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» 2020年10月16日 10時00分 公開

メンテナンス高度化:現場のデジタライゼーションでニューノーマル時代のリモート設備点検と保守の高度化を実現

国内の工場やプラント、社会公共インフラなどの設備は老朽化が進んでおり、それらの保守を担う作業員の高齢化に伴う人員不足が課題になっている。これらの設備の保守点検作業で大きな負荷になっているのがアナログメーターの目視点検や、設備稼働音に基づく聴音点検などだろう。日立製作所は、これら人の五感に基づく保守点検のデジタル化に向けて、現場のデジタライゼーションをコンセプトとするソリューションを提案している。

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 日本の高度成長を支えてきた国内の工場やプラント、社会公共インフラなどの設備が老朽化するとともに、それらの保守を担ってきた作業者の高齢化に伴う人員不足が大きな課題となっている。例えば、国内のエチレンプラント設備は、その半数以上が2022年に稼働年数50年を超えようとしている(※1)。その一方で、石油精製所の全作業員の約3割を占める51〜60歳のベテランが引退を迎えつつある(※2)

※1 出典:日本の石油化学工業50年データ集(重化学工業通信社)
※2 出典:高圧ガス保安協会実施アンケート

 これらの課題は数字としても如実に顕在化しつつある。危険物を取り扱う施設の数そのものは減少しているにもかかわらず事故件数が増加している。当然のことながら危険物施設は厳格な基準に沿って計画保全や点検が行われているが、それでも腐食疲労など想定外の劣化による事故が発生しているのだ。2016年に、電力会社の送電施設で発生した火災事故によって引き起こされた58万戸規模の大停電が記憶に新しいが、その原因は送電ケーブルの経年劣化による絶縁破壊だった。施設が老朽化し、作業員の人員不足が問題になる中で、こうした事故を今後いかにして防ぐことができるのだろうか。

 これらの設備を巡回点検する保守作業員は、点検作業そのものだけでなく点検スケジュールの調整や点検結果の入力などを含めてオンサイトの全ての業務をカバーする“エッセンシャルワーカー”といえる存在だ。そして、現在の新型コロナウイルス禍においても現地への移動が求められるなど身体的負担とともにリスクも高いため、今後はニューノーマルに対応し、リモートモニタリングを活用した新たな働き方への移行が不可欠となっている。これらの課題を解決すべく、保守高度化の実現に向けて日立製作所が提案するのが、現場のデジタライゼーションというコンセプトだ。

アナログメーターを読み取り高付加価値データの源泉とする

 日立製作所(以下、日立)が提唱する現場のデジタライゼーションとはいかなるものか。同社 サービス&プラットフォームビジネスユニット デジタルソリューション事業開発部 部長の西村卓真氏は、「現場の設備や機器の運用と保守を最適化するために、計器やセンサー、制御システムの入出力から時系列データを収集し、意味を持たせて統合、分析することにより、リスクの変遷、特質、予測について共有、継承できるようにすることです」という定義を示す。

保守高度化のコンセプト 現場のデジタライゼーションとは 《クリックで拡大》 保守高度化のコンセプト 現場のデジタライゼーションとは 《クリックで拡大》
日立製作所 サービス&プラットフォームビジネスユニット デジタルソリューション事業開発部 部長の西村卓真氏 日立製作所 サービス&プラットフォームビジネスユニット デジタルソリューション事業開発部 部長の西村卓真氏

 そこで必要になるデータとしては、従来はその場限りで利用されてきた制御データや、さまざまな機器の動きをより詳細に捉えたセンサーからのデータなどがあるが、「最も注目しているのは、人の五感により収集されてきた現場設備に直結する点検データです」と西村氏は強調する。

 なぜ点検データなのか。「アナログメーターなどの計器は、設備の最も重要な箇所に設置されています。だからこそ、工数をかけてでも目視点検などを通じて人手でデータにし残しています」(西村氏)というのがその理由である。実際、日立が自社で運用している発電所の点検項目割合においても、目視点検は約22%を占めているという。

 これらの目視点検では、作業員が実際に計器等を目で見て解釈し、値や状態を記録している。この作業は、人手による頻度の低いサンプリングによって点検の結果をデ―タにする作業といえる。こうして得られる目視点検のデータを、人手によらず高頻度で収集できるようにすれば、より詳細なトレンドを把握することが可能となる。

