していけばいいのか見えづらかった。今回『グッドデザイン・ベスト100』に選ばれた多くの企業では、それを自分たちなりに理解し、社会実装している。ここに大きな流れを感じた」と述べる。

 今後は「グッドデザイン・ベスト100」に選出されたプロダクトやサービスなどを対象に審査を実施して、同年10月30日に「グッドデザイン大賞」「グッドデザイン金賞」「グッドフォーカス賞」といった特別賞を決定する。

 その他、受賞記者発表会では、長年にわたり支持されてきたプロダクトなどのデザインに贈られる「グッドデザイン・ロングライフデザイン賞」の受賞結果も発表された。こちらは126件の応募に対して、19件(19社)が受賞。ヤマトの「ヤマト糊(のり)」や日本郵便の「郵便ポスト」、東京都交通局の「都電荒川線」などが選出されている。

 同年10月以降、さまざまな展示スペースでグッドデザイン賞に関連するリアルイベントが開催される他、特設公式Webサイト「GOOD DESIGN SHOW 2020」において、全受賞対象の紹介やトークイベント、「グッドデザイン・ベスト100」のプレゼンテーションや特別賞発表/大賞選出会などをライブ配信するオンライン企画なども多数用意されている。

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