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» 2020年10月27日 10時00分 公開

小寺信良が見た革新製品の舞台裏(16):Vlog業界を驚愕させた「LUMIX G100」の立役者、ノキアの「OZO Audio」とは (1/3)

2020年に入って、各カメラメーカーが動画のブログ「Vlog」にフォーカスした製品をリリースするようになっている。中でも、パナソニックの「LUMIX G100」は高度なマイク機能を備えておりVlog業界で一躍注目を集めている。その立役者ともいえる技術が、ノキアの「OZO Audio」だ。

[小寺信良,MONOist]

 ネット上で参照される情報はいまだテキストが中心ではあるが、若年層はテキストではなく、動画から多くの情報を得るようになっている。そして自分自身の意見もテキストではなく、動画のブログ、すなわち「Vlog」で発信するようになってきている。

 2020年に入って、各カメラメーカーはVlogにフォーカスした製品をリリースするようになった。その一つが、パナソニックの「LUMIX G100(以下、G100)」である。マイクロフォーサーズのミラーレスカメラだが、これに搭載されたマイク機能が素晴らしかった。

2020年8月に発売されたパナソニックの「LUMIX G100」 2020年8月に発売されたパナソニックの「LUMIX G100」(クリックで拡大) 出典:パナソニック

 3つの無指向性マイクを組み合わせることで、集音の指向性を自由に変えることができるのだ。自撮りの際は前方に、撮影しながらのレポートでは後方に、また話しながら移動すれば、顔がある方に指向性を動的に移動させる。顔認識技術とマイクの指向性を連動させているのだ。

 この機能の実現に大きな役割を果たしているのが、ノキア(Nokia)が開発した「OZO Audio」という技術である。今回は、日本国内であまり知られていないこの技術の開発の背景について、Nokia Technologies Japan Technology Licensing部 Business Managerの豊田一之氏に話を伺った。

「OZO Audio」のそもそも

Nokia Technologies Japanの豊田一之氏 Nokia Technologies Japanの豊田一之氏

―― OZO Audioについて自分なりに調べてみたんですが、ノキアでは2015年にVR(仮想現実)撮影用の「OZO CAMERA」という製品を投入していますよね。VRコンテンツ制作を行うプロ用カメラだったようですが、そもそもなぜノキアがカメラを手掛けたのでしょうか。

豊田一之氏(以下、豊田) 当時からそうなんですけれども、ノキアはとにかく独創的なものを生み出していくという姿勢を常に持っていました。2015年当時、独創的なハードウェア製品に当社の最新のイノベーションを搭載したものが何かできないかということでいろいろ考えていく中、プロ市場に向けて当時の最新のカメラ技術を投入するというところに焦点を当てたのがOZO CAMERAでした。

 8つのカメラと8つのマイクを搭載して、立体音響の収録もできました。現在のOZO Audioの技術も、実は既にあのカメラの中に搭載されていたんです。

2015年に製品化された「OZO CAMERA」 2015年に製品化された「OZO CAMERA」(クリックで拡大) 出典:ITmedia NEWS

 当時は、皆さんやっぱりカメラセンサーの方に注目をしていて、映像をきれいに撮ることが重視されていたと思います。そんな中、映像だけではなく音声にも焦点を当てることで革新的なものが生み出せるのではないかと考え、映像と音声を合わせ込んだものとしてOZO CAMERAを投入したというのが、当時の背景にあるのかなと思います。

―― 一般的なVRコンテンツ制作は、事前収録した映像や音声などをコンテンツ化して、視聴者がそのVRコンテンツの視聴時に見たい方向の映像や音声を見られるようにするというものかと思います。つまり、後処理で指向性を持たせると。それがG100ではリアルタイムで指向性を変えるという実装になったわけですが、途中で技術的な方向性が変わったということでしょうか。

豊田 実はあの当時からOZO CAMERAは、収録の機能だけでなく、そのままのライブで配信する機能というのもあったんですよ。当時制作系ですとプロモーションビデオや映画のプレミアコンテンツを作ったりという用途はもちろんあったんですけれども、一方でスポーツイベントやコンサートのライブ配信にも使われていました。

―― なるほどそうだったんですね。技術的には既に2015年には完成していたと。そして、2017年8月にHMD Globalが発売した「Nokia 8」で、今度はスマートフォンにOZO Audioが実装されました。

豊田 2015年のOZO CAMERAはハンドボール大の球体のカメラで、そこにマイクが8個入った中でリアルタイム処理をやっていました。今度はスマートフォンという全くフォームファクターが異なる、むしろものすごく難しい形状になったというところが、最もチャレンジングなポイントでした。

 スマートフォンは薄い板状ですし、マイクの数も3つないし2つという場合もあります。そういった条件の中で、ノキアのエンジニアも、OZO CAMERAのような空間音声処理技術を生み出さなければならない。それが実現できた結果、現在はスマートフォンだけではなく、例えばボディーカメラや、それこそパナソニック様のミラーレス一眼のように、いろんな形状の製品にOZO Audioをフィットさせられるようになったのです。

「OZO Audio」を初搭載したスマートフォン「Nokia 8」 「OZO Audio」を初搭載したスマートフォン「Nokia 8」(クリックで拡大) 出典:ITmedia Mobile
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