 もっとも、既存のアナログメーターをネットワーク機能を持つデジタル式に交換するのは容易ではない。「稼働中の設備は容易に止められず交換が許されない」「屋外にはネットワークや電源のケーブルを容易に敷設できない」といった困難に直面するからだ。

 この課題を解決すべく、日立は後付けで設置が可能で、バッテリーによる自律駆動も可能な、五感を代替する無線センサー端末の開発に乗り出した。そこで、日立のセンシング技術を駆使し実現したのが、アナログメーターの表示を非接触のCMOSイメージセンサーと認識系のAIにより読み取りリモートモニタリングする「メーター自動読み取りサービス」である。

アナログメーターの自動読み取りにより目視点検のデジタル化を実現 《クリックで拡大》 アナログメーターの自動読み取りにより目視点検のデジタル化を実現 《クリックで拡大》

 西村氏は、「超高効率に動作する認識系のAIをエッジ側に実装し、そこで計器が示す値を数値化することでデータを軽量化します。これにより、無線センサーネットワークでの伝送を可能としました。さらに、間欠駆動制御と、待受時の消費電流をμAレベルに抑えることで大幅な省電力化を実現しており、1日1回の測定であれば5年間電池交換なしで動作します」と同システムの特徴を説明する。

 また、2.4GHz帯を用いたメッシュ型無線ネットワークを現場の環境に合わせて容易に構築できることも特徴の1つだ。これにより、通常のデジタルの図面データだけでなく、かつて工場やプラントを設計した際に作成した紙の図面なども背景画像として取り込めるアプリケーション画面に、無線センサーの実際の配置位置をマッピングして最適なネットワークを構築することが可能だ。無線センサー端末が正しく稼働していることの監視にも活用できる。

 こうして遠隔からのアナログメーターの自動読み取りを実現した同サービスは2018年にリリースされ、既に多くのユーザーが利用している。その中でも大きな成果が得られたのが、液体タンクにおける液面計測自動化の事例である。この事例では、タンク液面の数値を1時間周期で高頻度に計測し、その時系列データから変動傾向を明らかにして定量化した。さらに、気温、湿度、気圧、圧力、稼働負荷、バルブ開度などさまざまなデータとの相関解析を行い、異常の早期検知につなげることに成功した。西村氏は、「これにより、数カ月に1回の低頻度の目視点検では気付かなかった事象を把握することが可能となりました」と語る。

聴音点検のデジタル化にもチャレンジ

 人の五感に依存した点検の自動化と高度化に向けて、目視点検以外に日立が重視しているのが聴音点検である。先ほど日立が保守を担っている発電所において目視点検が約22%を占めていると述べたが、実はこれに次ぐ15%の作業比率を占めているのが聴音点検なのだ。点検箇所を巡回する保守作業員が現場で実際に音を聞き、異常がないか解釈(判断)し、記録を行っている。

 ただし、聴音点検のデジタル化は目視点検のデジタル化と比べてもはるかに難易度は高い。そもそも稼働音はアナログメーターと異なり、人が認識できるようなデザインは施されていないからだ。

 そこで日立が開発に取り組むのが、設備の据え付け時やメンテナンス終了後などに異常のない通常音を学習させておき、無線センサー端末で収集した音との相違を音響解析のAI技術により「異常度」として数値化し、この軽量化されたデータを送信するというシステムだ。西村氏は「2020年度冬のリリースを目標として、異常の説明情報(音域や圧縮音)の付加機能や再学習、擬音変換などの追加開発を行っています」と述べる。

異音点検をデジタル化する自動聴音システムの概要 《クリックで拡大》 異音点検をデジタル化する自動聴音システムの概要 《クリックで拡大》

 なお、この聴音点検システムは日立の大みか事業所に隣接する日立臨海発電所に試験導入され、グリス注入などメンテナンス前後で発生する異常の継続監視および記録自動化に関する実証実験が進められているという。

