エッジコンピューティングの逆襲 特集

クボタが目指す“完全無人農機”、AI開発にNVIDIAをエンドツーエンドで採用組み込み採用事例

NVIDIAは、農業機械メーカー大手のクボタがNVIDIAのエンドツーエンドAI(人工知能)プラットフォームを採用するとともに、農業機械のスマート化の加速に向けて両社で協業することを発表した。

» 2020年10月08日 06時30分 公開
[朴尚洙MONOist]

 NVIDIAは2020年10月6日、農業機械メーカー大手のクボタがNVIDIAのエンドツーエンドAI(人工知能)プラットフォームを採用するとともに、農業機械のスマート化の加速に向けて両社で協業することを発表した。

 国内農業が高齢化に伴う離農が進む一方で、農作業の委託や経営効率化のための農地集積などによって営農規模が拡大しつつある。そういった大規模プロ農家にとって、人手不足や作業効率の向上、省力化などの課題解決のため、スマート農業の活用が急務だ。クボタは、このスマート農業の本格的な研究を国内で先駆的に進めており、「農機の自動化・無人化による超省力化」や「データ活用による精密農業」の普及を目指している。

 今回クボタは、これらの内「農機の自動化・無人化による超省力化」を実現するため、NVIDIAのエンドツーエンドAIプラットフォームを採用した。クボタは、コンピュータビジョンを用いた自動運転・無人化農機の開発に取り組んできたが、さらなる発展に向けて、天候や生育状況などのデータから適切な農作業を判断し、これまで実現できていない作物の収穫などの作業まで適時に実行に移せる“完全無人農機”の実現を目指している。そこで今後は、NVIDIAのエッジデバイス向けの組み込みAIプラットフォームである「Jetson」を活用して研究開発を進める。Jetsonは、エッジAIに求められる高い計算処理能力や精度、電力効率に優れるだけでなく、産業機器向けの高耐久の設計となっており、農業機械の過酷な環境に求められる要件を満たしている。さらに、車両の全周囲をモニタリングするのに必要な高精細なスクリーンスティッチングや、物体認識で効果を発揮するエッジ検出においてリアルタイムかつスムーズな処理が可能なことも評価されたという。

クボタの「コンセプトトラクタ」 クボタが2020年1月に発表した「コンセプトトラクタ」。AIや電動化技術などが備わった完全無人の自動運転トラクタで、同社が描く未来農業のビジョンを表している(クリックで拡大) 出典:クボタ

 AIの学習側の環境としては、高い処理能力を発揮する「NVIDIA DGX AIシステム(以下、DGXシステム)」を導入した。DGXシステムは、GPU向けに最適化されたディープラーニングソフトウェアのハブである「NGC(NVIDIA GPU Cloud)」をサポートしており、開発者はディープラーニングの開発に必要とされる、統合済みのフレームワークコンテナを使用することで、AIモデルの設計やトレーニング、実験、展開を容易に実施できる。また、クボタは、最適な推論パフォーマンスを引き出すためのライブラリ「NVIDIA TensorRT」を活用し、高性能な推論用AIモデルの開発に取り組んでいる。

 学習に用いるDGXシステムと推論モデルを実装するJetsonは、NVIDIAのエンドツーエンドのAIプラットフォームとして同一のコンピューティングアーキテクチャを持っており、開発の効率化と市場投入の短期化に役立つ。例えば、DGXシステムで農業機械に搭載された多数のカメラから入力される情報を解析し、AIモデルの学習を重ね、その結果をJetsonに戻すことでモデルの精度を高めていくことができるとしている。

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