時系列の現場データを容易に活用するための基盤を提供

 さらに日立は、ここまで紹介してきた目視点検や聴音点検などのシステムから得られたデジタルデータを含めて、現場から得られるさまざまな時系列データをより簡単に活用するための基盤として「Context-based Data Management System(CDMS)」を開発し、2018年からシステムへの導入を始めている。西村氏は、CDMSについて「現場データを説明情報と合わせて『蓄積』し、それらのデータをデータモデルにマッピングして『体系化』し、用途にあわせたデータセットを作成して『利活用』を促すという、3段階でデータを管理する仕組みを備えています」と説明する。

Context-based Data Management Systemとは 《クリックで拡大》 Context-based Data Management Systemとは 《クリックで拡大》

 具体的には「多くのデータを収集しているが、それぞれの意味がわらない」「さまざまな解析ツールを導入しているが使いこなせていない」「データを利活用することで、どのくらいの効果が得られるのか分からない」といった課題を抱える現場に対して、CDMSは大きく次の3つのアプローチに基づいた解決策を提供する。

 1つ目は、コンテキスト(意味)に基づいたデータ活用である。さまざまなシステムからばらばらに集まってきた現場データをデータモデルにマッピングするとともに、現場データを機器構成と平易な名称で表現する。一方で、分析アプリケーションへ必要なデータを適した形式で渡すためのデータセットを提供する。「これにより、データモデルでコンテキストやトレンドグラフ(動き)を確認しながら、分析に必要なデータを簡単にたどり着くことができます。数万点の現場データを自在に活用することが可能となるのです」(西村氏)。

 2つ目は、用途にあわせた解析のためのデータ準備だ。例えば、データマートからのデータ取得に関して、REST APIを用いてデータを取得する方法、グラフに表示されたデータを手動で範囲指定してCSVファイルで出力する方法、解析ツールのインタフェースを使用してCDMSから直接データを取り込む方法などが用意されている。加えて使いたい単位への変換、必要な時間刻みに合わせたデータ補間(時刻あわせ)、現場で欠測したデータの補間などのデータ加工もサポートしている。

 そして3つ目が、システムの段階的な拡張だ。CDMSが収集するデータの規模に応じて仮想データレイクや仮想データマートを拡張したり、分析アプリケーションを追加したりすることが可能なのである。西村氏は「さらに分析が本格化してデータ取得頻度が高くなってきた際には、サーバを追加して処理能力を上げていくことができます」と利点を訴える。

 CDMSの応用事例としては、鉄鋼メーカーで実証した加熱炉の劣化診断システムがある。この劣化診断システムは、加熱炉の燃料流量計の表示内容を後付けのアナログメーター読み取りシステムでデジタル化するとともに、CDMSを用いてこのメーターデータならびに他システムの制御データや生産データを収集してから、複合的に分析することで、燃費変動のデータパターンや長期トレンドを可視化し、適切なタイミングでの補修を促してくれる。「加熱炉が気付かないうちに劣化していると断熱性能が落ちて、燃費が悪い状態で稼働を続けてしまう。劣化診断システムにより、加熱炉を修理すべき時期を把握できるようになった」(西村氏)という。

日立ならではの強みを生かした現場のデジタライゼーションで社会に貢献

 このように日立は、重要な現場設備や社会インフラを休むことなくリモートで見守り、人間に代わって見聞きするセンシング技術を磨いてきた。さらに、獲得した現場データに内在するOT(制御システム)とIT(情報システム)のギャップを埋めるツールとしてCDMSを活用することで、現場設備の特質をより詳細に把握するシステムを実現してきた。

 さらに今後に向けては、さまざまな現場で人間の五感の代わりを担っていく自走式サービスロボットの開発も進めていくとする。

 自らが製造業として現場を熟知しており、保守高度化のための価値あるデータを生み出すセンシング技術や、データを体系的に扱うノウハウや知見によって利活用できることが日立の強みである。西村氏は「この強みを生かした現場のデジタライゼーションにより、保守を最適化するソリューションを提供し、現場設備の長期にわたる安定的な稼働に貢献していきます」と語り、アフターコロナ時代のニューノーマルを見据えたあるべき設備保全や働き方をリードしていく意気込みを示した。

※本稿は、TechFactoryからの転載記事です。

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提供:株式会社 日立製作所
アイティメディア営業企画/制作:MONOist 編集部/掲載内容有効期限:2020年11月18日